=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「第三の嘘」 アゴタ・クリストフ
<早川書房 epi文庫> 【Amazon】
国境を越え、リュカはクラウスに会いに来た。本物のリュカと本物のクラウスが、もうじき出会う ことになる。リュカはびっこをひいている。子供の頃、ある事件をきっかけに、不具になってしまった のだ。そして、リュカはノートブックを持っている。懐かしい街、探し当てた家。老年になったクラウスは どんな人生を歩んだのか。そして、リュカ自身は・・・。 | |
アゴタ三部作の最後、『第三の嘘』です。これはどうでしたか? | |
これは微妙だよね、いいとも悪いとも言いづら〜い。 | |
ひとことで言えば、「暗い!」だよね。話としては おもしろくもあったけど、読み終わったあと、ドスンと気持ちが暗くなるね。 | |
まあ、早い話が、『悪童日記』で前向きだった双子が、 今度は完全に後ろ向きな性格になっちゃってるのよね。 | |
その辺は過程がきっちり書かれてるから、なんでそんな 性格なのかっていうのは納得できて、ジレンマは感じないよね。なんでコイツはこうなんだよ! みたいな。 | |
うん、ただひたすら、読んでるこっちも憂鬱になっちゃうだけ。 | |
アゴタさんはこれを自伝的な作品だって言ってるんだよねえ。 どの辺が自伝っぽいのか私にはわからなかったけど、全体に漂う雰囲気は、自伝的な、私小説ふうな感触 のする物語、文章よね。 | |
ようは『悪童日記』が誰によって書かれたか、で、モデルに なった本当の双子はどんな人生をたどったかっていう話になってるのよね。 | |
つまり、『悪童日記』は作り話で、それを書いたって設定の この『第三の嘘』もアゴタさんの作り話だから、二重のフィクションになってるってことよね。 | |
まあ、つなげてひとつの話にすれば、『悪童日記』は 『第三の嘘』の作中作って位置づけになるわけよね。その辺はおもしろいといえば、おもしろい。 | |
『悪童日記』『ふたりの証拠』の登場人物のモデルらしき人 たちも、たくさん出てくるしね。 | |
おお、あの人のモデルは本当はこういう人ってことになるのか〜 みたいな、その辺のゾクゾク感はあったよね。 | |
でもさ、おばあちゃんの夫毒殺事件については触れられてな かったよね。私はてっきり、あの辺の謎解きも含まれてるのかと思ってた。 | |
ああ、実際のおばあさんが夫を殺すシーンをきっちり描写して あるとか? それはちょっと求めすぎでしょう。 | |
あとさあ、この本、読みはじめはいろんな話が、細切れで 錯綜するから、ちょっと戸惑ったよね。読んでるとわかってくるから、あとで読み返したほうがいいかも。 | |
うん、そうだね。と、残された問題は、『悪童日記』1冊で やめておいたほうがいいか、3冊全部読んだほうがいいかって問題でしょう。 | |
そうそう、私さっき、気になって検索して、この三連作紹介 しているサイトを見てまわったんだけど、『悪童日記』1冊でやめといたほうがいいって意見のほうが 多かったよ。 | |
あ、やっぱり(笑)。どっちにしてもさあ、『悪童日記』 と『ふたりの証拠』の2冊でやめるっていうのは考えられないよね。 | |
それだと気持ち的に不完全燃焼になっちゃうでしょう。 | |
『悪童日記』1冊でやめるか、読むなら一気に3冊、あいだを あけないほうがいい、これだけはたしか。『第三の嘘』は前2作の謎解き要素が多いから、思い出せないまま 読んじゃうと、魅力半減。 | |
それにしても、1作ずつのテイストが本当に違ってたね。 この連作を読んでない人が私たちの会話を続けて見ると、なんだこりゃ、大丈夫か、こいつらと思うかも しれない(笑) | |
でもま、そういった意味では、とても楽しませてもらいました。 読むたびにナンジャ、コリャみたいな驚きがあったよね。 | |
そういえば、とうとう主人公が私たちと同じ一卵性双子なのに、 そのことに一回も触れなかったねえ。 | |
ええっ、この連作を読んで、双子の生態について語るの? そ うそう、双子ってそういうものよね〜、私たちもそうなの〜みたいな話をするって? また今度ね(笑) | |