=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「降霊会の怪事件」 ピーター・ラヴゼイ (イギリス)
<早川書房 文庫本> 【Amazon】
19世紀末のロンドンで、二つの不可解な盗難事件が起きた。ひとつはロンドン大学の生理学者 プロバード博士宅で、エティの絵が盗まれたのだが、この作品は習作で、プロバード博士宅には、他にもっと 高価な絵が沢山あった。もうひとつはミス・クラッシュ宅で、日本様式のロイヤル・ウースターの壷が盗まれて いたのだが、こちらもあまり高価なものではなく、もっと価値のある陶磁器が沢山ならんでいたのだ。どちらも 手口はあまりにも稚拙で、プロの犯行とは思われない。プロバード博士宅とミス・クラッシュ宅には共通点があった。 どちらもただいま人気急上昇中の若き霊媒師ピーター・ブランドの降霊会を開いたばかりだったのだ。盗難と、 ブランドの降霊会には、どんな因果関係があるのだろうか。うちうちでプロバード博士から依頼を受けた スコットランド・ヤードのジョエット警部は、クリッブ部長刑事とサッカレイ巡査に捜査を命じた。 | |
これは1975年に書かれたクリッブ部長刑事シリーズの、初翻訳ものです。私たちは、 クリッブのシリーズは、「マダム・タッソーがお待ちかね」だけは読んでるよね。 | |
うん。クリッブのシリーズは、ちょっと昔、19世紀末のロンドンが舞台で、 登場人物や舞台が古めかしいのはもちろんだけど、ストーリー展開や様式など、すべてが古めかしく、まるで19世紀に書かれた ミステリを読んでる気にさせられるのが特徴みたい。 | |
要するに、最近のミステリみたいに、異常心理だとか、愉快な登場人物とか、膨らませの 楽しいお話とか抜きにした、純粋に謎解きを楽しむミステリよね。 | |
つまりは私たちには好みでない、向いてないから上手に誉めることもできない類の ミステリってわけだ(笑) | |
だれに頼まれたわけでもないのに、同じく今年出た「死神の戯れ」が おもしろかったものだから、つい手を出してしまったのよね〜。 | |
これは私たちみたいにミステリにプラスアルファーを求めるタイプじゃない、 純粋に推理を楽しみたい方むきですよ、と結論だけ先に言ってしまって、あとはサクサクッとだいたいのストーリーだけ説明して終わりにしましょ。 | |
舞台は19世紀末のロンドン、そろそろ電気も引かれて、世の中はより科学的なものへと 関心を移しはじめてはいるのだけど、まだまだ一方では、上流階級のあいだで降霊会がさかんに行われてたりする時代。 | |
霊現象も科学的に解明していこうとする人たちが多く現われはじめた時代だよね。 | |
霊媒師のなかでは、クエイルって霊媒師がもっとも人気があったんだけど、 ちょっと人気に陰りが出はじめて、そこに現れたのが若き霊媒師ブランドってわけだ。 | |
ブランドは霊媒師として上流家庭に出入りしているけど、もともとは辻馬車の御者の 息子で、あまり育ちは良くないのよね。 | |
そんなブランドが出入りする家で立て続けに盗難事件が起きたから、 当然、疑われるのはブランド。 | |
で、ブランドがふたたびプロバード博士宅で降霊会を開くっていうんで、 ジョエット警部も参加するのよね。 | |
降霊会に参加したのは、プロバード博士とその娘アリス、それにアリスの婚約者ナイ大佐、 <死後の生協会>ってところの主幹で、霊媒を科学的に解明しようとしているストラスモア、それにミス・クラッシュ。 | |
ミス・クラッシュは一回盗難に遭ってるけど、ブランドの熱狂的な支持者で、 ブランドを疑ってはいないみたいね。 | |
アリスは美貌の淑女で、熱心なボランティア活動者、その婚約者のナイ大佐は、アリスに執着しまくって、 嫉妬深くて困ったものなんだけど。 | |
プロバード博士とストラスモアは霊媒を科学的に解明しようとしている仲間だよね。 この降霊会では、特製の椅子に座らせることで、ブランドが怪しい動きをしていないことを証明しようとしてて。 | |
ブランドがその椅子に座ると、微弱電流が流れる仕組みなんだよね。ただし、 ちょっとでも肘掛けから手を離せば、電流の流れが止まるから、ブランドが何かした、もしくは何もしなかったの証明になるというわけ。 | |
ところが、降霊会では電流が途切れずに流れたままなのに騒ぎが起きて、 あげくにはブランドが感電死しちゃって大変なことに。 | |
椅子はぜったいに弱い電流しか流れないような仕組みになっていたのにね。 | |
それで、誰が犯人かを推理するというわけだ。ふ〜、説明終わり〜。 | |
それにしてもさあ、クリッブってけっこう、部下に冷たい人だったのね。この本でわかったよ。 けっこうラヴゼイの他のシリーズの主人公ダイヤモンド警視と性格は近いのかも。あとさあ、翻訳文がちと読みづらい気はしたよね。 | |
というわけで、好きな方には待望の翻訳本でしょう。どうぞお楽しみになってくださいね。 | |