=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「グレタ・ガルボの眼」 マヌエル・プイグ (アルゼンチン→)
<青土社 単行本> 【Amazon】
7つの短編で紹介する、プイグが愛する古き佳き映画の数々。 | |
これはステキな本なの〜! | |
かつて映画監督をめざしていたマヌエル・プイグは、大変な 映画ビデオのマニアだそうで、特に好きなのは、イタリア映画、それもトーキー(有声映画)初期の白黒 映画がみたいなの。そのプイグが短編小説という手法で、自分の好きな映画たちを紹介。 | |
私たちって映画をあんまり見ないわりには、古い映画の話を聞 くのって大好きじゃない? この本はピッタリよね。 | |
そうそう、淀川長治さんの古い映画紹介、大好きだったよね〜。 | |
愛情いっぱいに語ってくれるから、頭に映像がくっきりと 浮かんできちゃうの。まあ、それがあまりにも素敵だから、実際に観たらガッカリしちゃいそうで、映画 観るのがこわくなったりもしたのだけど(笑) | |
それは言っちゃダメでしょ。淀川さんを嘆かせる発言だわ。 | |
で、この本も、そういう映画への愛情がたっぷり詰まってて よいのよ〜。この本読んでる日は、一日中ニマニマしちゃった。 | |
短編小説のあとに、写真つきで映画の詳しい解説が載ってます。 プイグの小説と映画の紹介、両方楽しめてこれは幸せ。ひたれるな〜。 | |
たくさん紹介されている映画のなかには、イタリア人も忘れか けてるイタリア映画、なんてマニアックなのもあるみたいだから、全部観たくなっても知らないけどね(笑) | |
<迷うけれども、ロッセリーニを選ぶ>
アルゼンチン、少ない年金で暮らしをするサルヴァトーレのもとに、故郷イタリアの親友ペッピーノが 訪れることになった。サルヴァトーレはペッピーノに手紙を出し、もしも自分の親戚が、自分になにか贈物 を託すつもりだったら、古いイタリア映画のビデオがいいとペッピーノに手紙を出す。 紹介映画:ロベルト・ロッセリーニ監督作品 「戦火のかなた」(1946)ほか | |
これはサルヴァトーレからの手紙、書簡形式の小説です。 何度かあった人生の選択肢で、ハズレくじばかりひいてしまったようなサルヴァトーレが選ぶのは、悲しい 映画ばかりなのよね。 | |
本当に贈ってもらえるのかどうかもわからないまま、欲しい映 画ビデオの題名を次々と挙げていくサルヴァトーレが痛々しくせつない。イタリアとアルゼンチンの時代背 景も透けて見えてきます。 | |
<パンと恋とノスタルジー>
サルヴァトーレの手紙は、ペッピーノが発ってから届いた。かわりに手紙を開けたサルヴァトーレの 甥ルチアーノは、サルヴァトーレが希望したのとは違う映画のビデオを贈ってしまったことを知り、 サルヴァトーレに手紙を書く。 紹介映画:ジーナ・ロロブリジダ主演映画 「パンと恋と夢」(1953)ほか | |
これも書簡形式。ルチアーノが選んでくれたロマンティックで ノスタルジックな映画こそが、サルヴァトーレが本当に観たい映画だったのよね。心がホンワカしてきたわ。 | |
典型的なイタリア美人のジーナ・ロロブリジダがすっごく綺 麗! 色気があって、かわいらしくて、知性も品の良さも感じられて、スタイル抜群。ロバに乗るジーナの 写真がよいわ〜。 | |
<あのミステリアスな面影>
名前は秘密の往年の映画スター女優がパリに戻り、親友ソランジュに電話をかけた。むかし、自分から 大きな役を二つも奪った女優イサ・ミランダの主演映画ビデオをイタリアで見つけ、彼女のことを話さずに はいられなくなったらしい。 紹介映画:イサ・ミランダ主演映画 「輪舞」(1950)ほか | |
これは会話形式。忘れられかけた女優が嫉妬心むきだしで思い 出すイサ・ミランダ自身もまた、アメリカに渡ったけど作品に恵まれなかった人、この皮肉。 | |
それでもイサ・ミランダを素晴らしい女優だったと言いきる、 この女優さんの潔さはステキよ。 | |
<「昨日の映画、ありがとう」>
ミラノに所有するアパートの売却を話しあうため、別れた妻や娘に会わなければならないわたしは、 ボローニャまでの長い列車の旅に発った。 紹介映画:「木靴の樹」(1978) 監督エルマンノ・オルミ | |
これは私たちにとっては初。手紙でも、会話でもなく、一人称 形式とはいえ、普通の小説のかたちをとったプイグ作品。 | |
せこくて、いやな性格の主人公と、純粋な心を持つ農民たちの 生活を美しく描ききった映画「木靴の樹」の対比が鮮やかだったな。 | |
<そう、女神みたいにきれいだった>
田舎の美容院で働くおかまのミランドリーナと親友テアは、往年の名女優シルヴァーナ・マンガノの 死が悲しくてならなかった。二人がそろうと、ゴシップから主演作まで映画スターの話はつきない。 紹介映画:シルヴァーナ・マンガノ主演映画 「にがい米」(1948)ほか | |
これは会話形式。プイグはおかまたちに、並々ならぬ愛情を抱 いているのね。老いたおかま二人の会話が可愛らしくて素敵です。 | |
息子の死に絶望し、立ち直れなかった女優の死を悼む、子供が 産めないおかま二人。いかにもプイグが好みそうな構図だな。 | |
<知られざる秀作>
年老いてはいるけれど、デンヴァーでイタリア文化を紹介する仕事を精力的に行っているアンナは、 どうしてもイタリアの名作コメディー映画のヴィデオを送ってほしくて、真夜中の三時、かつての不倫相手 のイタリア男性に電話をかけた。 紹介映画:マリオ・カメリーニ監督作品 「殿方は嘘つき」(1932)ほか | |
これも会話形式。年老いても元気で、失敗を怖れず突き進む女 は、妻ある男の愛人で表舞台に立てない女でもあったのね。 | |
だから、脚光を浴びることのなかったイタリアのコメディー 映画に、今度こそ注目を集めたいのね。ついでに、それを言い訳に男にも電話したかったのだろうけど、 男はわかってるのかな。 | |
<わがいとしのスフィンクス>
1941年、三十六歳で映画界を去ったグレタ・ガルボは、死を間近に迎えた不遇の映画監督 マックス・オフュルスを見舞い、1949年に撮ろうとしてお蔵入りしたカムバック映画の思い出を 語りあった。 紹介映画:グレタ・ガルボ主演映画 「椿姫」(1935)ほか マックス・オフュルス監督映画 「歴史は女で作られる」(1955)ほか | |
これはもう、ちゃんと説明する必要なんてないでしょ。ほれ、叫びなさいっ。 | |
グレタ・ガルボが出てくるのよ〜!
グレタ・ガルボが自分の言葉でしゃべるのよ〜!! グレタ・ガルボがオフュルスと映画を語っちゃうのよ〜!!! | |
もちろん、フィクションだけどね(笑) でも、ドキドキ、 ワクワクしてしまった。もちろん、グレタ・ガルボは溜息が出るほどかっこよく、素敵な女性でした。 | |