すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
「マジック・サークル」 上・下  キャサリン・ネヴィル (アメリカ)  <学習研究社 単行本> 【Amazon】 〈上〉 〈下〉
エアリアル・ベーンは裕福な家で育った。言葉もしゃべれないうちからフォアグラを食べるような贅沢な生活、両親が離婚してからはオペラ歌手の母とともに世界を渡り歩き、 母が再婚してからはもっと裕福になった。親戚たちもまた有名人ぞろいだ。それなのに、美しい女性として成長した今は、同僚の家を間借りして、アイダホの核施設でセキュリティ担当として働いている。 さらにまた、エアリアルは莫大な遺産を引き継ぐことになった。実の兄妹のように育った従兄のサムが事故死して、すべての遺産がエアリアルに渡ることになったのだ。しかし、受け取ったのは財産だけではない。そのなかには謎の古文書が含まれていた。 これは祖母パンドラが遺し、サムに譲られたものらしく、大いなる秘密が隠されているようだった。これにより、エアリアルの身辺には不可解な出来事が相次ぎ、命すらも危険にさらされることとなった。
にえ 私たちにとっては「8(エイト)」以来久々のキャサリン・ネヴィルです。
すみ キャサリン・ネヴィルにとっても、久しぶりの作品みたいね。「8」「デジタルの秘法」と出したあとで、6年かけて本書を完成させたのだとか。ということで、これが3作め。
にえ キャサリン・ネヴィルは、コンピュータ業界で活躍したのち、エネルギー業界のコンサルティング、バンク・オブ・アメリカの役員、画家、モデル、CMフォトグラファー等の仕事をしてたっていうから、なんと言いましょうか、パーフェクト・ウーマンって感じの人だよね。
すみ 「8」の主人公も、この「マジック・サークル」の主人公も、美人で才女ってのも、しかたないかもね。
にえ 主人公に作者がそのまま反映されてるなら文句も言えないか。となると、どっちの小説にも出てくる、腰が抜けるほどハンサムな男性とのロマンスは、願望なのか、現実なのか(笑)
すみ それはともかく、この「マジック・サークル」は紀元前からはじまって、ヒットラーにまでつながっていく壮大な歴史の裏に隠された秘密と、主人公エアリアル・ベーンのファミリーの複雑な血縁関係、人間関係の謎、 それに、古文書を受け継いだことでエアリアルに迫る魔の手の見えない正体、とその3本が入り組んで進んでいく小説なのだけど……。
にえ なのだけど、だよね。う〜ん、正直、乗れなかった。
すみ 私たちが世界史が苦手、キリスト教史をよく知らないってのが致命傷だったんじゃない? とにかく紀元前からさかのぼる歴史のところが読んでて辛かった。
にえ うん、教科書読んでるみたいだった。なにがどう結びつくかもわからないまま、唐突に、次々にギリシア、ローマの政治的な話とか出てきて、登場人物の名前も把握できず、起きたことをどんどん読んでいかなきゃならないし、 キリストと弟子の深読みしないとわからない難しい会話とか読まされるのは、私には苦痛だったな。
すみ 私はだんだんと理解もしないまま読み流すって感じになってしまった。
にえ 出たっ、お得意の流し読み大作戦(笑)
すみ 歴史が好きで、興味深いって人ならおもしろいのかな。ストーリーや登場人物に膨らみを持たせて史実を描き出してくれれば私でも楽しく読むんだけどね。こういう堅いかんじになっちゃうと、つい拒否反応が(笑)
にえ あと、エアリアルの複雑な家族の話も、複雑さは魅力だったんだけど、イマイチ乗れなくなかった?
すみ そうだね〜。家系図見せられて、次から次へとじつはこの人とこの人は血縁関係があって〜と真実が明かされていっても、ぜんぜん知らない人たちだし、ふだんはどういう風に見えるのかさえわからないから、 驚きようもないというか。
にえ 裏に驚かせるなら、もうちょっと表面的なところでは、どういうことになってるのかを見せておいてほしかったよね。表がなくて、裏だけ見せられてもな〜。
すみ とにかくなんかね、書きたいことばっかり沢山あって、ガンガンに書いちゃった、みたいなギスギスした感じがあって、読んでるほうが入り込める余裕がなかった気がする。
にえ 登場人物のだれか一人でも魅力があって、感情移入できれば少しは増しだったんだけどねえ。
すみ 魅力があってほしかったのは、やっぱり超ハンサムでエアリアルを誘惑しまくる、ヴォルフガングかな。彼の魅惑に悩殺され照れば、エアリアルにも感情移入できて、ああ、どうなるのっ、どうなるのって読めたかもね。
にえ そうだねえ。顔がいい、顔がいいってそればっかり言われても、きざったらしくて浅いことしか言ってくれなきゃ、こっちは魅力の感じようもないよね。
すみ とはいえ、まあ、私たちがダメだったってだけで、楽しめる人には楽しめるのかも。とにかく壮大な歴史と複雑な家系、そのなかには人類が2000年以上もの長きにわたって追い求めた秘密が隠されているの。
にえ 敵か味方かわからないってところはおもしろかったかな。つい最近までは長い間の友だちだった人とかが、みんな疑わしい行動をしだすの。最後の最後まで、どっちだかわからない。 でもやっぱり、作者と翻訳者の肩に力が入りすぎって気がしちゃったかな。
すみ ということで、私たちはごめんなさいでした。つっこまれないように最後に告白すると、私はけっきょく古文書じたいがなんだったのか、サッパリわかりませんでした、でへへ。