すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「最後の刑事」 ピーター・ラヴゼイ (イギリス)  <早川書房 文庫本> 【Amazon】
湖に、全裸女性の死体があがった。手がかりのない難事件に立ち上がったのは、近代の科学捜査を嫌い、昔ながらの捜査にこだわる頑固もの、ダイヤモンド刑事。以前の事件での誤逮捕の責任を負わされかけていたダイヤモンドは名誉挽回のために張り切る。だが、死体の身元は判明したが、犯人像はつかめず、ダイヤモンドは窮地に立たされることに……。
にえ 長かった。
すみ ページにすると、500ページちょっとですか。
にえ いや、ページ数じゃなくて、あら筋にしたときの行数に対する、枚数の使い方っていうか、この内容でここまで長く?!って感じがした。
すみ でも、ダラダラ長いわけじゃないよね。あいだで、二人の容疑者の供述がそのまま一人称の小説みたいになってたりして。
にえ あれがまた、よくわかんなかった。
すみ 私はそれぞれの供述の相違点を探すのかしらとか、どこかに矛盾したところがあるのかしらとか思って、一生懸命読んだけどね。
にえ 結局は軽く伏線があるだけだったじゃない。わざわざあそこまで丁寧に書く必要性はなかったよね。
すみ まあ、ただ事実をしゃべられるより、雰囲気的は伝わってきて、感情移入はしやすかったんじゃない?
にえ でもさあ、主体となる捜査部分も、それほど変化がなくて、謎が解けていくってこともないし。なんか後半部分まで、やけに淡々としてたよね。
すみ う〜ん、まあ最後に驚愕の新事実とか、あっと言わせる謎解きとかがあれば、それまでの助走って感じで許せたんだけどねえ。
にえ それほどの結末でもなかったよね。おおかた予想できる程度のことだったし、逆に、だったらこれまでの長さはなんだったのよって不満が残った。
すみ でもさ、主人公のダイヤモンド刑事はよかったよね。彼の個性のおかげで、私は最後まで読めたよ。
にえ うん、彼は私も好き。無骨なようで、実は繊細。人の心に敏感に反応する。
すみ それに、短気に見えるけど、実はものすごく寛容で、しかも、自分を陥れた人とかにたいしても、客観的にいい人間か、悪い人間か判断できる、感情に流されない理性の強さもあるのよね。
にえ 暴力も振るわないしね。それに、プライドがあるけど、プライドに惑わされない潔い判断力もある。
すみ 奥さんに対する態度もよかったよね。結婚するまでのエピソードもかわいかった。
にえ そういう優しさやデリケートさを表面に出すと、刑事としては、つけこまれるすきになりかねないから、堅い殻で覆い隠してるのよね。
すみ そのダイヤモンドさんが窮地に追い込まれるから、どうなっちゃうんだろうって心配しながら読み進めたよ。
にえ ただ、彼の良さが前面に出てくるのが終りに近づいた頃だからね〜。
すみ でもさ、この長さも、最近の科学捜査に対するダイヤモンド刑事の存在、つまり人間が捜査することの大切さを描き出すために必要だったんじゃない?
にえ う〜ん、そりゃそうかもしれないけど、でもそれだったら、ダイヤモンドを警視は、上でふんぞり返ってるような役職じゃなくて、もっと下っ端の刑事って設定にしたほうがよかったんじゃない?
すみ 地道に聞き込みとか、調査とかするような?
にえ そうそう、そのほうが勘だけじゃなくて、人が調べる大切さなんかも表せたじゃない。
すみ 地道な捜査の大切さ? それじゃ松本清張になっちゃうじゃない(笑)
にえ そうそう、科学捜査よりも人の捜査が大切ってことをわかるには、松本清張の本を読んだほうがいいかも。あれは人の大切さを実感させられるぜ〜。
すみ まあ、それはそれで読んでいただくとして(笑)、この本にたいする結論は?
にえ 出来が悪いとは言わない。他に読みたい本がなければ、これでもじゅうぶん楽しめた。ただ、読みたい本がいっぱいある現状としては、私的にはこの本を読んでいる時間がおしかった。
すみ じゃあ、イマイチ長すぎたってことで(笑)