=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「連続殺人記念日」 デイヴィッド・プリル (アメリカ)
<東京創元社 単行本> 【Amazon】
アメリカの片田舎の町スタンダード・スプリングズで暮らすデビイは明るい少女。くよくよ悩むことも ないし、悪いほうに物事を考えることもない。両親に嘘をつくのは嫌いだし、弟の面倒もよくみるほうだ。 だが、それでは駄目。なぜなら、町で年に一度だけ、二十年以上も続いている連続殺人を記念した「連続殺 人記念祭」のコンテストで、でライバルのモリイに打ち勝ち、絶叫クィーンの座を射止めるためには、 内面に本当の恐怖を宿らせなければならないのだから。 | |
基本的には、小さな田舎町で暮らす少女が恋や友情で成長していくお話なのよね。 | |
その、人口4317人しかいない町の牧歌的な描写もふんだんに盛り込まれてるしね。 | |
ただ、変なことがいくつか。まず、毎年だれかが殺されてる のに、住民はあんまり気にしないで、それを観光事業に生かそうとしている。 | |
たっだ4317人しか住んでなくて、そのうちの誰か一人が 確実に殺されるっていうのに、危機感ってものが全然ないのよね。 | |
そして、「連続殺人記念祭」という変な祭り。 | |
黒い綿菓子が売られていたり、戦慄回転木馬なんてアトラク ションが用意されてたりするのよね。 | |
だいたい、毎年殺人が行われてて犯人が捕まらないからって、 町をあげてパレードをやったり、コンテストをやったりするかね(笑) | |
町の名前も「連続殺人町」にしようなんて本気で話し合ってるしね。 | |
で、ごく普通の会話のしめが唐突で変。ギョッとさせられち ゃう。「ええっ、なんじゃそりゃ」とか叫びたくなるよね。 | |
いっこだけ紹介すると、上品な女性を褒めたたえる会話を してるときに、最後のしめが「いい方よねえ。中近東にもいらしたことがあるのよ。たしかシーア派の人と 交際していたと思うわ」。まさになんじゃそりゃ〜よね(笑) | |
でも、全体の雰囲気は和やかで、和気あいあいとした田舎町の 人たちと、平凡な少女の青春物語。ほんわか〜としてるの。 | |
そのコントラストが妙なのよね。時々、ファンタジックな場面は出てくるけど。 | |
秘薬で見る幻覚とかね。これでも一応、分類的にはファンタ ジーに入るらしいから。 | |
で、まあ連続殺人犯は誰かっていうのが、読んでてどうしても 気になるところだけど、これは気にしてもしょうがない(笑) | |
だって誰も捕まえようって気がないんだもんね。 | |
ちなみに絶叫クィーンのコンテストは、ようするに聴いた人の 鳥肌が立つような悲鳴をあげた女の子が勝ち。 | |
デビイはそのためにレッスンに通ってるのよね。悲鳴の発声練習。 | |
コンテストに出られる年齢制限上限の18歳で、最後のチャンスなの。 | |
声を張り上げるだけじゃダメなのよね、聴いてる子供が泣き叫ぶよ うな、恐怖を呼びさます声じゃないと。 | |
そのための努力をするわけだから、ある意味スポコン?(笑) | |
でも、せっかく恐怖体験をしても、本人がホンワカワ〜な性格 だから、あんまり意味ないんだけどね。 | |
まあ、肩の力を抜きまくって読むのがいいんじゃないでしょうか。 | |
奇妙奇天烈な設定とはいえ、品よくキレイにまとまっていまし た。ユーモアのセンスも意外と知的なくすぐり系だったりするしね。 | |