=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「石と笛」 第2部 ハンス・ベンマン (ドイツ)
<河出書房新社 文庫本> 【Amazon】
聞き耳が和らぎの笛匠のもとに戻ってみると、祖母はいなかった。和らぎの笛匠は、すぐにも祖母のもとへ 旅立ちたかったのだが、聞き耳にに遺すものがあるので、ここで待っていたという。もちろんそれは、 和らぎの笛匠の持つ、不思議な銀の笛のことだった。和らぎの笛匠のもとで修行を積み、銀の笛をゆだねられた 聞き耳は、今度は自分探しのための旅に出ることにした。 | |
さあ、いよいよストーリーは本筋へと踏み出していきます。 | |
とはいえ最初のうち、話はまだ穏やかなものよ。ただ、この第2部で 聞き耳がやったことのすべてが、あとからとんでもないことに発展していくんだけど。 | |
第2部のポイントは夢だよね。聞き耳はわけあって、いろんな予知夢を 見るんだけど、目がさめると覚えてないの。 | |
その予知夢が、私たちに先のストーリー展開の啓示をあたえてくれて、 なにもかもうまくことが運んでても、悪い予感にドキドキさせられたりしちゃうんだよね。 | |
とにかく第2部は、最後の最後のほうに来るまでは、順調にことが運ぶ展開と、 その裏にひそんでいる悪い予感、これが主軸。 | |
さてさて、和らぎの笛匠は聞き耳に不安を感じてはいますが、時間もないので聞き耳に銀の笛を与え、 聞き耳は旅に出ることになります。 | |
聞き耳は相変わらず、すぐに調子に乗ったり、ガツガツ先を急いだり しがちで、和らぎの笛匠をはじめとする智者たちには、不安を感じさせるのよね。 | |
かわいそうだよね〜。石を持つ資格がないとか、笛を持つ資格がないとか、 しょっちゅう批判されてたけど、聞き耳は私たちと同じごくごく普通の人で、選ばれし者の自覚がないのも しょうがないと思うんだけど。 | |
まあ、しょうがない。二十歳は過ぎたとはいえ、まだまだ聞き耳は成長が 足りないからね。久しぶりにあった父親を批判的な目で見たり、まだまだ青さを感じるわ(笑) | |
聞き耳は旅をする過程で、アルニ族に出会います。アルニ族は、もともとは略奪を 糧とする掠騎族の人たちなんだけど、かしらである汗とたもとを分かち、独立した人たちの集団なのよね。 | |
アルニが亡くなったことで、アルニの言っていたことのほうが正しいんじゃないかな〜と 思いはじめた一部の掠騎族の人たちが、ホエニって人を中心に独立したの。掠騎族は弁髪なんだけど、アルニ族は弁髪を切って、 その意思を表明しています。 | |
略奪のかわりに商人として生きることにしたアルニ族の人たちはとても礼儀正しくて、 聞き耳は好感を持つのよね。 | |
自分がアルニの石の継承者として尊敬の目で見られ、あがめたてまつられたから、 すっかり気をよくしたって言ったほうが正しいんじゃな〜い。 | |
まあ、そんなわけで、聞き耳はアルニ族の集落に行ってみるんだけど、 そこにいたのはホエニの娘、ナルチア。 | |
ナルチアは緑色の目をした美しい女性で、聞き耳はすっかり魅了されちゃうのよね。 鷹乙女なんて呼び名までつけちゃって。 | |
聞き耳はてっきり、アルニ族のなかでは、アルニの石の後継者として 神様のように扱われるものだと期待していたのに、なんだかそうでもなくて、3つの難題を押しつけられることに。 | |
でも大丈夫、聞き耳には銀の笛があるから。じつは銀の笛の音には、人の心を 思いのままに操ることができる力があるのです。 | |
聞き耳は旅に出てはアルニ族のもとに戻り、旅に出てはアルニ族のもとに戻りって ことになるんだけど、そのあいだにいろんな種族に出会い、アルニの石の過去が少しずつわかり、となってくるのよね。 | |
焦茶川のそばに暮らし、川の主である緑様を崇拝して静かに暮らす 鯉首族とか、金細工を生業とする山穴熊族とか、足の細い美しい馬を飼い、鷹を使って狩りをする鷹族とか、 それぞれの特徴が出てて、おもしろかったよね。 | |
鷹族はかっこよかったよね。鷹と馬とともに気高く生きていて、宮殿で序列正しく 暮らしてるんだけど、自分の能力を極めたものが、上へ、上へと上がっていける仕組みになっているみたいで、一番上の位の 大司祭なんて、聞き耳の笛が通用しないぐらいの賢者なの。 | |
それに石の持つ悲しい過去や、和らぎの笛匠の過去が少しずつわかってきて、 興味は増すばかりだったよね。 | |
そして第2部の最後にはとんでもないことになって、いよいよ怒濤の第3部へ。 第3部は、ストーリーが急展開しまくるだけじゃなく、思いがけず大人な恋愛話あり、今までの聞き耳の旅につぐ旅が、 哲学的なところにまで昇華されていくという、いよいよ真価発揮!って感じの内容です。お楽しみに〜。 | |