=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「灼熱」 シャーンドル・マーライ (ハンガリー)
<集英社 単行本> 【Amazon】
ようやく、コンラードが戻ってきた。別れも告げずに去ってから、41年と43日という長い年月が経っていた。 ヘンリクは75歳。ヘンリクが生まれてからずっとそばについている乳母のニニは91歳。昔の栄華は見る影もない屋敷を 41年前のあの日の晩餐と少しでも同じになるように整え、コンラードの到着を待っていた。 | |
1900年に生まれ、1989年に自殺した作家シャーンドル・マーライの小説が、 新刊で出たので読んでみました。 | |
アンソニー・ホプキンスとジュリエット・ビノシュの主演で映画化されるのだそうな。 | |
読後の感想は、う〜ん、なんとも不完全燃焼なんだけど(笑) | |
良いことは良かったよね。なんだかものすごく文学〜って感じで。 | |
そうね、愛と憎しみ、それに青年の根深い嫉妬という古典的なテーマがなんともいい雰囲気。 | |
たしかにまあ、わからないままなところは多く残るけど。 | |
それはいいのよ。いくら私でも、文学作品を読んで、ズバッとぜんぶハッキリさせてから 終わってくれなんてお子ちゃまなことは言わないわよ。 | |
でもさあ、1940年の現在から、少しずつ過去の、1899年に起きた出来事がわかっていくって いうお話で、小出しにされていくから、読んでると全貌が明らかにされるのをつい期待しちゃうよね。 | |
とりあえずは明らかにされるけど、一方的な、偏った情報なんだよね。その偏り方とか、 おもな登場人物の3人の思いやりに欠ける利己主義さとか、ぜんぶがとってもとっても微妙で、気にしたほうが良いのか、気にするほうがおかしいのか、う〜ん。 | |
そういう、今一歩踏み込めそうで踏み込めないところがお気に召さないわけね。 | |
そういう言い方をされてしまうと身も蓋もないんだけど、なんかとにかくそう、受けとり方に困ってしまったし、 感動するっていうところまで行けなかった。 | |
古典的な文学ってそういうものなんじゃない? 深みといっても、あなたが求めているようなところとは 違うところに感動を求めるというか。 | |
まあね、とにかく古典というほど古くはない作品だけど、とっても古典的な感じのする小説でした。 ウダウダ言ってるけど、悪くはなかったのよ。 | |
ストーリーは、ともに75歳となったヘンリクとコンラードという男性が、ヘンリクの屋敷で、 41年ぶりに再会をはたすことになったというところから話がはじまります。 | |
ヘンリクとコンラードが知りあったのは10歳のとき。ウィーンの士官学校でベッドが隣同士になって、 それからは大親友として長い時を過ごしたの。 | |
ともに貴族のご子息ではあるんだけど、ヘンリクが大貴族で大金持ちの家の子であるのに対し、 コンラードの家は貧しいのよね。 | |
ヘンリクの父は国王とも親しくつきあう近衛将校なの。この人は良いのよ〜。威厳があって、でも、わからずやではなくて。 | |
母親はフランス人なのよね。華やかなフランスの市街地の屋敷から、ハプスブルク帝国(オーストリア)の森に囲まれた 屋敷に連れてこられて、なかなか折り合いが付けられなかった人みたいだけど。 | |
1940年の現在の地位は、ヘンリクが将軍で、コンラードが大尉。どういうことでそうなったのかは読めばわかります。 | |
それから、ヘンリクの妻となったクリスティーナが絡み、大親友だったはずの二人は、41年前の決別の日を迎えることとなるのよね。 | |
途中、ヘンリクが人を二種類に分けて話してたでしょ。そこは好きだったな。その関係、心情はわかる〜と思った。 | |
なんだかんだ言っても、かなり良かったんじゃないかな。狩りの話とか違和感はなきにしもあらずだし、登場人物に納得がいかないところも あったにせよ、読み応えのある文学作品でした。 | |