すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
「ダークホルムの闇の君」 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ (イギリス) <東京創元社 文庫本> 【Amazon】
魔法世界ダークホルムは、今や町も畑も荒れ果てて、住むものたちの心もすさみ、諸国は財政危機に瀕していた。 すべては40年前から始まった観光協会の巡礼観光団のためだった。人間世界に住む資本家チェズニー氏によって企画された、 この危険に満ちたアトラクションたっぷりの巡礼旅行で潤うのはチェズニー氏だけ。ダークホルムの住人たちから山のように苦情の手紙が送りつけられてくる 魔術師大学総長のケリーダは、この巡礼旅行の企画をやめさせるためには、誰を闇の王にすればいいか お告げを求めた。お告げにより、闇の王にはダーク、巡礼団最終組の先導魔術師には14歳のダークの息子ブレイドが選ばれた。
にえ 私たちにとって、スンゴイ久しぶりのDWJです。
すみ これは二部作の第1作になるんだとか。完全一話完結だけどね。たぶん、 第2作を読むとき、第1作とかなり間があいちゃってても問題ないんじゃないかな。
にえ たぶん、舞台が同じなんだろうね。人間世界とはパラレルワールドのような 存在の魔法世界ダークホルム。魔術師がいて、グリフィンがいて、エルフがいて、ドラゴンがいて、ドワーフがいてって世界。
すみ 主役級になるのが、ダークの家族ってのも同じじゃないかな。魔術師ダークと魔女マーラの 夫婦に、詩人の娘ショーナに、魔術師の息子ブレイド、それにダークが作り出した言葉をしゃべれるグリフィンたちや羽のはえたブタや馬なんかが いる家族。
にえ 特にグリフィンは、ほとんど家族同然で、ショーナやブレイドとは兄弟のように育ってるんだよね。 なんかそれぞれにコンプレックスとかあったりしてかわいかった。
すみ ダークは枠にはまらない魔術師で、在学中には召喚魔法でとんでもない魔物を呼びだして魔法大学を 中退しちゃってる、かなり変わり者で天才肌って人。
にえ 「ダークホルムの闇の君」では、魔法世界ダークホルムは人間のために苦しめられちゃってるのよね。
すみ 自分がロールプレイングゲームの主人公として旅ができるよってかんじの巡礼ツアーが人間世界からわんさと押し掛けてきて、 荒らされまくってるの。
にえ ダークホルムの住人たちは、ツアー客のために謎解きアイテムを隠しておいたり、 魔族となって戦ったりと大忙しなのよね。
すみ 戦闘はお遊びじゃなくて、本当に死人が出るような戦いっていうんだから怖いよね。 しかも、ツアー客のなかには、あらかじめ家族から殺すように指示されてる人も混じってたりして、怖い、怖い。
にえ このツアーのために生き物はたくさん死ぬし、町や村は荒らされ、畑の作物はダメにされ、魔族の兵隊役として、人間界の囚人たちが 千人も連れてこられたりするんだから、もう最悪。
すみ で、この年、ツアー客たちが最後に倒す闇の王役に指名されたのがダークなのよね。
にえ ダークは最後に倒されるだけじゃなく、自宅を不気味な魔王の城に変えたり、コースを決めたり、仕掛けを作ったりと大変。
すみ おまけに魔王の城を守る魔物を召喚しようとしたら、とんでもないものを呼び出しちゃったりするしね。
にえ 最終的には、ツアーの仕掛け人であるチェズニー氏に、毎年行なわれるこのツアーをやめさせることが目的なんだけど、 とはいえ、ツアーにはさまざまな決まりと、決まりを破ったときの罰則があって、それに違反しないようにツアーは完璧にこなされなけりゃいけない。
すみ ダークの家族みんなで協力して、なんとかやり遂げようとするんだけど、 疲れるどころか、死と隣り合わせの恐怖まであって、大変すぎ。しかもマーサの様子はおかしいし。
にえ とくに残り3分の1になってツアーが始まってからの、急展開はおもしろかった。
すみ じつは裏にいろいろ秘密があったりして、それが次々に暴かれていくのよね。おもしろかった。
にえ ただ、その前の3分の2の準備期間の話は、ちょっと長いな〜と思っちゃったんだけど。 特殊世界の話で、特殊な設定で、特殊な登場キャラもたくさん登場するってことで、とにかく地の文にしても、 会話にしても説明が中心になって、なんかぎこちなくてスラスラ読めないの。
すみ う〜ん、まあね。グリフィンとか、なめらかに言葉を話せないキャラがたくさん出てくるから、よけいにそう感じちゃったのかもよ。
にえ 心理描写も含めてすべて説明的で、作品世界にすんなり入りづらかったな。 もうちょっとうまく処理して、柔らか〜く、滑らか〜に入っていけるようにしてくれると嬉しかったんだけど。DWJって、そういうのがうまい作家さんだと思ってたし。
すみ でも、残りの3分の1がおもしろいから、読み終わったときには満足感だけになってたでしょ。第2作が今から楽しみです。