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「ガラス箱の蟻」 ピーター・ディキンスン (イギリス)
<早川書房 ポケミス> 【Amazon】
ロンドンの片隅で不思議な殺人事件が起きた。殺されたのはクー、容疑者もクー、証言者もクー。彼らは太平洋戦争で、日本軍に略殺されたニューギニアの部族の生き残り、殺されたのは彼らの酋長だった。クー族の村で宣教師の娘として暮らしていたイヴという女性が、彼らをロンドンに連れてきて、彼らに広い住居を提供していた。事件を担当するのはピブル、奇妙な事件ばかりを専門に担当させられている、ロンドン警視庁の警視だ。 | |
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これがディッキンソンのデビュー作で、CWA賞ゴールデンダガー賞受賞作。ちなみに、ディッキンソンは二年連続でゴールデンダガー賞をとるという快挙を成し遂げてます。 |
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ディッキンソンじゃないよ、この本ではディキンスンだよ。 |
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どっちでもいいじゃない。いつも思うけど、どうせカタカナ言葉を英語の正確な発音と同じにすることはできないんだから、統一してほしいよね。 |
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まあ、それはともかく、この本はどうだったでしょう。 |
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翻訳がちょっとぎこちなかったよね、滑らかさがなくて。 |
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うん、でも翻訳者紹介を見たら、明治生まれのオジイチャンだったから、まあ、なんかこれはこれで味わいがあって良いかな〜と(笑) |
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クー族の人たちがぎこちなくしゃべるのは当たり前だけど、英国人どうしで話してるときまで、クー族のようにぎこちなくしゃべってるからちょっと笑ってしまった。 |
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まあ、リズム感がないだけで、言ってることがわかりづらいってわけじゃないけどね。娼婦が出てきて、ママゴト言葉みたいなしゃべり方をしだしたときは、私もさすがに笑ったけど。 |
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ピブルはおもしろい人だったよね。定年退職前、難しい事件を多数解決していて、認められているはずなのに、本人は自分はたいしたことないって本気で思ってる。 |
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すごく頭もいいし、言わなきゃいけないときはガツンと言える人なのに、本人は自分のことを小心者だと思ってるのよね。 |
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なんか本人は、刑事じゃなくて研究者の気分で仕事してるのよね、とってもおかしな人(笑) |
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翻訳のせいか、児童文学チックなしゃべり方になってるから、よけいおかしな感じがするのよね。 |
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なんか純粋無垢な子供がそのまま大きくなって、刑事やってるみたいだったね。 |
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さて、二人ともなかなか触れない内容ですが(笑) |
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これはねえ、なんと言っていいか。簡単に言えば、変わってた、おもしろかった、謎解きより扱ってる内容重視だよって、この3点かな。 |
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そうね、謎解きはどうでもいいって感じよね。それより、おもしろいのがこのクー族とイヴの人間関係。 |
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クー族はいろんな決まり事とか、風習とかあるのよね。 |
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その辺は、ディキンスン自身がアフリカ生まれで、子供の頃に他の国とかもまわってるから、リアルに書かれてるよね。 |
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説明もわかりやすいしね。その部族がロンドンで暮らしてるんだから、まあ変な雰囲気は漂いまくるわな(笑) |
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イヴなんて、女性なのに、クー族のなかでは男で、男と結婚してるから、ホモの夫婦として扱われてるっていうんだから、不思議おもしろ話よね。 |
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で、イヴはクー族では低い立場でありながら、庇護者であり、人類学者としてクー族を飼って観察してる、みたいなところもあり……。 |
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なんかその辺は、『エヴァが目ざめるとき』と同じ思想が底辺にある気がしたね。それぞれには、それぞれが暮らすべき場所がある、どんな理由があろうと、それを他者が犯してはならないっていうような。 |
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それはほんと、よくわかる。野生動物を動物園で飼うのもどうかと思うよね。他の生物の犠牲を払ってまで、人間の子供に見せなきゃいけないものか? |
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ま、話を戻すと、その変わった世界で、ピブルがのほほんというか、鋭くもほわわ〜っとたちふるまってるから、とっても柔らかな読みごたえなのよね。変わった世界を描いたものにありがちな、ギトギト、ギスギス感が全然ない。 |
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変わったものが書きたいっていうより、訴えたいものがはっきりあるってかんじだったしね。まあ、これ以上は私たちには説明できませんよ。興味があったらどうぞってことで。 |
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読みはじめたら、気になってシリーズ通して読みたくなるよね、どれもこれもまた扱ってる世界が違ってて、変わった話ぞろいみたい。そそりますね〜。 |
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そそります。翻訳者も違うし(笑) |
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