=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「鋼鉄都市」 アイザック・アシモフ (アメリカ)
<早川書房 文庫本> 【Amazon】
人が外気に触れることを嫌うようになった未来世界、地球上の人類80億人は、ロボットのために多くの者が 職を失い、また、深刻な食糧危機に陥っていた。そのうえ、地球にやってきた宇宙人たちに力によってねじ伏せられ、 ごく一部だが、宇宙人が地球に住むことまで余儀なくされていた。ニューヨーク・シティの刑事ベイリは旧友でもある 警視総監エンダービイに呼び出された。そこで依頼されたのは、宇宙人惨殺という前代未聞の事件の捜査だった。 | |
これは、アシモフが1954年に発表したSFミステリです。 | |
いまだに古典って感じじゃなくて、普通に読まれてるんだからすごいよね。 SFとミステリの融合した作品としては草分け的な存在らしいんだけど。 | |
小説の舞台が、数万か、数十万年後のずっとずっと未来だから、違和感なく読めるよね。 どうしても、2000年あたりが舞台で、すでに宇宙に植民地惑星とかあったりすると、あらまと思っちゃうから。 | |
あんまり明るい未来じゃないんだけどね。地球人類は一時期は広い宇宙に進出し、宇宙国家までつくってたらしいんだけど衰退しちゃって、 しかも地球は原水爆によって汚染されて、シェルターのようになってるシティから、人々は一歩も出られないありさま。 | |
シティは狭いから、人々は集合住宅に住み、共同浴場を使い、食物は配給制で、 かなり息苦しい生活をしいられちゃってるのよね。 | |
なんかひがみ根性かもしれないけど、日本をモデルにしてるの?とか思っちゃった。 共同浴場とか、常にまわりの人の目を意識して、目立たないように暮らしてるところとか、ウサギ小屋とか比喩されていた日本を彷彿とするような。 | |
うんうん、主人公のベイリは刑事としてはまあまあ上の立場で、本当ならばもっといい食糧を買う権利があるのに、 近所の人の目を気にして、奥さんがわざと最低な肉を買ってくるところとか、あまりにも日本っぽくて、ウッときたね(笑) | |
とにかく人間が外には一歩も出ないんだから、食糧不足に陥るのも無理ないの。 おまけに宇宙人に制圧されちゃったみたいで、ヘコヘコ、ビクビク状態。 | |
宇宙人に媚びへつらって、愛想笑いを浮かべてるところなんかも、なんか日本人を彷彿とさせないでもないわ(笑) | |
そのうえ、宇宙人に勧められて、ロボットの登用が進み、さまざまな職場から人間が追い出されて、 かわりにロボットが働きだしちゃってるのよね。 | |
当然、地球人達の多くは宇宙人やロボットに反発を感じて、革命を起こそうとしているような、していないような〜。 | |
なんか無気力ムードも漂っていて、反発の気運は高まってるけど、そのへんは微妙だよね。 | |
でも、懐古主義者の人たちの考えはわかる。昔に戻って、外に出て農業とか始めましょうっていうんでしょ。 私もそれがいいと思うんだけど。なんかもう外に出ても大丈夫そうだし。 | |
それはともかく、地球に来た宇宙人たちが住む宇宙市で、殺人事件が発生。刑事ベイリは、この前代未聞の 殺人事件を捜査することに。 | |
捜査にあたり、宇宙人側からパートナーを指定され、そのパートナーと行動をともにすることになるのよね。 | |
そうそう、それがなんと、宇宙人学者が開発した、最新のロボット、R・ダニール。RはロボットのRだよ。 | |
R・ダニールみたいなロボットは、多様なロボットが開発されつづけている今だと、たんにロボットって 言われるより、アンドロイドとかヒューマノイドとか言われたほうがピタッと来るけど、この小説の謎を解く鍵でもあり、大きなテーマともなってるのが ロボット工学の三大原則だから、ここはロボットと呼ばなきゃしょうがないのよね。 | |
ロボット嫌いで、そのうえ、ロボットなんて共同住宅に連れて帰ったことがわかったら大変なことになっちゃう ベイリの苦労はたえないね。 | |
でも、R・ダニールは優秀なパートナーだよ。記憶力も抜群だし、運動神経もいいし。当たり前だけど(笑) | |
ベイリがR・ダニールに聖書ってなにかと訊かれて説明に窮するところとかおもしろかったね。 | |
まあ、少し古い小説ではあるから、SF部分にあららと思うところはいくつもあるし、推理部分については ミステリを読み慣れてる人には、最初っから犯人の見当はついちゃうかもしれないけど、それでも読みやすくて、けっこうおもしろい小説だったよね。 | |
ロボット工学の三大原則がはっきりと理解できたり、この小説の前後の世界が気になったりと、 なかなか楽しめるSFミステリでした。 | |