=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「高慢と偏見」 上・下 ジェイン・オースティン (イギリス)
<筑摩書房 文庫本> 【Amazon】 (上) (下)
イギリスの田舎、ハートフォードシャー州ロングホーン村の地主ベネット氏には嫁入り前の5人の娘がいた。限定相続によって男子にしか 遺産を残せないベネット氏が亡くなれば、土地と屋敷のすべては会ったこともない甥のコリンズに渡ってしまう。どうしても娘5人を資産家に嫁がせたいと 願うベネット夫人のもとに、朗報が届いた。隣の屋敷をビングリーという金持ちの独身紳士が借りることになったという。歓迎の舞踏会の夜、 ビングリーは二人の姉妹と友人のダーシーを伴って現れた。ビングリーは快活でハンサムな青年だったが、友人のダーシーはとても高慢で鼻持ちならない男だった。 | |
以前から読みたかったジェイン・オースティンの「高慢と偏見」に新訳が出たので読んでみました。 | |
名作イギリス文学で、「高慢と偏見」なんて堅苦しい題名だから、けっこう読みづらかったりもするのかな、なんて、 ちょっと心配してたりしたけど、ぜんぜん違ったね。 | |
財産もなく、身分も高くない、明るく賢いのが取り柄の女主人公が、素敵な王子様と出会って、紆余曲折を経て結ばれるかっていう、 きわめてロマンティックなお話だった。 | |
この本が最初に出版されたのが19世紀の前半でしょ、その頃の女性が、ドキドキワクワクしながら読んだのかしらと思うと、 なんとなく嬉しくなるよね。 | |
小説の冒頭では、まず5人姉妹が出てきて紹介されたでしょ、これは5人姉妹版「若草物語」みたいな 展開になるのかなと思ったら、違ったね。 | |
そうそう、5人姉妹なんだけど、主要な登場人物はそのうちの2人だけ。長女のジェインと、次女で主人公の エリザベス。 | |
長女の名前がジェインだから、ジェイン・オースティンの分身か?と思ったけど、これは関係ないみたいね。 | |
これが自分だと言うんだったら、ちょっと性格疑っちゃうよ。ジェインは超がつくほどの美人で、しかも 誰にたいしても善意的にしか考えない、天使みたいに心のきれいな女性なの。 | |
エリザベスのほうは、けっこう勝ち気で、疑ったり嫌ったりもするけど、辛いことにたいしては笑い飛ばすだけの 勇気と知性がある女性なのよね。 | |
ジェインが22才で、エリザベスが20才。あとの姉妹はメアリー、キャサリン、リディアと続いて、 一番下のリディアはまだ15才。 | |
15才っていっても学校に通ってるわけじゃないし、当時だと今と違って結婚する人もたくさんいるだろうから、感覚はだいぶ違うだろうけどね。 | |
メアリーは5人姉妹のなかで一人だけ容姿がいまいちで、勉強とお稽古ごとに熱心だけど、それがまた 鼻につく感じの熱心さで、行き遅れそうな雰囲気。 | |
問題は下の二人、キャサリンとリディアなんだよね。町に出て駐留している軍の将校たちを追いかけまわす、 ちょっとふしだらな少女たち。 | |
追いかけまわすっていっても舞踏会に出たり、ちょっとおしゃべりしたり、現代ならまったく問題ない範囲だけどね。 | |
でも、当時にしたら、そんな娘が二人いるってだけで、他の娘の婚期まで遅れちゃう。しかも、母親は頭が悪くて、激しやすい性格で、 ちょっと出すところに出すと恥ずかしいタイプ。 | |
親戚に事務弁護士と商人がいることも、それからもちろん、もらえる財産がほとんどないことも、地元じゃ評判の美人姉妹ジェインとエリザベスに とっては不利な条件なのよね。 | |
それでも、お金持ちでハンサムな青年紳士ビングリーはジェインに一目惚れするし、もっと身分が高くて、もっと金持ちのダーシーは、どうやら 少しずつエリザベスに惹かれていってる様子、さあ、どうなるやらってお話なんだけど。 | |
とにかく読み出したら止まらなかったよね、当時の女性たちにとって恵まれた結婚をすることがどんなに大切かわかってくると、ほんと身につまされるし、 次から次へといろんな事が起きて、どうなるの、どうなるのって先が気になるし。 | |
なにげに一番おもしろいのは、5人姉妹の父親ベネット氏なんだけどね。この人が辛辣なうえに、いつもふざけてて、 冗談とも本気ともとれないような遠回しのイヤミを言うんだけど、これがどれも笑ってしまうの。 | |
スーパーおしゃべりの牧師コリンズとか、身分が高くて傲慢なうえに、ひとんちの台所のことまでとやかく口を出すお節介焼きの婆さんとか、 脇役も個性があっておもしろかったしね。 | |
とにかくまあ、質が良くて、品のいいラブロマンス小説。ジェイン・オースティンは他の作品も似たり寄ったりだとよく言われるそうだけど、 なんとなくこれ1作読んでみてわかった。 | |
お手紙が届くまでソワソワするシーンが何度か出てくるんだけど、電話も、もちろん携帯電話もない時代の恋愛小説って情緒があっていいなあとあらためて思ったな。 とにかくそういう当時の風俗その他を含め、めいっぱい楽しませていただきました。 | |