すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「大聖堂の悪霊」 チャールズ・パリサー (イギリス)  <早川書房 単行本> 【Amazon】
19世紀後半、ケンブリッジ大学の史学教授コーティンは、旧友オースティンに招かれ、大聖堂のある町サーチェスターを訪れた。コーティンがここに来た目的は、もうひとつある。大聖堂の附属図書館に、アルフレッド王に関する謎を解く貴重な資料があるらしいのだ。その夜、オースティンは、大聖堂で250年前に起きた殺人事件と、その被害者が今、幽霊になってさまよっているという話をした。その殺人事件はいまだに解決していない。次第に殺人事件の謎を解くことになっていくコーティン。だが、コーティンとオースティンには過去のわだかまりがあり、コーティンはそのことで、今も苦しんでいた。一方、オースティン自身も悩みを抱えているらしく、その言動には異常なものが感じられた。そんな時、殺人事件が起こった。
すみ これは、デビュー作『五輪の薔薇』で絶賛されたチャールズ・パリサーの4作めの作品ですね。さて、どうでしたか、にえさん?
にえ つまんねーよ、バカヤロー。
すみ ひーっ。来るとは思ってたけど、そこまで言うか。
にえ だってさ、違う作家が書いたとしか思えないよ。『五輪の薔薇』のあのスピード感はまるでなし、ノロノロしてて、しかも文章が読みづらい。
すみ う〜ん主人公が大学教授のせいもあるんだろうけど、持って回ったようなくどくどしい説明文に会話、おまけに古文もテンコモリ、これにはさすがに辟易とさせられたよね。
にえ 翻訳家さんも出版社さんも、さすがにこんな文章、読み返したくなかったのか、誤字誤植もかなり目立ったね。
すみ 人物もさあ、『五輪の薔薇』のような厚みが全然ないよね。
にえ どいつもこいつも欲深くって気取り屋で、、薄っぺらくてエロエロで、主人公のバカさかげんもむかつきまくり。
すみ まあ、それについては多少ましな人もいたじゃない。
にえ でもさ、ましなほうの一人、美人妻、あれもまた最悪だね。最後のほうで主人公にもっともらしい助言をするんだけど、それがまた平々凡々で、おまえは中学生の恋愛相談かってかんじ。
すみ 謎もさあ、丸バレだったよね。
にえ そう、そのわかってる謎に向かって、おもしろくもない話を長々と読まされるこっちの身にもなってほしい〜。
すみ 主な謎が3つあるんだけど、その謎じたいもシケてたよね。なんだ、その程度の謎か〜ってわかってみればガッカリ。
にえ 私が一番かなしいのは、この本を先に読んだ人は、ぜったい『五輪の薔薇』を読んではくれないだろうってこと。
すみ いくら全然違うよ、『五輪の薔薇』はおもしろいよって言われても、こんな作家が書いたあんな長い本読めるかいって言われちゃいそうだよね。
にえ 2作目、3作目はもっとひどかったらしいし、一発屋なのかな、この作家さん。
すみ なんか、今にして思えば、『五輪の薔薇』はディケンズがパリサーに乗り移って書いた本で、あとの3作はパリサーが自分で書いたのかなあって気がしてきちゃう。全然違うんだもん。あの才能の煌めきはどこに行っちゃったの?
にえ 『五輪の薔薇』は、19世紀の初頭の匂いがプンプン漂って、ストーリー展開は超ハイスピード、登場人物はすべて厚みがあり、謎解きは震えが来るほどだった。これには、そのどれもない。
すみ ワガママばっかり言って申し訳ないけど、この本は和訳出版しないでほしかった。この本のせいで、せっかくの大傑作『五輪の薔薇』を読まずに終る人が多発すると思うだけで、私は悲しい気持ちになっちゃうよ。
にえ まあ逆に、そんな人いるのかってかんじだけど、この本読んで気に入った人が、『五輪の薔薇』を読んだら、なんだこりゃと思うだろうね。
すみ ほんとに、ほんとに、同じ作家が書いたとは思えないよね。
にえ 共通点ゼロ。期待が大きかっただけに、ガッカリしまくりでしたっ。