すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「クリスマスツリー」 ジュリー・サラモン (アメリカ)  <新潮社 文庫本> 【Amazon】
ロックフェラー・センターの造園管理部の部長をしている私は、マンハッタンの名物ともなっている クリスマスツリーのために、一年中、クリスマスツリーのための樅の木を探している。大きく、枝振りが よく、傷みがなく、そしてなによりも、クリスマスツリーとしてふさわしい気品のある木。そんな木を探すため、 時にはヘリコプターで空から探すこともある。ある日、私はニュージャージー州の上空でヘリコプターから、 まさに理想どおりのドイツトウヒを見つけた。それは、ブラッシュ・クリークという修道院にある木だった。
にえ 1996年から「クリスマスの木」というタイトルで翻訳出版され、 2000年からは「クリスマスツリー」と改題されて文庫となってる本です。クリスマスが近づくと書店に並ぶ本だから、 読んでる方も多いんじゃないかしら。
すみ どうせ泣かせよう、泣かせようって話だろうと高をくくってたら、 ぜんぜんそんなことなかったよね。
にえ でもウルウルしてたじゃない(笑)
すみ そうなの、そうなの。わりと淡々とした話でね、最後も笑顔で終わるんだけど、 不覚にも、ホロッときてしまった〜。
にえ 話じたいはベタなんだよね。情が薄いと言われがちだけど、腕がいいから ロックフェラー・センターの造園管理部の部長になった男性と、一人のシスターのお話。
すみ シスター・アンソニーはニューヨークで生まれ育ったんだけど、孤児になって 孤児院に、それからブラッシュ・クリークという修道院に引き取られた人なの。
にえ シスター・アンソニーは造園管理部長の男性が目をつけたドイツトウヒの木を とても大切にしている、というか、ともに育った幼なじみみたいなものなのよね。
すみ だから造園管理部長がドイツトウヒをロックフェラー・センターのクリスマスツリーに って頼んでも断るんだけど、そこから友情が芽生えるの。
にえ シスター・アンソニーのほうがずっと年上なんだけどね。
すみ シスター・アンソニーはお話がとても上手なの。やさしかったお父さんの話とか、 つらかった孤児院の話とか、さりげなく話すんだけど、聞いてる人はみんな夢中になっちゃう。
にえ ドイツトウヒのことは”トゥリー”って呼んでるのよね。
すみ シスター・アンソニーは楽しかったことも、悲しかったことも、ぜんぶ トゥリーに話してきたの。
にえ 二人の友情は、たまにしか会えないながら何年も続いて、そして…ってお話。
すみ 最後は、わあ、そうつながるのか〜ってなって、わかったとたんにグッとくるのよ〜。
にえ でもさあ、感激しているところに水を差すようで悪いんだけど、私はまたまた キリスト教的な考え方に違和感をかんじないでもなかったなあ。
すみ ええっ。あなたも感動してると思ったのに。最後はウルッとしちゃったでしょ?
にえ う〜ん、まあ、それは置いといてね、たかが数日のお祭り騒ぎのために、生きてる木を 切り倒しちゃうわけでしょ。それを美しいお話と言われても、人間のエゴとしか思えないんだよね。
すみ いや、でも、クリスマスツリーにおもに使われるドイツトウヒはもともと樹命の短い木なんだよ。
にえ それもなんか言い訳のような気がするけど。もしも寿命が短いからって早めに殺されたら、 あなただっていやでしょ? それに、気になったことをもうひとつ言えば、色つきの挿し絵がついてるんだけど、これもあんまり必要ないような…。
すみ え〜、主張しすぎないけど柔らかみのある絵で、邪魔せずに本文をもりあげてたじゃない。
にえ でも、シスター・アンソニーって話をするだけで、聞いてる人の想像を膨らませられる人でしょ、そういう 人の語りに挿し絵がついてるのってどうかな。
すみ そういうのは気にしないで、お話の世界にふわっと入りこんでしまえばいいと思うんだけど。とにかくクリスマスに ピッタリのいいお話でしたっ。