=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「パロマー」 カルヴィーノ (イタリア)
<岩波書店 文庫本> 【Amazon】
T パロマー氏の休暇 T・1 浜辺のパロマー氏 1-1 波のレクチュール パロマー氏は浜辺で波を見ながら考える。 1-2 あらわな胸 人けのない浜辺で、胸をあらわにして日光浴する女性に出会い、考える。 1-3 太陽の剣 夕方のひと泳ぎで、傾きかけた太陽を見ながら考える。 T・2 庭のパロマー氏 2-1 亀の恋 自宅の中庭で交尾をする一組の亀を見ながら考える。 2-2 クロウタドリの口笛 夏、存分にとりの歌声が聞こえる地で考える。 2-3 はてしない草原 家のまわりにある草原を見ながら考える。 T・3 パロマー氏空を見る 3-1 昼下がりの月 冬、ほの白い昼間の月を見ながら考える。 3-2 惑星と眼 春、澄みきった夜空の下、望遠鏡をのぞいて考える。 3-3 星たちの瞑想 星座表をと照らし合わせながら、星空を見て考える。 U 街のパロマー氏 U・1 テラスのパロマー氏 1-1 テラスにて ローマの街中、鳩を憎みながらテラスで考える。 1-2 ヤモリの腹 夏、テラスにヤモリが戻ってくると、窓ガラスに貼りついたヤモリを見ながら考える。 1-3 ホシムクドリの襲来 秋の終わり、ローマの空に集結するホシムクドリの大群を見ながら考える。 U・2 パロマー氏買物をする 2-1 鵞鳥の脂肪一キロ半 パリの精肉屋で列に並び、鵞鳥の脂肪詰めの小瓶を見ながら考える。 2-2 チーズの博物館 パリのチーズ屋で列に並び、チーズをもっとたしかに分類することを考える。 2-3 大理石と血 肉屋の店先、職人たちが肉を切るカウンターの向こうを見ながら考える。 U・3 動物園のパロマー氏 3-1 キリンの駆け足 ヴァンセンヌ動物園で、キリンの動きを眺めながら考える。 3-2 シラコのゴリラ バルセロナ動物園で、白いゴリラの動きを眺めながら考える。 3-3 鱗の秩序 パリの植物園にいる爬虫類館で、大好きなイグアナを見ながら考える。 V パロマー氏の沈黙 V・1 パロマー氏の旅 1-1 砂の花壇 日本で、白い砂が敷きつめられた庭園を見ながら考える。 1-2 蛇と頭蓋骨 メキシコで、トルテカ族の首都だったドゥーラの遺跡を見学しながら考える。 1-3 不揃いなサンダル 東洋のバザールで買った、サイズが不揃いのサンダルを見ながら考える。 V・2 パロマー氏と社会 2-1 言葉をかみしめることについて なにかを主張する前に、かならず三度、言葉をかみしめる習慣。 2-2 若者に腹を立てることについて 若者たちに話しかけることの難しさを考える。 2-3 きわめつけのモデル パロマー氏の思考のための理想的なモデル。 V・3 パロマー氏の瞑想 3-1 世界が世界をみつめている パロマー氏は事物を内側からではなく、外側から見つめることにした。 3-2 鏡の宇宙 パロマー氏にとって、宇宙は自分のなかに学び取ったものだけを映す鏡だった。 3-3 うまい死に方 死について考えるパロマー氏。 | |
こんなかんじの本です(笑) | |
小説というより、柔らかな哲学書ってかんじの本だったよね。 パロマー氏はそっくりそのままカルヴィーノであり、そのカルヴィーノであるパロマー氏の頭のなかを のぞかせてもらってるみたいな。 | |
ちなみに、1は視覚的な経験、2は人類学的もしくは広義の 文化的要素、3はより思索的な経験を語っているそうで、横に読んでいってもいいし、番号であわせて 縦で読んでいってもいいようになってるそうです。 | |
パロマー氏に動きはあまりないのよね。ひたすら考えてること が書いてあって。でも、やはり小説なのかなと思うのは、思索に耽るパロマー氏が列のうしろの人ににらま れたり、奥さんにきついことを言われたり、娘にせかされたりってのが、最後にちょこっとあったりするの。 | |
パロマー氏はまあ、カルヴィーノと同じ職業と考えてもいい ような気はするけど、とにかく労働らしき労働はせず、つねに考えていることが仕事で、妻と娘が一人いて、 どうやらパリとローマにアパートを所有してるらしいの。 | |
それでもって、世界中を旅してるみたいよね。 | |
私のようにぜんぜん哲学的でない人には、パロマー氏の考え てることが、単にこじつけっぽかったり、簡単な話をむりやり難しく考えてるようにも思えたりするのだ けど、それがおもしろかったりもしたな。 | |
そうそう、たとえばわかりやすいところでいうと、不揃いのサ ンダルの話なんか、このサイズを間違えたもう一組のサンダルが、あの露天商のサンダルの山の中にあるん だろうとか、パロマー氏がくどくど考えるとこがあったでしょ。 | |
ああ、そういういい加減な露天のサンダル屋じゃあ、サイズが 合わない組み合わせなんて何組も売ってて、サンダルの山のサイズなんてグチャグチャだよってつっこみた くなった(笑) | |
それを深く、深く考えていくパロマー氏に、他にすることはない のかいと言いたくなったり、これが生きるとはなんぞやという究極の謎へと続く道になるのかなあと思った り、とにかくまあ、日常のなにげないひとつのことから、そういうところにまで思考を持っていくこういう人 たちの頭の中がおもしろいと思ったな。 | |
やりかたを教えてもらったから、ちょっと真似したくなったよう な(笑) 草を見たり、チーズを買ったり、そういう日常からどんどん発展させていくのよね。 | |
私がこの本の中で一番好きだったところは、169ページの 1行めから10行めでした。手にとられた方は、ご確認ください。 | |
ちなみにこの本は日本では、1988年に同じ翻訳者さんで 松籟社から出版されてるんだけど、もとをただせばイタリアの新聞に一話ずつ掲載されていたものを集めて 一冊の本にしたものらしいです。 | |
難しい話のようで、一話ずつが短いから、読んだあとでゆっく り考えて、また次に進めるって感じだったよね。読む苦痛はなかった。ただ、ストーリーのある小説として 期待しちゃダメかも。 | |