すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「鍵のかかった部屋」 ポール・オースター (アメリカ)  <白水社 Uブックス> 【Amazon】
ニューヨークで本や映画などの評論を雑誌に書いて暮らしている僕は、ソフィーという女性から手紙を 受けとった。ソフィーの夫ファンショーは僕の物心つく前からの幼なじみだったが、いまは交流もなく、なに をしているのかすら知らなかった。そのファンショーが妻と産まれたばかりの子供を残して行方不明となり、 あとには大量の原稿が残っていた。ファンショーはいなくなる前ソフィーに、自分がもし、死ぬか、いなくな るかしたら、その原稿を僕に渡し、出版するか、捨てるか、判断をまかせてくれと言っていたという。
にえ ニューヨーク三部作の3作め、完結編ともいえる作品です。
すみ 納得の完結だよね。おもしろいのを超えて、ゾクゾクしまくりでした〜(笑)
にえ 話がはじまってすぐ、ファンショーと僕の子供の頃の思い出が語られてだすんだけど、 そこからもう夢中になっちゃったよね。
すみ ファンショーが不思議な子供なのよね。子供なのにすでに完成されてるって感じで、 友だちのなかではカリスマ的な存在で。
にえ なんかファンショーに関わりあうと、ぜんぶ判断をファンショーにまかせきりに なっちゃうっていうか、頼りきって骨抜きになっちゃうみたいなのよね。
すみ 主人公である僕が成長して、いつのまにか離れていったのもわかる気がする。 そのまま離れておけばよかったのに。
にえ でも、ファンショーの奥さんソフィーから手紙が来て、会ってみると自分好みの 美人で、こうなってくると、男はもう抜けられないのだなあ(笑)
すみ ファンショーが残したのは推理小説に戯曲に詩。もちろん、どれも傑作で、出版されることになるのだけど。
にえ 読んでみたいよね〜、ファンショーの推理小説。
すみ 読んでみた〜い。どんな小説ともぜんぜん違ってて、読むと頭から離れなくなっちゃうんだよね。おもしろそ〜。
にえ ファンショーはとにかく、本人がその気もないのに、人の脳を支配しちゃうみたいなところが あるみたいだよね。なんかやってることは当たり前なのに、なんか不気味。
すみ で、もちろんファンショーの本は売れて、世間でファンショーを知りたい熱が上がり、僕はファンショーの 伝記を書くことになって。
にえ 来た来た来た〜って感じだよね。ここからオースターの悪夢ゾーンに入るなと、もうワクワク。
すみ ファンショーって結局なにものだったの? 死んだの? 生きてるの? なにやってるの? なにが目的?と 疑問は僕をひきこみ、からみつき、気づいたときにはもう逃れられないっ。
にえ で、なんでこれを完結編だと言ったかということですが、この本には「シティ・オヴ・グラス」「幽霊たち」の 存在意義が語られ、ある答えが用意されているのです。
すみ おまけに、2つの作品に出てきた登場人物も、名前だけ、ご本人登場などの形で何名か登場するのよね。
にえ これでゾクゾクしないでどうするのって感じだよね。
すみ わわわ、そういうことだったの! あ、あの人がこんなところで! と驚きまくりだった。
にえ というわけで、ニューヨーク三部作は3冊すべて読んではじめて、完結するのでした。 内容や登場人物を忘れないうちに3冊読むべし!
すみ ラストもよかったよね。「アレ」が最後の最後に出てきて、しかもあの結果に。う〜、ゾワッときたっ。
にえ ところで、翻訳家の柴田さんは、解説だけでなく本文中でも、先に他の人に訳されてしまった「シティ・オヴ・グラス」 を「ガラスの街」と言いはってたよね。男の意地を見たよ(笑)
すみ なんか理由があるのかもよ。それより翻訳家さんはともかくとしても、やっぱり同じ出版社から3冊とも出してほしかったね。 3冊で1セットなのに、並べるとバラバラだ〜(笑)