すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「運命」 ロス・マクドナルド (アメリカ)  <早川書房 ポケミス> 【Amazon】
夜も明けやらぬ早朝、私立探偵リュウ・アーチャーのもとに見知らぬ男が訪ねてきた。大きな体に 端正な顔立ち、カール・ホーンは精神病院から逃げ出してきたという。カールは父親の死の真相を調べて ほしいとアーチャーに言うが、話はようとしてまとをえない。 カールを病院に帰すことにしたアーチャーだが、病院の前で突然カールに襲われ、車を奪われてしまった。
にえ かための推理ものは久しぶりですな。
すみ あんまり期待してなかったんだけど、これ、おもしろかったね。
にえ うん、おもしろかった。話がなかなか複雑で、結末の衝撃もありでした。
すみ カールの父親は事故で死んだことになってるんだけど、 カールの家は金持ちで、もしかしたら醜聞を避けるために本当のことを隠しているのかもしれないのよね。
にえ でも、カールが精神を病んでいるのもたしかだから、父親の死 を他殺だと思いこんじゃってるって可能性もあるのよね。
すみ その前に死んだカールの母親は自殺ってことになってるんだけ ど、これもあやしいの。
にえ もしかしたら、カールがやったってこともありうる。
すみ そこにきて、またまたカールの家で殺人事件が起こるの。
にえ 登場人物はカールの兄夫婦。兄は怒りっぽい人で、カールをむりやり 精神病院に入れちゃった可能性もある。妻はオイロケ美人で、医者のグラントランドってやつと隠しもしないで 浮気の真っ最中。
すみ カールの奥さんミルドレッドはカールの無実を信じてて、その お母さんはアル中。ミルドレッドに言いよる保安官のオスタヴェルト、こいつは超いやな奴。
にえ それに家政婦とか、カールの幼なじみの新聞記者とか、カール と一緒に病院を逃げ出した麻薬中毒の男とかが絡んでくるんだけど、利害関係が複雑で、誰が犯人か、 ぜんぜんわかんなかったよね。
すみ とにかく肝心のカールが逃げ回っちゃってるし、言ってること が当てにならないし、先が見えなかったよね。
にえ でも、一番かわいそうなのはアーチャーよね。依頼料ももら えないから、手持ちの40ドルしかお金がなくて、安いモーテルに一泊したあと、あと24時間以内に 事件を解決しなければ、モーテルにもう一泊する金がない、なんて言っちゃって、ああ、かわいそう(笑)
すみ それでもって、カールの奥さんをちょっと好きになって、ちょ こっと自分と再婚してくれないかな、なんて思っちゃうのよね。40ドルしかお金がないんじゃ、再婚相手 としてはちょっと厳しいよね(笑)
にえ 着替えもしてなくて臭そうだしね。なんとなく胸毛もはえてそうだし。
すみ それは関係ないでしょ、世の中の女の人がすべてにえちゃんと 同じ胸毛嫌いとは限らないし。それに、お互いが気にいったんなら、話し合いで胸毛は剃ることにしても いいんだし(笑)
にえ それにしてもさ、推理小説に出てくる人って、なんで訊いた ことにハッキリ答えないんでしょうね。長年の友達だって、遠回しなことをウニャウニャっとしゃべ って、「こんなことしか言えなくてすまない」とかなんとか言うのよね。
すみ 調べてる探偵とかも、「いや、じゅうぶん参考になったよ」なん て、それ以上訊かないしね。
にえ 「てめえ、長年の友人だったらウダウダ言ってねえで、しゃきっと 答えろよ」って腹でも殴ってやればいいのにねえ(笑)
すみ まあ、そんなことも考えつつ読んだんですが、地元の名士って かんじの家のなかの複雑な人間関係といい、それぞれの問題を抱えた登場人物といい、最初から最後まで 深みのある、なかなかの推理小説でした。
にえ アーチャーも過去のことでちょっと悔いてる部分もあったりし て、ヒーローって感じの存在ではなかったから好感持てたよね。
すみ 互いに憎しみあってる人たちの嫌味な会話合戦もおもしろかったしね。
にえ わかったあとも、胸を打つ悲劇で、読みがいがありました。これは満足♪