すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
「蟻」 ベルナール・ウェルベル(フランス)  <角川書店 文庫本> 【Amazon】
蟻の研究をしていた生物学者の伯父エドモンから、一軒の邸宅を遺されたジョナサン。エドモンはジョナサンに宛てて、けっして地下室には入っていないと手紙を残していた。いったい地下室にはどんな秘密があるのか。しだいに取憑かれたように伯父と地下室の秘密を探り出すジョナサン。一方、蟻の世界では、遠征で突然の殺戮に会い、偶然生き残った327号が、赤蟻の女王国ベル・オ・カンに戻り、潜んだスパイに命を狙われはじめていた。
にえ たいした理由じゃないんですが、遅れに遅れてフランス祭り第三弾です。
すみ 恥ずかし〜(笑)
にえ もとを正せば、この本が一番前から読みたかった本なのよね。子供の頃から蟻が好きで、十三年かけて、とうとう蟻が主人公を書いてしまったなんて、それだけで惹かれるじゃない?
すみ 一時期の、蟻ブームの火付け役的本でもあるのよね。で、どうでしたか?
にえ メチャメチャおもしろかった〜。読むまでは、ついていけなくて途中で放りだしちゃうんじゃないかなんて思ってたけど、読みだしたら、一気だった。
すみ 上下巻だけど、文字数からいくと、普通の単行本1冊分だよね。私も夢中になって読んだら、あっという間に終ってしまった。
にえ 作者の思い入れがひしひし伝わってくる、楽しいでしょ? すごいでしょ? って話しかけてくるような本だったよね。
すみ うん、この作者って、蟻だけじゃなくて他の知識もたっぷり持ってる人みたいね。思いのほか、厚みのある内容で深かった。
にえ 人のほうの地下の謎も、なんだろ、なんだろって、なんか楽しいミステリ読んでるみたいだったし、蟻のほうは擬人化されてて、けっこう壮大なファンタジーだったよね。
すみ ファンタジーって言っても、童話っぽい感じじゃなくて、もっとシビアで過酷。
にえ 王国と王国、種族と種族の戦いの物語でもあり、スパイを捜すミステリでもあり、未知の世界を旅する冒険の物語でもあるしね。
すみ この辺はもう、疑問なんかはほっぽいといて、与えられた情報を素直に受けとって、ウエルベール流蟻世界にどっぷりはまりこんでほしいよね。
にえ ところどころに出てくる、エドモンの残した言葉も深くて、物語を楽しむにとどめない問題提起があったよね。
すみ スピード感も凄かった。戦略、スパイとの攻防、次々と襲いかかる謎、蟻の世界、凄すぎ〜。
にえ 雄蟻327号と雌蟻56号の淡いロマンスも、胸うちものだったしね。
すみ 蟻に感動させられた〜(笑)
にえ 他の昆虫もいっぱい出てくるしね、昆虫好きだったらたまんないんじゃない?
すみ でもさ、ダメな人はダメかもね。脚ちぎれたりとか、頭とれちゃったりとか、日常茶飯事のように起こるし。
にえ まあ、昆虫だと思えば、それほど恐怖心はわかないと思うけどね。
すみ 食べ物とかも、ほら、やっぱり蟻だから。
にえ う〜ん、私としては、この本のおもしろさがわかってもらえないのは、ピーマンやセロリの美味しさがわかってもらえないのと同じぐらい残念だな〜。
すみ まあ、人それぞれですから(笑)
にえ 私たちは、続編の「蟻の時代」もすぐ読もうね! あ、最後のほんの一部分、え、と思ったけど、おもしろかったからこれは見逃す(笑)