=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「眠りと死は兄弟」 ピータ−・ディキンスン (イギリス)
<早川書房 ポケミス> 絶版データなし
ピブルは妻メアリーに頼まれ、キャシプニー(眠り病)の子どもたちの施設に向かった。そこは、荘重なゴシック形式の館で、ジョーンズ夫人(ポージー)のもと、リュー・ケリー、ラムゼス・シルバーの二人の医師の研究員によって運営されていた。メアリーからは資金繰りが厳しいと聞いていたのに、施設は改装が進み、資金繰りの豊かさを物語っている。そこにどんな秘密が隠されているのだろう。 | |
またまたピブル警視シリーズです。 | |
これはシリーズ三作目、先に読んじゃった『盃のなかのトカゲ』の前の話なのよね。 | |
別に支障はなかったけど、『盃のなかのトカゲ』でピブル元警視をギリシアの小島に誘った富豪タナトス氏と知り合うきっかけが出てきて、ああ、なるほど、ここで知り合ったのかってわかったね。 | |
元警視と言えば、この話でももうピブルは退職してるのよね、ということは、シリーズの2作目で、もう退職しちゃったってことね。早い(笑) | |
それにしても、今まで読んだピブルのシリーズの3冊の中では、私はこれが一番好き。 | |
あ、『ガラスの箱の蟻』と『盃のなかのトカゲ』ってさあ、ストーリーそっちのけで、ディキンスンが作り上げた世界を楽しんじゃってるようなところがあったけど、これはその辺おさえめで、きっちりストーリー追っていけたよね。 | |
そう、謎解きも犯人も納得だったしね。理由づけもちゃんとしてた。 | |
内容としても、おもしろかったよね。 | |
まずキャシプニー(眠り病)。これは実在する病気のナルコレプシー(眠り病)をもとにしてるのか、偶然似たのか。 | |
ナルコレプシーはティーンエージャーがなる病気だけど、ディキンスンの創作したキャプシニーは生まれつきなのよね。 | |
一日20時間も眠ちゃうってところは一緒だけどね。 | |
ちなみにナルコレプシーは寄生虫が原因とも、精神病とも、その他もろもろ言われてるけど、ディキンスンのキャプシニーは遺伝子伝達やホルモンの欠如が原因ってことになってるのよね。 | |
で、キャプシニーの子供はみんなふっくら太ってて、集団で行動したがって、知能の発達が遅れてて、子供のうちに死んでしまって、で、テレパシー能力があるかもしれないと思われている。 | |
もう一つ加えると、妙に人の気持ちを惹きつけるなにかを持ってるみたいなのよね。 | |
そうそう、その子どもたちとピブルが、なぜか精神が通じ合っちゃって、軽いテレパシー交信みたいなのがあって、その辺がまずおもしろい。 | |
あと、偽医者でしょ。これまたモデルになってるっぽい実在の人物がいるよね。 | |
そうそう、実在の人物で、医者になったり、刑務所の所長になったり、様々な職業になりすます詐欺師なんだけど、根が真面目なのか、なにをやっても本物より結果を出しちゃうって人いたよね。あの人にとてもよく似た人が出てくる。 | |
そういう悪人のようで悪人じゃないような人と、なんでも許して人として愛しちゃうようなところのあるピブルとの関係はおもしろいよね。 | |
あいかわらず翻訳家はひどいんだけど、これはそういう不思議な話がとてもわかりやすく書かれてて、ストーリーも謎解きもおもしろかった。 | |
あ、そうそう、私もひとつ、わかったことがあるよ。ピブルの奥さんのメアリーは、これから先も多分、ピブルの話のなかに出てくるだけで、実際の登場はないね。 | |
そういえば、ピブルが奥さんのことを語るときも、愛してるって言うときも妙に分析的で、さめざめしてるよね。 | |
そうそう、ピブルはタナトス氏に、君は性的魅力がないって言われるんだけど、ほんと、ほんとって思っちゃった(笑) | |
ピブルはあいかわらず、自分のことをグチっぽくて未練たらしいダメ人間だと本気で思ってるみたいなんだけど、どう読んでもこの人、拷問にかけられても自分が言いたくなければ絶対口を開かないような冷徹な人間だよね。 | |
やっぱりピブルが一番おもしろい。変な人(笑) | |