すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「航路」 上・下  コニー・ウィリス (アメリカ)  <ソニー・マガジンズ 文庫本> 【Amazon】 (上) (下)
デンヴァーの大病院マーシー・ジェネラルに勤務する認知心理学者のジョアンナは、NDE(臨死体験) の原因と働きを科学的に解明するため、臨死体験者の聞き取り調査に奔走していたが、あの世の存在を信じ、 捏造ともいえるような臨死体験本『トンネルの向こうの光』を書いてベストセラーを飛ばし、多額の寄付を して病院にのさばるモーリス・マンドレイクに邪魔されてばかりいた。NDE研究プロジェクトで臨死体験を 科学的に解明しようとしている神経内科医のリチャード・ライトは、マーシー・ジェネラルに来るとすぐに、 ジョアンナの協力を求めた。今の仕事だけでも手一杯なジョアンナは断ろうかと考えたが、ジョアンナの親友で ER(救急救命室)の看護婦ヴィエルは、独身でキュートなリチャードにぜひ協力するべきだと忠告した。
にえ やっと読みました、コニー・ウィリスの「航路」です。おもしろかった、 おもしろかった、おもしろかった〜っ。
すみ まあ、落ち着いて。今回はしゃべれないことが多すぎて、そのセリフは小出しにしたいところなんだから(笑) でも、 ホントにおもしろかったよね。翻訳者さんの十年に一度の傑作っていう絶賛にも納得。
にえ 読む前はね、ちょっと心配してたの。病院を舞台にした臨死体験にまつわる 話ってことで、バリバリ科学的なお話で、「ドゥームズデイ・ブック」的な楽しさや純粋な感動は期待できないかな〜と。
すみ ところが、ところが、だよね。「ドゥームズデイ・ブック」なみに、あーだし、こーだし、 ああ、全部しゃべっちゃいたい(笑)
にえ 主人公の女性ジョアンナ・ランダーは、眼鏡をかけてカーディガンを羽織り、 食事をとるのも忘れて仕事に励んでる女性なんだよね。
すみ でも、親友の看護婦ヴィエルとディッシュナイトと名づけた映画ビデオを見る会をやったり、 著名人の臨終の言葉をコレクションして披露してみせたり、となかなか楽しい人だったりもするんだけど。
にえ 映画の話はやっぱり、めいっぱい出てきたね。出てきた映画タイトルを列挙するだけでも、 かなりの量になりそう。
すみ 親友といえば、メイジーもジョアンナの親友だよね。心臓病で3回も臨死を体験した少女なんだけど、 ちょっと生意気なくらい頭がよくて、タフで、世界の人が大量に死んだ災害について調べるのが趣味なの。
にえ 人が訪ねていくと、ちょっとでも長く病室にいてほしくて、必死で話を引き延ばすのよね。それに 話題がコロコロ変わって、ついていくのが大変な時もあるけど、けっしてメソメソ泣いたりしない子なの。
すみ で、ジョアンナは臨死体験をした人と面接をして、「真っ暗なトンネルのなかにいた」とか、 「ドアが開くように眩しい光が射しこんできて、人が立っていた」とか、そういう臨死の時に見た幻覚らしきものの話を集めてるの。
にえ 体験した人はみんな、幻覚じゃなくて現実だったって主張してるのよね。それを集めて分析することで、 臨死体験の原因と働きを科学的に分析しようとしてるんだけど。
すみ なにかというと、モーリス・マンドレイクの邪魔が入るのよね。病院を好き勝手に出入りできる マンドレイクが先に面接しちゃうと、「そこは美しい花園ではなかったですか」とか「立っていたのは天使ではなかったですか」とか、 誘導尋問みたいな質問をしてしまうから、ジョアンナのめざす科学的な分析は台無し。
にえ マンドレイクは本気で、あの世が本当にあって、臨死体験は心やすくあの世へ行くための<向こう側>からの お迎えだって信じてるのよね。死は怖がるものではないのだって主張に悪気はないっていうか、善意ではあるというか。でも、邪魔。
すみ ジョアンナは仕事以上に、マンドレイクから逃げることに神経を使わなくちゃならないからね〜。
にえ そんな時に現れたのが神経内科医のリチャード。リチャードは薬物投与によって 疑似NDE(臨死体験)を引き起こし、臨死体験の原因と働きを科学的に解明しようとしてるんだけど。
すみ ここにもまた、マンドレイクの邪魔が入るのよね。
にえ で、ジョアンナは疑似NDE後の被験者の面接を担当して、記録、分析することに なるんだけど、そこにもまた、嘘か本当かわかならないような海軍時代の面白ビックリ話をするおじいちゃんが現れたりして、 なかなか楽しかったりもするのよね。
すみ それからいろいろあって、被験者が足りなくなって、とうとうジョアンナが みずから被験者になることに。
にえ なんと、ジョアンナが見た、そして体験したのは、アレなのよ、アレ。もうビックリ、ビックリ。 そう来たか〜って感じ。
すみ ここで新たなストーリー性が出てきて、話は膨らみまくって、さらにおもしろくなっていくのよね。 そのうえ、下巻の後半部では、もっとビックリなことがあって、そこからの展開はもう読みだしたら先が気になって、 やめられない、止まらないっ(笑)
にえ とにかく、知識のつめこみ方が本当に自然で、うまいんだけど、医学だ、科学だっていう、 おもしろいけど、理解してついていくのが大変〜って話ではなくて、もっと違う方面で楽しませ、感動させてくれる小説です。 素晴らしかったの一言につきるな。
すみ 何度も驚かされ、ぐいぐい引っぱられまくるストーリー展開だったし、メイジーのセリフに 2度ほどホロッと泣きそうになる箇所があったりもして、とにかく夢中になって読めました。いろんなタイプの小説のおもしろさを 抽出して、ひとつにまとめたような小説。もちろん、オススメ!