すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「愛の続き」  イアン・マキューアン (イギリス)   <新潮社 クレストブックス→文庫本> 【Amazon】
無神論者の科学ジャーナリストである中年ジョーは、若く美しいクラリッサと愛し合い、平和に 暮らしている。ところがそこに、一人の男が現れた。神を信じる孤独な青年パリー。パリーはジョーが 自分を愛しているはずだと言う。執拗につきまとい、愛を求めるパリー。それなのに、クラリッサは パリーの存在を信じず、ジョーの狂気が生んだ存在なのではと疑っている。奇妙な愛の三角関係の行方は。
すみ 思わせぶりで、それでいてシンプルな、素敵な表紙に惹かれただけで読んだこの本ですが、これはもろ、にえちゃん好みの本でした。
にえ もう最高〜! ダイダイダイ好き〜!! 惚れこみました!!!
すみ やっぱりな(笑)
にえ ジョーとパリーはある事件をきっかけに知り合うんだけど、もうその事件がちょっと現実離れしてて、少しのおかしみとあっけないほどの哀しみがあって、そこからもう、これは行ける!と思ったら、やっぱり夢中になって最後まで読んじゃいました♪
すみ ちょっと今までにない雰囲気のある本だったよね。
にえ そうそう。圧倒的なパリーの狂気、だれも理解されず追い込まれていくジョーの精神、読んでいくうちに本当は誰が狂っているのかわからなくなる怖さ、 そういう面白味がたっぷりと盛り込まれてるけど、それだけだったら、今までにないストーリーだとは言えないでしょ? この本の魅力はもっと他にあった気がする。
すみ たしかに、<パリーの脅迫的な愛と狂信的な神>vs<ジョーの徹底した科学的解明と調査・分析・検証>って構図は斬新かも(笑)
にえ なんか、追いつめられる恐怖に息がつまらない、そこはかとないおかしさが漂ってたよね。
すみ 息がつまらないといえば、息抜き部分も多かった気がする。
にえ ウンチクがたっぷりだったよね。ジョーは科学のいろんなウンチクを散りばめてくるし、クラリッサはキースの研究者だから、イギリス古典文学界のウンチクを いろいろ出してくるし。もちろん、パリーに向けての心理学のウンチクもいっぱい出てきた。
すみ ウンチクはどうなることかと思ったけど、これ以上長々続けられたら辛いなってちょっと手前あたりで押さえてくれてて、読みやすさが損なわれてなかったよね。ほっとした。
にえ うん。それにジョーやクラリッサの子供に接するときとか、ちょこっと出てくるその子供の母親とか、みんな、どんなに絶望的な情況でも子供に対する優しさを 示し続けてくれたから、その辺でもほっとできた。子供との会話もやりすぎてない楽しさがあったし。
すみ みんな、どこか冷静で、すごい情況に陥っても、無駄に騒ぎ立てないから、こっちも安心して読めたね。狂気がメインのテーマなのに、静かな読み応え。
にえ 知性と理性のある人たちだから、感情的に騒ぎたてず、どこか淡々としてるのよね。淡々とした中に、根っこの深い孤独感があった。だから共感できた。
すみ 淡々としてて何も起きそうにないなあと思うと、いきなり突飛な出来事が起きてビックリさせられて、この本独特のリズムがあったよね。
にえ そうなんだよ。そういうリズムの作り方が上手い! こういう話だと、おもしろいと思いながらも、途中で退屈してしまったりするんだけど、この本は退屈させなかった。
すみ 視線が変ったり、会話、出来事、加えて手紙、思いがけないユーモア、で、あいだに違う謎も、と飽きさせない工夫に満ちてて、でもまとまってて、あ、やっぱりこの本すごいね(笑)
にえ うん。つねに一歩ひいた感じで、押しつけてこないから 意識せず読めたよね。そのなかに、独特の孤独感、独特のリズム、独特の哀しみ、独特の雰囲気、この本だけのオリジナリティーに溢れてた。
すみ そうだね、不思議な世界が出来上がってたね。出来事も登場人物も、なにもかも新鮮で、先が読めなかった。
にえ この本の次に書いた「アムステルダム」はブッカー賞とってるんだよね、すぐ読みたい。もう気に入りまくり〜(笑)
すみ でもさ、こういうウンチクと分析が積み上げられた本って、誰でも好きとはいかないんじゃない?
にえ うん、それが問題だっ!(笑) おもしろかったから読んでねとは言えない。「あ、それ読んだよ」って言われて初めて、「あ、私も、私も、よかったよね〜」って言える、そういう本だな〜。
すみ それでは、オススメは?
にえ 読みたい人だけ読みましょう。無理に勧めません(笑)