=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない」 ジャン・ヴォートラン (フランス)
<草思社 単行本> 【Amazon】
パリ効外の団地で、結婚式をあげたばかりの花嫁が射殺された。犯人はビリー・ズ・キック。 それは、シャポー刑事が娘ジュリー=ベルトのために作った話の主人公と同じ名前だった。次々に殺される女たち。 疑われたのは、精神分裂病の男イッポ。だが、イッポとジュリー=ベルトはひそかに婚約していた?! | |
これは、前に読んだ『鏡の中のブラッディ・マリー』の前作にあたるんですが・・・。 | |
私たちの下手なあらすじ読んでもらっても、なんだかわからな いんじゃないでしょうか〜。 | |
なんかねえ、この人の本はオムニバスっぽかったりもして、 ストーリーを説明しづらいのよね。 | |
じゃあ、登場人物を羅列しときましょう。 | |
シャポー刑事は、ハンサムさんだけど、背が低い。それが コンプレックスになってて、精神的に荒れてます。 | |
その上司ベランジェは休暇中で、なんだか笑うトカゲを殺す ことに夢中になってるのよね。 | |
で、シャポー刑事の妻ジュリエットはものすごく綺麗な人で、 森でトラックの運ちゃん相手に売春をしているの。 | |
娘のジュリー=ベルトは人を殺すことを夢みていて、見た目は 作り物のお人形みたい。で、なぜかみんなを狂気に引きずりこむ魅力があるのね。 | |
で、ジュリー=ベルトよりずっと年上の婚約者イッポは精神 分裂病でオペラ歌手を殺しかけたことがあるんだけど、子供たちの中ではカリスマ的存在。 | |
イッポの母親は、イッポのことで悩むと腕をねじる癖がある。 | |
シャポー一家の向かいの部屋に住む謎の女ペギーは、マリーネ ・デートリッヒの物まねをする芸人で、しかも・・・とまだまだ変わった人のオンパレード。 | |
だからって、ユーモア小説ではないのよね。血なまぐさい上に 妙な緊張感が漂ってて、しかも乾いてる。 | |
で、細かく章に分かれてて、語り手がどんどん入れ替わる。歯切れ のいい文体でテンポよく、ストーリーの展開も早いしね。 | |
なんか一応ストーリーはあるんだけど、ディティールをつなぎ合わせていって、 全体でひとつの前衛芸術的な絵を作る、みたいな感じがあるよね。 | |
フランスでは、「ネオ・ポラール(ロマン・ノワール)」という 新しいミステリーの運動があって、ヴォートランはその旗手的存在らしいです。 | |
もともとは、映画監督だったりしてた人なのよね。だから、 描写はすごく映画的。 | |
もともと、そのネオ・ポラールっていうのが、謎解きではなく、 荒廃した現代を描き出すことに主点を置いた新しいミステリーなんだそうです。 | |
だから、この人の作品も、暴力や無秩序が横行する、近未来的 廃墟の世界なのね。 | |
読んでるとなんとなく、『ブリキの太鼓』とか『時計仕掛け のオレンジ』とかを連想するよね。 | |
そうそう、読んでて胸に空気が入っちゃったみたいにスカスカ してくる、あの感じね。 | |
でも、こっちのほうがより映像的で過激、ハデハデしいの。 | |
勢いにのせられて、あっという間に読めちゃうしね。 前衛的だけど、読みやすい。 | |
けっこういろんな小説読んできたって人には、おもしろいと 思うんだけど。もちろん、たまに読むぶんには、だけどね(笑) | |