=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「幽霊たち」 ポール・オースター (アメリカ)
<新潮社 文庫本> 【Amazon】
1947年、ブラウンのあとをついで探偵となったブルーは、ホワイトからの依頼を受けた。ブラックという 名の男を見張り、週に一回報告書をあげてくれ。その日から、ブルーはオレンジ・ストリートのアパートの一室で寝泊まりし、 向かい側の建物に住むブラックを見張りはじめる。だが、ブラックはなにをするでもなく、ただひたすら部屋にこもって書き ものをするばかり。たまに散歩にでかけるが、すぐに戻ってきてまた机に向かう。いつまで経っても何も起きないまま、 長い月日が過ぎていった。 | |
ニューヨーク三部作の2作めです。この三部作は順序正しく読むことが重要なので、ちゃんと「シティ・オヴ・グラス」のあとに読んでくださいね。 | |
ただ、3冊読んではじめて1セットとなる三部作のなかの重要な1冊だということを外してこの1冊を単品の小説と考えると、ちょっと私には魅力に乏しかったな。 | |
ストーリーは「シティ・オヴ・グラス」とほとんど同じなんだよね。 | |
書いたらなんだか前作と似ちゃったっていうんじゃなくて、わざと狙ってそうしてるの。それは読んでてすぐわかったけど。 | |
ひとつのストーリーでオースターが2つの切り口をみせてくれてるって感じなのよね。 | |
ストーリーは似てるけど、雰囲気はガラッと違うの。文章からしても、こっちは詩的で、トーンを抑え気味で。 | |
透明感があったよね。すうっと静かな幻想世界に入っていくような。文章といい、登場人物の名前といい、今まで読んだ 現実から幻想世界に滑り落ちていく感じじゃなくて、最初から現実味のない世界だったよね。 | |
なんか登場人物がブラウンとかブルーとかって読んですぐ、いやな予感と思ったけど、やっぱり的中。 | |
ああ、たしかにそういうのって没個性の象徴って気はするよね。この名前で活き活きとした登場人物が現れるとは思えない。 | |
「シティ・オヴ・グラス」のピーター・スティルマン父子みたいな強烈な個性はいっさいなしだったから、なんなのこの人たち? どうなるの?って読む楽しみはないの。 | |
ブルーはかなり普通の人で、見張られてるブラックはかなりストイックな感じの人だったからね。まあ、個性的なおもしろい人たちではなかった。 | |
三部作のなかの1冊として読んで、その存在価値がわかってみれば、これはこれでいいのかも、と思うけど、もし、この本が初めて読むオースターだったら、たぶ ん、2度とオースターを読むこともなかっただろうな。 | |
「シティ・オヴ・グラス」を読んだすぐあとなら、それなりに楽しめたんじゃない? 同じような話を別の作家が書いたような、ストーリーは似ててテイストがまったく違う2つの小説を読む楽しみ。 | |
短いからまあ、それほど堪えられないってこともないんだけど、ストーリー自体も凹凸がなくて、なんか淡々としてるんだよね。 | |
孤独っていうテーマは、今まで読んだなかでは一番色濃く出てた作品じゃない? | |
そうだね、今まで読んだのだと、孤独といってもそれなりに人と接してたりするけど、この本に関しては徹底して孤独、孤独がクローズアップされてたね。 | |
見張っているブルーも孤独だったし、見張られているブラックも孤独、その二人の接点が孤独しかないって、とっても皮肉な孤独の物語だった。 | |
うん、作品としての面白味はあったかもしれない。でも、ちょっと読む面白味がな〜。内々で終始しちゃってるというか、外に拡がっていかない感じがどうも息苦しくって。 | |
まあ、その辺は好みの問題かもしれないけど。 | |
ただ、「シティ・オヴ・グラス」のあとに読むことはオススメします。なんでかって言うとね〜、ふふふっ。 | |
ニューヨーク三部作は3冊まとめて読んで、はじめて真のおもしろさがわかるようになってるのよね。 | |
次の「鍵のかかった部屋」で、この本を読んだことも喜びに変わったから、さんざん文句を言ったものの、けっこう読んだことに満足はしているのでした(笑) | |