=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「香水 〜ある人殺しの物語〜」 パトリック・ジュースキント (フランス) <文藝春秋 文庫本> 【Amazon】
18世紀初頭のフランスで、生まれてすぐに孤児になったグルヌイユという男がいた。彼は常人とは 違い、まったく匂いのしない人間だった。そのために人に恐怖心を宿らせ、疎まれて、愛を知らずに育つ。 だが、成長するにつれ、彼はとんでもない天才だとわかる。グルヌイユは匂いにたいして、とてつもなく 鋭敏だった。その才能は、グルヌイユをどこに導くのか。彼の犯した連続殺人とは。 | |
前に読んだフランス作家の作品『マーチ博士と四人の息子』や『悪童日記』と殺人の描き方が似てたよね。 | |
うん、なんて言うのかわかんないけど、不条理殺人というか、 感情なき殺人というか、殺人があっけないほどこざっぱりと描写されてるのよね。 | |
あとこのびっくりするぐらい都合よく進んでいくストーリー展開、これも似てた。 | |
書かれた年も前後するし、一時的か、今も続いてるかわかん ないけど、フランスではこういう書き方が流行ってたんだろうね。 | |
ただ、この本に関しては殺人がメインってわけでもないから、 『マーチ博士と四人の息子』や『悪童日記』に不快や嫌悪を感じた人も、これは気にならないと思うけど。 | |
そうだね、ストーリーの展開の仕方も、舞台が18世紀初頭っ て設定だから、ササッと処理される物語のほうも、時代の雰囲気に合ってて、それほど違和感はないしね。 | |
で、メインの話の方ですが、邪悪な精神を持った男の崇高な 才能っていうのがいいし、それに、こういうウンチクタレ気味の話は好きだな〜。 | |
そうそう、読んでる間にグルヌイユと一緒に香水の精製方法とか学べちゃうよね。 | |
それにさあ、個人特有の匂いとか、道の匂いとか、ふだん意識 していないところを指摘されて、ワクワクしちゃったよね。 | |
それにしても、グルヌイユの嗅覚は凄いよね。部屋の中の お金の隠し場所とかまで匂いだけでわかっちゃうんだから。 | |
でも、嗅覚が鋭いのに食べ物にこだわらないのよね。食べ物を 味わうときって普通は匂いが重要なのにねえ。 | |
それにさあ、鼻が鋭すぎると、いい匂いだけ嗅いでいたいと 思うか、無臭のところにいたいと思うだろうに、クサイ匂いの中にまで価値を見いだしちゃうのよね。 この辺はホント、おもしろい。 | |
でさあ、神聖な雰囲気さえ漂う花や香水の話と、えげつ ない人々の話が交差して書かれてたりして、そういうメリハリの魅力もあるよね。 | |
で、なんといっても心躍るのが、グルヌイユの冒険の物語でしょ。 | |
場所を変え、職業を変え、才能を生かす方法をどんどん身に つけていくのよね。どんどん邪悪度も増していくし。 | |
で、途中で奇想天外な実験の材料にされたり、仙人の修行みた いな状態になったり、そういうエピソードも盛り込まれてて、楽しめたよね。 | |
うん、18世紀初頭って設定がよかったのよね。錬金術とか、 昔読んだ本当にあった不思議話とか連想させるエピソードだった。 | |
とにかく止まることなく、どんどん展開していくから、 読む速度が落ちなくて一気にいけるよね。 | |
グルヌイユの技能の成長も凄かったよね。素晴らしい香水を どんどん作っちゃうっていうのは誰でも予想できるだろうけど、そこからの発展の仕方はすごいよね。 | |
そうそう、あんな香水まで作っちゃって、そのせいであんな ことにまでなっちゃって(笑) | |
まあ、この辺は読んでお楽しみってことで、ともかく、ちょ っと変わった話が読みたくなったら、これはオススメじゃないでしょうか。 | |
あんまりこういう本ばっかり続けて読んでると頭が変になり そうだけど、たまに読むぶんには、これぐらい妙な話は刺激があっていいよね。 | |
めいっぱい濃くて、それでいていやな後味のない、意外と淡白 な読後感、文章も読みやすかったですよ。 | |