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「毒の神託」 ピータ−・ディキンスン (イギリス)
<原書房 単行本> 【Amazon】
アラブの砂漠に、逆ピラミッド型のコマのような宮殿が建っていた。その宮殿の王はスルタン。スルタンの大学時代の級友モリスは、その宮殿の上部階層にある「動物園」で、高給をもらい、働いていた。モリスの仕事は動物の飼育と、チンパンジーのダイナに言葉を教えること。スルタンの専制君主ぶりにうんざりさせられながらも、動物園で働くモリスだが、テロリストにハイジャックされた飛行機が落ちてきて、美人テロリストが現れ、特殊な言語体系と習俗のなかに生きる少数民族である沼族と沼地をめぐる諍いに巻き込まれ、挙げ句の果てには殺人事件に巻き込まれることに。一人の人間と一匹の猿に、謎は解けるのか。 | |
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独自の文化を持つ少数民族とチンパンジー、欧米とは文化の違う外国、いかにもディキンスンらしい設定だね。 |
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でも、いつもながらの謎解き後回し、沼族研究発表的な話の持って行き方だけど、最後は決まって、いつになくきっちり推理小説してたね。 |
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うん、読んだあと、妙にすっきりした(笑) |
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ラストもなんか明るいっていうか、笑えるというか、その辺もちょっと違ってたね。 |
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そうそう。でも、あとは同じだから、また同じディキンスン話をしてもしょうがないので、今日は別の話を(笑) |
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何、違う話って? |
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内容以外。この作家のピブル警視シリーズとか、この本とかって、文章っていうか、ストーリー展開は、けっしてサクサク、山あり、谷ありじゃないのよね。 |
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うん、かなり淡々としてるよね。 |
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ちょっと楽しい文化人類学の授業を受けてるみたいにね(笑) |
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そう、あらすじだけ書くと、けっこうスゴイ話みたいだけど、読むと冷めた感じっていうか、冷静な文章で、ごく当たり前のことのように書かれてるから、それほどギョッとしないのよね、不思議と。 |
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勢いなんてないに等しいよね。主人公も感情の起伏があまりないし。でも、作られた世界があまりにも魅力的で、リアルに良くできてるから読まされちゃうのよね〜。 |
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それに、いつも美しいよね。無理に叙情的な描写があったり、きれいなものが出てきたりとかはいっさいなしなんだけど、でも美しい。 |
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それぞれの文化があり、生活があるのよね。それが美しいと感じさせられちゃうのかな。 |
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生命の輝きですか?(笑) |
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今回の沼族は、かなりババッチイけどね。 |
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沼だから、水は汚い、病原菌ははびこる、迷信に毒、人殺しも当たり前って世界だもんね。 |
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だから、なんでもサラッと受けとめちゃうはずの、いつものディキンスンの主人公も、さすがに今回は嫌悪感を示すのよね。 |
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あれは同民族間でのいたわりのなさがムカツキの原因でしょう。 |
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沼族の女の子が途中から話に参加してくるけど、この子は妙に純粋で、可憐だった。 |
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逆に女テロリストなんて、目一杯美人なんだけど、別に美しさが感じられないのよね。 |
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そうそう、しょせんディキンスン作品には性的魅力なんていらないのよ。どこまでも淡々、淡々。 |
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でも読んじゃうねえ。なんででしょう。どうなるどうなるってワクワク感がないのに、私たちがここまで読まされてしまうとは(笑) |
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やっぱり設定のおもしろさと底にある芯の通った思想みたいなものに惹かれるのかしら。変な作家だよね、いろんな意味で(笑) |
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