すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「アバウト・シュミット」 ルイス・ビグレー (アメリカ)  <メディアファクトリー 文庫本> 【Amazon】
アルバート・シュミットは60才、妻が亡くなって早期退職したが、もとはアメリカでも屈指の大手弁護士事務所の 弁護士だった。妻が亡くなって半年、ハンプトンズというニューヨーカーならだれもが憧れる高級別荘地にある 大きな屋敷に住んでいる。といっても、これはもともと妻の叔母のもので、相続した妻はシュミットには生涯にわたる居住権を 遺しただけで、財産としては娘シャーロットのものとなっている。そのシャーロットは、長く同棲していたシュミットの部下と 結婚すると言いだした。シュミットはそれが気に入らない。彼がユダヤ人だから。彼が仕事人間だから。彼が守銭奴だから。 理由はいろいろあるが、とにかく気に入らないのだ。
にえ ジャック・ニコルソン主演映画の原作ということで読んでみました。
すみ とはいえ、映画はだいぶ原作とは違ってるみたいだけどね。ストーリーも別物ってぐらい違うみたいだし、 主人公の名前も、年齢も、経歴も、それから見かけも(笑)
にえ そうそう、映画の主人公は原作よりだいぶ見すぼらしくなっちゃってるみたいだよね。 相変わらず、私たちは映画のほうは見てないんだけど。
すみ 小説のシュミットのほうは、高学歴、高収入で、すらっと高身長、そのうえだれもが憧れる 別荘地にあるデッカイ屋敷に住んでる、傍目にはちょっと近寄りがたいようなエリートに属する人。
にえ 愛する妻が亡くなって、生き甲斐だった仕事もなくし、ちょっと途方に暮れている 状態なのよね。とにかく暇を持てあましちゃってて。
すみ 妻は出版社の編集者をやっていた、やり手であると同時に品が良くて明るくて社交的な人だったの。 だから友だちもたくさん。妻が亡くなってみたら、交際をしていたのはほとんどすべて妻の友だちで、自分の友だちではなかったことに気づくシュミットであった。
にえ 唯一の親友は学生時代から四十年以上のつきあい、超有名映画監督のギル。ギルとだけは、なんでも話せる仲なの。
すみ で、かなりの美人で広告代理店に勤める娘シャーロットが、シュミットの元部下のジョン・ライカーと 長い同棲生活のすえ、ついに結婚することに。ジョンはユダヤ人。シュミットはそれが気に入らないと言うけど、親友のギルもじつはユダヤ人なのよね。
にえ 初っぱなから、やけにユダヤ人に偏見持ってるような発言が多いと思ったら、 やっぱりというか、じつはというか、作者のルイス・ビグレー自身がユダヤ人なのよ。
すみ しかも1933年生まれで、ポーランド生まれなんだけど、ナチスの迫害を逃れて 14才で渡米、永住して弁護士として活躍した人。こだわりの理由は明確よね。
にえ で、シュミットは時々食事に行くレストラン<オー・ヘンリー>のウェイトレスで、 20才の魅力的なプエルトリコ人娘のキャリーに好感を持っているの。
すみ ストーリーは、それほど起伏があるわけじゃなくて、娘との仲がこじれていくばかりだったり、 キャリーとの交際の話だったり、なんだか気味の悪い男につきまとわれたりと、そういう日常に近いような流れのお話。
にえ シュミットは大きな屋敷を自分が生きているあいだに娘に譲ろうとしてるのよね。 そのことでも、ゴタゴタと。
すみ 読んでいるあいだは、正直なところ、あとでけなすことしか考えてなかったのよね〜(笑)
にえ そうそう、婿となるジョンの両親に会ってみたら、母親がやけに魅力的な人で、 その人といきなり初対面で二人きりになると上にのしかかってきたり、まだ20才の女性が、たいしたきっかけもないのにシュミットに熱烈に恋をして、 家に直接やってきて肉体関係を迫ったり、これは初老の男性の願望妄想小説かと思っちゃった(笑)
すみ 20才の娘のほうはもう置いておくにしても、いくらなんでも精神科医として地位のある女性が、自分の息子の 花嫁の父親に欲情して、初対面で迫ってくるかなとギョッとしたよね。こんなことが本当に日常茶飯事なら、アメリカってエロすぎるっ。
にえ シュミットの思い出話にしても、妻を愛していたのに若い女性と関係を持ったとか、そういう話ばっかりだし、 親友の映画監督のほうも、妻を愛しているのに26才の愛人がいるって話を得意げにしているし、かなり途中でウンザリしてきたよね。
すみ 他の夫婦の話も、シュミットの妻の思い出も、性生活中心だったしね。 まあ、60才の男性が暇を持てあましてエロエロになっちゃうってのはわからないでもないんだけど、それほど興味はもてないというか(笑)
にえ 仲良くしたいと言いながら、喧嘩ばっかりふっかけてくる娘のシャーロットもよくわからなかったよね。 ギスギスしてて、柔らかみってもののない女性なの。
すみ とまあ、不満タラタラで読んだんだけど、ラストでやられちゃったね。
にえ うん、ラストのところの手紙の内容、あれだけで読んでる最中のイライラは吹っ飛んで、 ジンと来てしまった。
すみ 小説より映画のほうが良いお話になっていそうな予感。ただ、ラストが良かったから、 読みたいのなら止めませんって感じかな。期待してたものとはかなり違ってたけど。