すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「人にはススメられない仕事」 ジョー・R・ランズデール (アメリカ)  <角川書店 文庫本> 【Amazon】
レナードの叔父が遺してくれた家で、共同生活をはじめたハップだったが、いくら仲がいいとはいえ、 やはり二人暮らしはなにかと衝突もあった。イカす赤毛女のブレットと一緒に住むことができれば、それも すべて解決する。ブレットとは心も体もバッチリ通じ合えていたし、今度こそ幸せになれそうだ。ところが、 ブレットにかかってきた一本の電話が、そんな計画をすべて台無しにした。ブレットの娘ティリーは売春婦 だったが、組織を抜けたいから助けに来てくれと伝言をよこしたのだ。当然、ハップはレナードを誘い、 ブレットのティリー救出を助けることにした。
にえ この本は、ランズデールのハップ&レナード・シリーズです。万年失業者のような 中年の白人ハップと、ゲイの黒人レナードの親友二人が、いろいろな事件に巻き込まれ、下品な言動とやさしい心で、 ズバッと解決(?)ってシリーズなんですが。
すみ このシリーズ、「ムーチョ・モージョ」「罪深き誘惑のマンボ」「バッド・チリ」と 一年おきに順調に出版されたけど、今回は「バッド・チリ」から一年半ぶりになっちゃったね。なんかすごく間があいたような 気がしてしまった。
にえ 作品によって、推理ものっぽかったり、アクション活劇っぽかったりす るんだけど、この本では、ハップとレナードに加えてブレットって女性の三人が、ティリー救出のために旅と ドンパチを繰り返し、冒険アクション活劇って感じかな。
すみ 小男のレッドってのと、うすのろ大男ウィルバーってのが、ティリーが 助けてくれって言ってると伝えに来て、それから武器をそろえ、組織に乗り込み、どこに行ったかわからなくなったティリーを探し、 さらに旅をするのよね。
にえ 今回は動物がいい味だしてた。アルマジロがかわいかったし、プレイリー ・ドッグにはビックリ。
すみ 小男レッドの兄、組織から抜けて神父になった変わり種のハーマンや、賭け事に 目がない親玉ビッグ・ジムなんて、おもしろキャラもいたよね。  
にえ 派手なアクションシーンの連続で、話もトントン拍子で進んでいって。
すみ ランズデールの愛するテキサスの魅力も存分に味わえたよね。
にえ でも、私はもうこのシリーズは読むのをやめようかな。
すみ えええっ! あんなにハップとレナードを愛してたのに(笑)
にえ このシリーズってね、ハップとレナードが人としては最低と 思えるような生活をして、お下劣な言葉のマシンガントークで笑わせながらも、それだけではない何か、 人間として一番大切なものをハップとレナードは持っているって、そこが好きだったの。
すみ そうそう、二人には、なにがなくても愛があり、くだらない差別意識を 嘲笑うだけの知性があり、そういうのが魅力なのよね。
にえ なのに、なのに、この本を読むと、レナードもブレットも、いらない人間なんて 殺しちゃえばいいってスタンスでしかないし、人を殺しても、あんなやつは死んでよかったんだ、みたいなことしか言わないし、 なんかついていけなくなった。
すみ う〜ん、そのへんは、暴力を嫌うハップの性格を強調するためかもしれないけどね。 
にえ 娯楽本で、いかにもな作り話で、イキリたって道徳を説こうとは思わないけど、 それにしても今回はひどすぎた。なんかいつも笑わせてくれる下品な会話も、今回はシツコイ!と思っただけで、 ぜんぜん笑えなかったし。
すみ 最後の方で感じさせてくれる、生きていることのむなしさ、それでも 人は生きていくんだ、みたいな読後感は今までどおりあったけどね。
にえ そう、ご都合主義な展開も今までどおりなんだけど、今まではそれでも おもしろかったのに、今回はそれも、いただけなく感じた。
すみ たしかにちょっと人は死にすぎたかもね。簡単な理由で、バンバン人が 殺されていってた。
にえ それに、ハップもレナードもブレットも、気に入らなければ殴ったり蹴ったりの暴力三昧。 今までは容認できた部分も、ここまでいくと私はついていけない。
すみ 私は、ランズデールは現代劇に、ちょっと西部劇の雰囲気を加えたかったのかな、な んて思ったりもしたけど。
にえ レナードの差別用語を嘲笑うために使う差別用語も、今回は小男と黒人ゲイの 醜い差別合戦のようにしか思えなかったし、とにかく、ランズデールは好きだけど、このシリーズは私はもういいわ。
すみ え〜、次が出るまで保留にしてほしいんだけど。とりあえず、この本は嫌いだったということで。