=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「少年」 ロアルド・ダール (イギリス)
<早川書房 文庫本> 【Amazon】
ロアルド・ダールの父ハラルド・ダールは、ノルウェーからイギリスの漁港ラ・ロシェルに移り住んだ。そこで事業に 成功し、財産を築き、フランス人女性と結婚した。しかし妻は二人めの子供を産むとすぐに亡くなり、その後、ソフィという ノルウェー人女性と結婚した。ソフィは4人の子供を産んで、二人は合計6人の子持ちとなった。下から2 番めの子供がロアルド・ダールだった。家族は豪邸に移り住んだが、ロアルドが3歳の時、姉オリヴィアが 風疹で亡くなり、あとを追うように父ハラルドも肺炎で亡くなった。ソフィは、自分の子供たちにはイギリスの教育を受け させたいというハラルドの言葉を護り、親戚一人いないイギリスで、残った5人の子供たちを育てることを 育てることを決意した。 | |
ロアルド・ダールの6歳から20歳までの自伝的な小説です。 | |
文章だけじゃなくて、写真や当時出した手紙、イラストなどがたっぷり 挿入された本なのよね。 | |
裏表紙の見開きに作者の近影が載ってて、このかわいらしい男の子が、 こういう大人になっちゃうのか〜なんて楽しみ方もできた(笑) | |
ロアルド・ダールといえば、児童文学の「チョコレート工場の秘密」が なんといっても有名でしょ。 | |
「チョコレート工場の秘密」を書くことになった原体験的エピソードも載ってて、 子供の頃に「チョコレート工場の秘密」を読んだ人たちなら、うれしくなっちゃうだろうね。私たちは残念ながら、読んでないんだけど。 | |
児童文学の話が出るたびに、こういう告白をしなくちゃいけないから 恥ずかしくてしかたないんだけど、子供の頃の私たちはちょっとヒネた子供で、「チョコレート工場の秘密」 なんて題名を見ると、まあ、いかにも大人が子供に媚びてつけたような題名ね、こんな本は意地でも読ま ない!って思っちゃったのよね〜。 | |
なんか大人に騙されない、大人の口車には乗らないぞってえらく気合いが入ってたよね。 なにを依怙地になってたのか、今考えるとわからないけど(笑) | |
さてさて、私たちにとっては初めてお目にかかるロアルド・ダールなのだけど、 楽しいエピソードたっぷりだったよね。話は少年時代だから、家庭、学校、それにお母さんとした文通が中心。 | |
学校は家から通った幼稚園、ランダフ大聖堂学校、寄宿生となったセント・ピーターズ校、 レプトン校と、移っていくの。 | |
幼稚園はほとんど記憶がないから、すぐ終わっちゃうんだけどね。 | |
そのあとのランダフ大聖堂学校の話はおもしろかったよ。7歳から9歳まで 通ってたそうなんだけど、その登下校に立ち寄ってた駄菓子屋の話が、なんといってもおもしろかったな。 | |
お菓子の話って楽しいよね。私たちの食べてたお菓子とは全然違うんだけど、 なんか懐かしくって。 | |
それよりおもしろいのは、駄菓子屋の意地悪ばばあ。不潔で、怒りっぽくって、 こういう人っているよな〜ってニヤけたよ。 | |
不思議とこういう、子供相手に商売してるのに、子供を憎んでるとしか思えない人っているよね。 | |
ロアルド・ダールはこの駄菓子屋のばばあに、おもしろい復讐を思いつくのだけど、最後には 鞭の罰が待ってるのよね。イギリスの小説で昔の学校の話を読むと、かならず校長室での鞭の体罰が出てくるね。 | |
それにしてもこの本は、鞭の罰が多かった。その後の寄宿学校では、 教師はもちろん、寮監も、同じ学生の先輩までも、子供の尻に鞭を振るうんだから。 | |
低年齢で家族から切り離された寄宿生活、教師には規則で縛りつけられ、 先輩たちからは雑用係の小僧としてこきつかわれ、けっこうきつい学生生活だよね。当時のイギリスではこれが普通なのかな。 | |
日本よりずっと人口が少ないのに、優秀な人がたくさん出てるわけだから、 悪いとは言いきれないけど、私はイギリスに住んでなくてよかったと思うよ。 | |
でも、体罰やら医者の無茶な手術話とかもたくさんあったけど、 楽しい思い出もたっぷりあったし、お母さんの存在が素敵だったし、心地よく読めたね。 | |
あと、家族の話で、毎年夏になるとノルウェーに行ってたって話、あれは羨ましかったな。 島が点在してて、家族でボートに乗り、今日はあっちの島で海水浴をしようとか、こっちで釣りをしようとか、そんな風に過ごし てたそうなんだけど。 | |
厚い本ではないし、ちょっと息抜きに軽く読めるって感じだった。 違う国で育った他人の少年時代を疑似体験させてもらったような楽しさかな。 | |
とくにロアルド・ダールの児童文学を読んで育った方々には、たまらないんじゃない? 20歳以降の話は、「単独飛行」って本にまとめられてるのだそうです。 | |