=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「家庭の医学」 レベッカ・ブラウン (アメリカ)
<朝日新聞社 文庫本> 【Amazon】
元気で、いつも溌剌としていた母が体調を崩した。母のもとに駆けつけた私が付き添い、病院に行ってみると、 癌であることがわかった。癌は転移し、助かる見込みはない。それが長い闘病生活のはじまりだった。 | |
私たちにとっては、2冊めのレベッカ・ブラウンです。 | |
前に読んだ「体の贈り物」はエイズ患者を世話するホームケア・ワーカーが語り手だったけど、 今度は自分の母親を看護するお話だった。 | |
語り手はどちらもレベッカ・ブラウン。あくまでも小説だと思うけど、 限りなくノンフィクションに近いのよね。 | |
「体の贈り物」を読んだときは、自分が死ぬときのことを考えさせられたけど、 今度は親が死ぬときについて考えさせられたな。 | |
自分が死ぬって想像すると、どこかに「うそ、まさか」って気持ちがあるけど、 親が死ぬって想像すると、すごくリアルだよね。 | |
うん、想像するだけで痛みが伴う。想像したくないけど、心構えしとかなきゃ いけないって辛さもあるし。 | |
せめて苦しまずに、と思うけど、癌だとそうもいかないよね。 | |
唐突に死なれると、遺された家族は心の準備ができてなくて、 長く戸惑ってしまうことになるし、だからって長く患う姿を見るのはつらいし、どっちにしても死は難しいな。 | |
この小説も、闘病記っていうより、死ぬ母と遺される家族が死を受け 入れる心の準備をしていく姿に焦点を合わせてたね。 | |
感情的にならないで淡々とした語り口なのが、かえって自分の身にも降り かかるかもしれないこととして実感させられた。 | |
癌の治療法についてもいろいろ書かれてて、読んでるこちらとしては考え させられたけど、語り口はあくまでも抑制がきいて、冷静だった。 | |
どの薬も副作用がすごいんだもん、どうせ助からないんだったら、ここまで しなくちゃいけないのかなと思ってしまった。 | |
それでも母親もそうだし、看病している娘もそうなんだけど、心配させたくないから 大丈夫なふりをしていたりして、ああ、現実にはこういう感じなんだろうなとあらためて考えさせられた。 | |
母親が長くないことがわかって、戻ってきた姉と二人きりになったとき、笑い声さえ あげて話をしているところがあったでしょ、あそこを読んだときに、なんだかすごく、そうだよな〜と思った。 | |
薬の副作用で髪がなくなった母親が通信販売で帽子を買うところも、 なにげなく書いてるけど胸に迫るものがあったな。 | |
亡くなったあとについては、うらやましい気もした。日本だと大金をかけて 葬式ってことになるんだけど、火葬して、散骨して、終りなんだもの。私が死んだときも、このぐらいあっさりとやってもらえるといいな。 | |
それにしても、言葉選びがうまいなと本当に感心しちゃうよね。亡くなるまで、 お母さんが言った言葉はたくさんあるだろうけど、そのなかでレベッカ・ブラウンが選んだ言葉はみんな、さりげないけどズキッとくる。 | |
死を扱った内容なのに、読み終わるとあたたかい気持ちになってた。 レベッカ・ブラウンのいうとおり、お母さんが向こうの世界で大好きな人たちと一緒にいるんだと信じられたし。 | |
私たちにも、「その時」がいつかは来るんだよね。 | |
そうだね。いい旅立ちができるように手伝えるような人にならなきゃいけないね。 | |