=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「食糧棚」 ジム・クレイス (イギリス)
<白水社 単行本> 【Amazon】
食にまつわる64の超短編集。 | |
私たちにとっては、『死んでいる』に続く2冊めのジム・クレイスです。 | |
これってさあ、宣伝文句に<癒し系>とか入ってて、笑ってしまったよ。 | |
<癒し系>というより、<ダイエット系>だよね。私だったら、「食事中に読めば 食欲減退すること間違いなしの暗黒グルメ短編集」とかって宣伝文句にするけどな。 | |
64の話のなかに、少しはホッとするのも混じってたけどね。天使がキスすると パンが膨らむって言うおばあちゃんの話とか、スープが美味しくなる石の話とか。 | |
でも、全体としては、ウゲゲってのが多かったし、印象にも残るよね。 | |
うん、ウゲゲでおもしろかった。『死んでいる』よりかなり気楽に読めたし。 | |
話が64なのは、飢えた民衆のために、一人の農民がチェスで王様から 食糧をとりあげた民話からきてるんだそうで、64ってのはつまりチェスの升目のことなんだそうな。 | |
64も話があるとなると、当然なかには、これは私的にはピリッとしない、なんてのも 混じるわけだけど、平均3.3ページの短いお話が次々と出てくるから、たまに気に入ったのがあるだけでも、 じゅうぶん楽しめるよね。 | |
私が一番印象に残ってるのは、ナスのアレルギーがあるのに、ナスが 好きで寿命を縮めちゃってる女性の話なんだけど、こういうわかる、わかるってのもたまにあって良かったな。 | |
私は「気」を出すと称して、からの皿にからのグラスを客に出し、繁盛する レストランの話かな。そういうのがおしゃれだって一時期流行るってなんかわかる。 | |
ウンコで育てた野菜とか、そういう話も多かったよね(笑) | |
うん、あんまり好きじゃない人のウンコで育てた野菜は食べたくない話とか、 お腹がグルグルきちゃってとか、食べ物からシモにつながる話も多かった。 | |
シモと言えば、おもしろいと思ったのは、マテ貝とりの話。マテ貝を獲るときに塩をかけ るってのは日本だけかと思ったら、イギリスでもそうなのね。っていうか、イギリスにもマテ貝がいるのね。 | |
ああ、あれね。マテ貝を地元では「海チンコ」と呼ぶってのに笑ったんでしょ。 | |
塩でマテ貝を獲ることは「チンポコいびり」って言うんだよね(笑) | |
腐ったものとかを食べてお腹を壊す話もいくつかあったよね。 | |
腐りかけて口の開かない貝を、気に入らないお客に出すレストランの話とかあった。 あれは実際やったら死ぬかも。 | |
人間の腹から取り出したポリープが実は植物で、それを育てて食べちゃう医者の話なんて、 気色悪かったよ。 | |
庭にはえてた酸っぱいリンゴの木の思い出とか、ちょっとノスタルジックな話も いくつかあったよね。 | |
せっかく素敵な男性と知り合ったのに、ねんごろになった掃除夫にワインやパイを買って 甘やかさずにはいられない女管理人、なんてちょっと切ない人生を匂わせるようなお話もいくつかあった。 | |
まあ、こんな感じで、素敵なお話もあるけど、ウゲってのもけっこう混じってるんで、 それがおもしろそうと思う人限定でオススメかな。 | |
おもしろかったよね。でも、ふだんだとこういう小話集のような本を読むと、 そういえばって友だちに話したりすることがあるんだけど、この本の内容だと、話さないほうが無難かも(笑) | |