=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「ポビーとディンガン」 ベン・ライス (イギリス)
<アーティストハウス 単行本> 【Amazon】
オーストラリアの南東部にあるライトニング・リッジは、特大の美しいオパールを掘り当てて一攫千金を 狙おうとする人々が集まる町だった。ウィリアムソン一家の父親もまた、オパール掘りにあけくれ、イギリス から来た母親は、少し後悔の色を見せていた。そんな家庭に育ったアシュモル少年の悩みは、妹ケリーアンの 見えない友だちポビーとディンガンだった。ケリーアンはポビーとディンガンが見えなくても本当にいると言い張るし、 まわりの者たちまでそれに調子を合わせる。アシュモルにとっては苛立つばかりだった。 | |
これは大人のための童話って部類に入るのかな。ヤングアダルトブックスに 入れればいいのかな、そういう感じの本でした。 | |
かわいく、せつないって話だったよね。 | |
舞台はオーストラリアの田舎町、オパールで一攫千金を狙う人たちが 集まる町だから、田舎町といってもちょっとガラの悪い町なんだけど。 | |
そこに住んでるウィリアムソン一家は、父親が典型的な脳天気タイプで、 一家は父親に引きずられるようにして、その町に住んでるのよね。 | |
まあ、悪い人じゃないんだけどね、その父親ってのも。ただ脳天気すぎるんだろうねえ。 | |
母親はイギリスでお金持ちの青年と婚約する寸前ぐらいまでいってたみたいだけど、 この父親が現れて、結局は今の生活に陥ってしまったみたい。けっこうナーバスになってたね。 | |
家庭内はそんなふうだし、家の外ではガラの悪い子供たちに虐められるし、 で、友だちもいない妹のケリーアンは、見えない友だちを作っちゃうの。 | |
それじたいは、別に珍しい話ではないのよね。感受性が豊かで孤独な子供が 空想の友だちを本当にいると信じて暮らすってのはよくあることだから。 | |
この本にも、別の少年で、忍者のカモノハシと一緒に暮らしてるって子がいたよね。 | |
ただ、ケリーアンの場合には、かなり極端。秘密のお友だちじゃなくて、 つねに「ポビーとディンガンが……」って存在を公然と主張するお友だちで、まわりの人も調子をあわせなきゃ いけないお友だちなのよね。 | |
近所のオバサンが「ポビーとディンガンにも」って3個も飴をくれたり するだけならまだしも、町で催されたミス・オパール・コンテストでは、ディンガンが3位に選ばれちゃったり、 アシュモルがイライラするのも無理ないわ。 | |
そうだよね、私だってあなたがもし、ケリーアンみたいなことを言う子だったら、 山に捨ててきたくなっちゃったと思うよ(笑) | |
そう? じゃあ私は、あなたなんか本当は、私が子供の頃につくった空想上の お友だちなのかもよ、ヒヒヒと言い返しておきましょう(笑) | |
で、ポビーとディンガンがいるために授業に集中できないケリーアンを気づかって、 父親がポビーとディンガンを採掘場に連れていくと言いだして、事情は一変するのよね。 | |
父親はポビーとディンガンのことを忘れ、ケリーアンに連れて帰ってくれたかと訊かれて、 いいかげんな返事をするけど、ケリーアンは納得せず、ポビーとディンガンがいなくなっちゃったと大騒ぎ。 | |
とうとうケリーアンは病気になって、根はやさしいお兄ちゃんのアシュモルは、 ケリーアンのために町の人を巻き込んで、ポビーとディンガン探しに、とそういうお話。 | |
まあ、こうやってしゃべっていくと、いかにもな話って感じだけど、 読んだら意外とよかったよね。 | |
うん、まず文章のもって行き方がよかったね。説明をできるだけおさえて無理なく 話が進むし、エピソードがどれもピタッと来たし。なんといっても、アシュモルの語りで物語が進んでいくんだけど、 ちょっとハスキーな少年の声が聞こえてくるようで、心地よい語り口だった。 | |
背景のつけ方がグッドだったでしょ。アシュモルとケリーアンの 兄妹愛の物語のうしろで、ライトニング・リッジっていう特殊な町の景色が鮮やかに見えてきて。 | |
どこかすさんで、でも人間らしいやさしさも失ってない町の人々の 生き様が、けっこう濃く描かれてたよね。 | |
泣くほどいいってほどではないけど、けっこう薄いわりには読み応えもあって、 おもしろかった。 | |
たまには息抜きでこういう本もいいんじゃない? あんまり続けて読むとかえって 疲れそうだけど(笑) | |