=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「転落・追放と王国」 カミュ (フランス)
<新潮社 文庫本> 【Amazon】
中編小説「転落」 短編集「追放と王国」 不貞/背教者/唖者/客/ヨナ/生い出ずる石 | |
新装改訂版が出たので読んでみました。高校生の頃に「異邦人」を 読んで以来、ずいぶんとご無沙汰、私たちにとって2冊めのカミュです。 | |
中編小説の「転落」と短編集「追放と王国」を一緒にした本なんだけど、 もともと「転落」は「追放と王国」に入れる短篇小説として書きはじめて、長くなったから中編小説として 単独で発表した作品だから、1冊の本にまとめるのはしごく自然なことなんだそうな。 | |
いやあ、それにしても不思議だよね。百年ぐらい前に書いた小説が、 読んでみるとけっこう古さを感じさせなかったりすることがけっこうあるんだけど、逆にこういう5、60年前ぐらいに 書かれた小説って、妙に古さを感じるよね。 | |
遠からず近からずって中途半端さと、新しさを目指してる〜ってのがなんとなく伝わってきて、 それがなんともいえない感慨を呼ぶからかもね(笑) | |
ということで、私はなんだか妙な距離感をもって、ヤケに冷めた気持ちで 最初から最後まで読むことになってしまった。 | |
私はまあ読む前から、読んでおもしろいってものではないだろうなと思ってたから、 こんなもんかなってのが正直な感想なんだけど(笑) | |
で、以下、作品ごとのご紹介ですが、まともなコメントはしておりませんのであしからず。 | |
こういう作家さんについては、ちゃんとした書評が読みたかったら、ちゃんとした人の サイトをご覧にならなくっちゃダメよ、なんて開き直ったりして(笑) | |
<転落>
オランダ、アムステルダムのバー「メキシコ・シティー」で、フランス人紳士が注文に困っている ところを、ある男に助けられた。男はジャン・バチスト・クラマンスと名乗った。かつてフランスで、 有名な弁護士だったという。 | |
自分は、自分が考えていたほど善なる人間ではなかった、というようなことが クドクドと書かれてたんだけど。 | |
まあ、あんまり自分に対しても、他人に対しても、どういう人間だとか決めつけないほうがいいよね(笑) | |
高校生ぐらいのときに読んでたら、深い感慨を覚えてたんじゃないか、なんて思いつつ、 すっかりこういうことで悩まなくなったなあ、なんてことも思い、そういうことを言う大人が嫌いだったんだよな、なんて苦笑しつつ読んだのでした。 | |
クラマンスは、感謝も求めずひたすら善行を繰り返し、そこに快感を得ていた自分に気づいた男なのよね。 | |
エピソードのひとつひとつに、そんなことぐらいでいちいち考えこむなよ、なんてツッコミを入れてしまった。 | |
全編がクラマンスの一人語りです。こういう小説は、キチンと哲学できる人が読むべきなのよ。私たちは生きっ放し(笑) | |
<不貞>
繊維品の商売をする夫に連れられ、ジャニーヌはアラビアを訪れた。広がる砂漠、こちらをじっと見つめる アラビア人、フランス軍兵士、自分とは何もつながることのない異国が、ジャニーヌの中になにかを目覚めさせた。 | |
これはポール・ボウルズの「シェルタリング・スカイ」を連想したな。 なんだか似てるよね? | |
砂漠、異国情緒、夫婦生活に倦んでいる、まだそこそこ見栄えのする女ってところがでしょ。 | |
なんかそういうふうに言い切られちゃうと、身も蓋もないって感じなんですけど(笑) | |
じゃあ、死語ぎみの言葉を使って「アンニュイな雰囲気が」とでも言えばいいのかしらね〜(笑) | |
<背教者>
子供の頃、彼を教育した司祭は彼のことを「賢い子だが騾馬みたいだ」と言った。宣教師となった彼は、 周囲の制止を振り切って、アフリカの地を訪れた。 | |
宣教師となった男は、怪しげな異教徒どもに捕まり、舌を抜かれ、拷問を受け、その後なぜか改宗 しちゃいます。 | |
どうしてまあヨーロッパの白人の方々は、アフリカをこうオドロオドロシイ世界にしたがるんでしょうね。 | |
<唖者>
20日続いたストライキは失敗し、要求ははねのけられた。たった15人しか従業員のいない樽工場では、 しょせん勝てるはずもなかったのだ。樽職人のイヴァールは40才。海を見ないようにしながら工場に向かい、 自転車を走らせた。 | |
これは好きだったな。ストライキをやって、給与は期待どおりにはならなくて、 とりあえずはまた働きはじめた工員たちと、工場主の心のすれ違い。 | |
文句を言うわけでもなく、ただ黙々と、話しかけられても応えず働く労働者たちと、これまでだって 良くしてやったし、これからだって仲良くやっていこうよっていう工場主のあいだにあった壁があるきっかけで少しだけ・・・という展開。 | |
<客>
ダリュは、生徒が20人ほどしかいない学校の教師だった。坂の上にある学校に、二人の男が向かってきていた。 一人はダリュもよく知る老憲兵、もう一人は、見知らぬアラビア人だった。 | |
これは、殺人犯のアラビア人を連れていけって言われた教師が、ある行動をとるって話なんだけど、 サッパリわからないラストだった。 | |
う〜ん、まあ、不条理ってことかな。なんていい加減なことを言ってみたりして(笑) | |
<ヨナ>
画家ジルベール・ヨナは、自分の星を信じていた。だから、画家として成功しても、少しも意外ではなかった。 自分の才能のためではなく、星のおかげなのだから。成功したヨナのまわりには、多くの人が集まりはじめた。 | |
成功したために人が集まりすぎて、集まったすべての人に愛想良く振る舞ったすえに画家は・・・という お話なんだけど、このラストは、やっぱりなってところかなあ。 | |
まあ、話としてはラストも含めてありがちだけど、主人公がヨナって名前のところに含むものがあるんでしょ。 | |
<生い出ずる石>
ブラジルを訪れたフランス人技師ダラストは、神を信じてはいなかった。しかし、船火事であやうく死ぬところだったところを 神に祈り助けられたコックが、神への誓いを果たそうとする行為を否定するつもりはなかった。 | |
それにしても、「転落」といい、「背教者」といい、「ヨナ」といい、これといい、 キリスト教をくさすようなことを、ジクジクと書くのが好きな人だったんだねえ、カミュさんは。 | |
いや、作者の思想背景も知らずに漠然と読んでる私たちが問題なんだと思うよ(笑) | |