=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「アバラット」 クライヴ・バーカー (イギリス→アメリカ) <ソニー・マガジンズ 文庫本> 【Amazon】
ミネソタ州にある鶏だけが唯一の産業の町チキンタウンで暮らす少女キャンディは、町の歴史を調べる宿題を出された。 他のクラスメートは鶏にまつわる月並みな町の歴史を調べてきたが、キャンディはみんなとは違うものにしたいと思い、 町の隠れた創設者ヘンリー・マーキットの悲劇について調べることにした。ヘンリーは 海を線で表わす絵を遺し、海のないこの町で「迎えの船」を待っていると言い残し、自殺したのだ。しかし、 せっかく調べたのにクラス担任のミス・シュウォーツから、こんな嘘は認められないと突っぱねられ、キャンディは学校を飛びだした。 走っていった先は町はずれの草原だった。そこには朽ちかけた塔のような不思議な建物が建っていた。なんと、それこそが25の島からなる 異世界アバラットへと続く、イザベラ海の燈台だったのだ。 | |
ホラー作家として有名なクライヴ・バーカーが書いた全4巻のファンタジーの第1巻「アバラット」です。ディズニーによる 映画化も決まっているのだとか。 | |
バーカー自らが描いたカラー挿し絵が多数入ってるの。これがホントに迫力があって上手で、 素晴らしい挿し絵。この絵だけでも見る価値あり、だった。 | |
ストーリーは簡単に説明すると、まあ、ありがちってかんじになるの。キャンディっていう少女が、アバラットという不思議世界に 迷い込み、冒険をするってお話。 | |
でも、ホンワカ楽しげなものを想像すると、大間違いなのよね。けっこう暗い色調で、ダークなイメージ。 | |
そうそう、主人公のキャンディからしてもう、暗さを引きずってるのよね。失業した父親が暴力を振るうし、 母親はそれを見ていてもあまりかばってくれないし、それでもうチキンタウンも家族も捨て、アバラットへ行ってしまおうって決心するの。 | |
アバラットの世界で知りあう人たちも、子供の頃に祖母に口を縫われたとか、 子供のころ父親から奴隷商人に売られたとか、そういう悲惨な過去を引きずってたりするのよね。 | |
見た目もけっこうグロテスクな人たちばかり。頭の上に木の枝みたいな角がはえてて、そこに 顔が七個ぶら下がってたりとか、口のあたりがガラス鉢の襟で囲まれてて、そこにウネウネ毛細血管みたいなのが走ってて光るとか。 | |
顔の中で目や口がグルグル走りまわってるなんてのも気色悪かった。 | |
普通、気色の悪い容貌は悪者だけなんだけど、アバラットでは味方になってくれるほうも 負けず劣らずのグロテスクさなのよね。 | |
で、アバラットそのものは、この本だけじゃあ、まだわからないことが多かったよね。 | |
わかってることは、25の島に分かれるってこと。島はそれぞれ、正午の島イジルとか、午後1時の島 ホバルーカスとかって時間をあらわしてて、最後のひとつ、25時の島だけは謎に包まれていて、どうやら最後に訪れなくてはならない宿命みたい。 | |
そもそもキャンディは、学校を飛びだして駆けて行った町はずれの草原で、ジョン・ミスチーフっていう不思議な人に出会い、 助けてあげなくてはいけなくなって、それがきっかけで、船に乗ってアバラットに行くことになるの。 | |
でも、アバラットに着くか着かないかでジョン・ミスチーフとは離ればなれ。そこからはいろんな人に出会い、 あちこちの島をさまようことに。 | |
ジョン・ミスチーフから大切な鍵を預かっていたキャンディは、真夜中の島を 治める真夜中の王クリストファー・キャリオンの手下に追われることになっちゃうのよね。 | |
真夜中の王と対立する不夜城の王、午後三時の島のロホ・ピクスラーも、 キャンディを狙うことになるの。 | |
つかまったり死にそうになったりしているあいだに、キャンディはアバラットに来たのが初めてじゃないかもしれないと思いはじめ、 自分の使命もちょっとつかみかけ、さてこれからどうなるんでしょう、ってことなんだけど、まだ第1巻だから、いろんなことの答えは出ないままよね。 | |
アバラットとチキンタウンも何か深いつながりが隠されてるみたいだし、先が気になる〜っ。 | |
それにしても翻訳文は、対象が小・中学生以上となっているのに、「滂沱の涙」とか「裂帛の気合い」とか、 やけに難しい言葉遣いを連発してあったよね。 | |
それよりも会話文がメチャメチャぎこちなくなかった? 特に最後のほうの「君は俺の偶像だよ」ってセリフには、 ガックリきてしまったんだけど(笑) | |
ふりがなもついてるし、挿し絵の楽しさで読み進んじゃうけど、文章だけとると、けっこうギクシャクとして読みづらかったよね。 | |
ストーリーはまだ途中だからハッキリとは言えないけど、かなりおもしろいことになってきてるし、 ダークな世界観も気に入ったし、文章さえもうちょっと読みやすかったら、かなり満足なんだけどな。 | |
そんなことより私は、残りの3巻がちゃんと翻訳されるのか心配。早めにお願いしま〜す。 | |