すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「柔かい月」 イタロ・カルヴィーノ (イタリア)  <河出書房新社 文庫本> 【Amazon】
第1部 <柔かい月> <鳥の起源> <結晶> <血・海>
第2部 <ミトシス(間接核分裂)> <メイオシス(減数分裂)> <死>
第3部 <ティ・ゼロ> <追跡> <夜の運転手> <モンテ・クリスト伯爵>
にえ これは小説といえるのかな?
すみ ストーリーはあるような、ないような、とにかく不思議な本だったよね。
にえ それぞれ独立した話の短編集だけど、クフウフク氏が主人公 になってる話がいくつかあったりして、つながっているような、つながっていないような。そんでもって、 第1部はまだ小説っぽかったけど、第2部、第3部と進んでいくと、小説なのか、なんなのか(笑)
すみ 第1部だって普通の小説とは言いがたいんだけどね(笑)
にえ まずね、話は月のことから。月は地球と同じ惑星なんだけど、 地球が近いから引力に吸い寄せられて、地球の衛星になっちゃうの。その時、クフウフクはシビルとそれに ついて話してるんだけど……。
すみ お〜い、ちょっと待て〜!ってツッコミ入れたくなっちゃう ね。でも、小説のなかではそういう定理、当たり前のこととなってるのよね。
にえ で、月の引力に吸い上げられて、海の水がキュキュッと絞り あがっていくのを見ながら、月がぶつかってきたらどうしよう、いやいや、地球はかたいけど、月は柔ら かいから大丈夫よ、なんて会話をしています。
すみ うわわ〜、なんだこりゃ、おもしろーい、と思いつつ読みお わると、次は、クフウフクが鳥の女王と出会う話。
にえ この鳥の女王ってのがまた、クフウフクにのしかかるほど大 きいけど、クフウフクが隠せちゃうほど小さくて、と、これまた摩訶不思議な話。
すみ 第1部はおもしろかったな。で、このままホラ話的なのが 続いていくのかと思ったけど。
にえ 第2部からは、ストーリー性もなくなってきて、ついていくの が精一杯って感じになっていくのよね。
すみ とりあえず、まだクフウフク氏が主人公、今度は愛する女性プリシッラとのお話。
にえ といっても、二人が会話をしたり、デーとしたりするわけで はなくて、なんというか、解説のようなものが延々と。
すみ 彼女のどこに惹かれるのか、そもそも彼女は細胞のかたまり で、そういう僕もまた、46の染色体からできていて、そのうち23は父親から、残りの23は母親から 受け継いだもので……って感じの話。
にえ 恋愛を細胞から説明するって、おもしろいと言えばおもしろい んだけどね。でも、できればもうちょっとストーリー性があったほうが、単純に小説を楽しみたいだけの 私にはありがたかったような〜(笑)
すみ で、第3部になると、今度はなんだか襲われたり、追いかけら れたりするんだけど、これがまた解説的というか、なんというか。
にえ ライオンに襲われると、ライオンをLと置き換えて、矢はFと 置き換え、着地点をXとし……なんて話がはじまるのよね。
すみ それから喧嘩した恋人と擦れ違うという話が。もし相手がすで に出発しているとしたら、自分が相手の家に向かってしまうと、会えないことになる、というようなことがクドクドと。
にえ そんでもって、最後はモンテ・クリスト伯爵がイフ城の牢獄で、 脱獄を企てるファリア師のことを考える。
すみ なんだそりゃ〜!って言われそうだけど、そういう本なんだか ら、しょうがないのよね(笑)
にえ だから結局、好き嫌いの分かれる本なんじゃないかな。
すみ おもしろいことは、おもしろいよ。とってもおもしろいと思う。 でも、ストーリーのある小説を期待されたら困るな。
にえ あと、完全に理解し、把握していかないと気がすまないタイプ だと、200ページ程度の本だけど、なかなか読み終わらないかも。
すみ じゃあ、オススメはしないけど、読みたい方は止めませんってことで(笑)