=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「ささやく壁」 パトリシア・カーロン (オーストラリア)
<扶桑社 文庫本> 【Amazon】
老女サラは全身が麻痺して動くことも、話すことも出来ない、寝たきりの身だった。だが、じつはサラは 頭のなかは正常に動いており、見ることも聞くこともできた。ただ、それを誰にも伝えられないだけだった。 サラが寝たきりなのをいいことに、姪のグウェニスはフィップスという夫婦に使っていない部屋を間貸し した。サラは壁伝いに、夫婦の怖ろしい殺人計画を聞いてしまう。 | |
これは設定としてはよくある話よね。 | |
うん、私たちも前にいくつかこういう話は読んでるね。 | |
私たちが勝手につけた「自分の墓発見もの」「事故後別人なりすましもの」と並んで、「植物人間じつは聞いてたもの」と名づけてもいいくらい(笑) | |
たださ、今まで読んだ似た話ってあまり好きじゃなかったでしょ。 | |
そうね、植物人間がだいたい暗くてグチっぽいし、身動きできず声も出ない苛立ちがこっちにも伝わってきてイライラしちゃうしね。 | |
その点、これはそういう厭なことろがなかったよね。 | |
うん、まず、サラが60歳の老女ってわりには、全体に受ける印象が若々しい。リアリティーに欠けるといえばそれまでなんだけど、老人臭が漂ってこなくて読みやすかった(笑) | |
それに他の登場人物も明るいしね。付き添い看護婦のブラグも悪気のない人でよくしゃべるし、なんと言っても屋敷からちょっと離れたフラットを借りた母娘の娘のほう、ローズがこれまたよくしゃべる。 | |
内容も明るいしね。ローズなんて大半が自分の母親と医者の愉快な恋物語だもの。 | |
あとから出てくるエズメイってサラの友人も、どこかで見たようなハリキリばあさんで、これまた好感が持てるし。いやな奴として出てくる姪のグウェニスも、そんなに陰湿でもなく、ただちょっとバカっぽいだけだし。 | |
で、サラが聞く殺人計画の対象はロデリック・パーマーって引退した往年のスターじいさんなんだけど。 | |
この人が超ステキよね。サラのこともすごくわかってくれて、ここでまた救われる。 | |
そうそう、それでまあ、陰湿にもならず、息苦しくもなく、最後まで読める。おもしろかったよね? | |
犯罪サスペンスってわりには、けっこうほのぼのとした雰囲気が漂う小説だったよね。 | |
そうだね〜。殺人計画をのぞくと、中年、老年の二組のカップルの恋、誤解されがちな少女が理解者に出会う話、それにアンティーク家具を巡るドタバタの諍い、意外とほんわか明るい話かも。 | |
読んでみないとわからないものだよね。 | |
そうだね、寝たきり老人が主人公の犯罪サスペンスって言われて、この内容は思い浮かばないかも(笑) | |
スピード感とか、緊迫感はなかったけど、これはこれとしてフレッシュな印象でおもしろかった。 | |
この作家さんはうしろの解説読んでて、ちょっと私たちの好みっぽい作品が1こあったから、今度はそれを読んでみましょう。 | |
読後感も爽やか、いかにも女性作家が書いたってかんじの、優しさのあるサスペンスでした。 | |
好きそうな方はどうぞ。 | |