=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「黄金の眼に映るもの」 カーソン・マッカラーズ (アメリカ)
<講談社 文庫本> 【Amazon】
とある軍に配属されたウィリアムズ一等兵は、超然とした態度で人と交わらず、ある事件に関わる過去を隠していた。その上司であるペンダートン大尉は同性愛者で臆病者であることを隠している。ペンダートン大尉の美貌の妻レオノーラは、自分がごく低い知能であることを隠していた。レオノーラの愛人マングドン少佐は、妻アリソンの悲しみを理解せず、アリソンは子供をなくした悲しみに精神も肉体も病んでいた。召使いのフィリピン男性アナクレトは、アリソンを崇拝し、盲従している。6人のあいだに複雑な愛憎関係が生まれるとき、新たな悲劇が待っていた。 | |
これは私たちが前に読んだマッカラーズの本とは違って、南部の乾いた風は吹いてこないのよね。 | |
そこはかとない行動の可笑しさや孤独感は相変わらず漂ってたけどね。 | |
うしろの解説に「孤独なエゴイストたち」って書いてあったけど、 ホントにそうね。みんな自分の孤独に縛られて、他人には全然心を配らないの。 | |
それにしてもさあ、130ページそこそこの短めの小説に、 よくまあ、ここまで複雑で、いびつな人間関係を盛り込んだよね。 | |
これでそれぞれの登場人物の心の奥まで描きだしちゃうんだから、凄いよね。 | |
でもさ、やっぱりこうなってくると感情移入がしづらいから、 私としては物足りない気がした。 | |
登場人物の設定自体さあ、感情移入するような対象がいない ように、わざと書いてあるような気がしたけど。 | |
誰か一人を突出させないで、全員を通して読めるよう にでしょ? それはわかるけど。 | |
みんな怖ろしく乾ききったエゴイストだよね。 | |
それにペンダートン大尉なんて、加えて姑息で、底意地が悪く ってさあ。気に入らないヤツにたいする復讐のしかたがせこすぎ! | |
嘘の噂をこっそり流したりとかするのよね。 | |
同じセコイ復讐でも、アナクレトのは笑えたけど。 | |
砂糖と言われて塩を持っていったりみたいな子供っぽさが おかしかったよね。 | |
マングドン少佐は超無神経。奥さんにたいしても、愛人に たいしても、いればいいやってぐらいにしか考えてないんだもん。 | |
同じ無神経でも、レオノーラのおバカっぷりはちょっと笑えたでしょ? | |
自分で判断するってことができないから、たとえば人んちを 訪ねたら一時間はそこにいなくちゃいけないとか、そういう自分で思いこんだ常識から外れないように 必死なのよね。 | |
必死っていうか、たとえ相手が帰って欲しいようなことを言 っても、それを理解する頭もないんだけどね。 | |
アリソンが一番冷静よね。中ではまだマシ、それでかえって 不幸なんだけど。 | |
でもさ、アナクレトと家を出たあと何をするかとか話してる とき、とてもじゃないけど実現しない夢みたいな事ばっかり言ってて、やっぱこの人も変だわと思ったよね。 | |
そっか〜、こうやって二人で話してみると、やっぱりおもしろい 小説だよね。みんないびつで。 | |
そうそう、短いんだから長編感覚じゃなくて、中短編感覚で 読めばいいのよ。 | |
ああ、それは言えてるかも。でもさ、やっぱり私たちの好みで はないかったよね。 | |
まあね。短編でも感情移入しやすいほうが好きだからね。これは ちょっと冷たい感触でした。 | |