すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「百年の孤独」 G・ガルシア=マルケス (コロンビア)      <新潮社 単行本> 【Amazon】
ホセ・アルカディオとウルスラのブエンディア夫婦を中心とした小集団は故郷を旅立ち、海をめざした。 しかし、海にたどりつくことはできず、豊かな土地を見つけ、そこで暮らすことにした。マコンドと名づけ た地で、ホセ・アルカディオは、公平に陽があたるように人々の家の場所を決め、同じように便利になるよ うに道を造った。やがて村になったマコンドには、磁石や望遠鏡などの目新しい品物を売りに来るジプシー たちが立ち寄るようになっていた。
にえ これもまた、手強そうな題名にひるんで、読むのが遅くなった本。
すみ ぜんぜん思ってたような小難しい話ではなかったよね。もっと早く読めばよかった〜!
にえ ストーリーは、マコンドという土地で暮らすブエンディア一家 の、ホセ・アルカディオとウルスラの夫婦から始って、七代めが生まれるところまでの時間を追っていく話。
すみ ブエンディア一家に賢者のジプシーのメルキアデスが加わり、 その家族に、ピラル・テルネラって娼婦からはじまる三人の娼婦、情婦が絡んでくるのよね。
にえ まず、小さいけど豊かなマコンドの村に、ジプシーのメルキア デスがやってくるの。メルキアデスは最先端の文明の利器をホセ・アルカディオに売り、ホセ・アルカディ オはそれがもとで、すっかり発明に夢中になっちゃう。
すみ ウルスラは家計を支えるために、動物の形をした飴を売るのよ ね。これがけっこういい商売になって、家は大きくなっていくの。
にえ ジプシーの売り物に空飛ぶ絨毯があったり、牧師がチョコレー トを飲んでほんのちょっぴり浮いたり、死んだ者が霊で現れたりって、いかにも南米的なホラ話がチラホラ 散りばめられてて、このへんの話では、南米の田舎の牧歌的な匂いが漂いまくってていいよね。
にえ いきなり、私が村長だ〜って名乗る男が現れたり、そういう 無茶な感じも南米らしかった。
すみ 結婚してないのに子どもができたり、情婦とのあいだに子ども ができたら、本妻がひきとって育てたり、そういう線ひきがキッチリしてない、性にたいする奔放さも 南米らしいなと思った。
すみ それから次の代で、自由党と保守党の戦争があって、それに ブエンディア家の人間も巻き込まれていく。
にえ いっきに血なまぐさい話になってくるよね。暗殺とか、処刑 とか、殺戮とか、やたら人が死んじゃう。
すみ そんな中でも自分の命をかえりみず、身内や親しい人を、体を 張って守ろうとするウルスラお母さんがかっこよかった。光ってたね。
にえ それから代を経て、鉄道がひかれてバナナ工場ができ、マコン ドは大きくなっていき、労働運動が起こりと、そういう変化に、ブエンディア家の人々が関わっていくの。
すみ マコンド百年史でもあり、ブエンディア家百年史でもあるようなお話なのよね。
にえ コロンビアの歴史でもあったよね。発展して、いろんな文化が 持ちこまれていくぶん自由がなくなっていく様は、世界のどことも共通する時代背景だったし。
すみ それにしても、奇をてらわず、時の流れとともに物語も進んで いくから、すごく読みやすかったよね。
にえ 時の経過とともに、いろんな人が登場するけど、みんな劇的 な人生で魅力的、スピードダウンはいっさいナシだったしね。
すみ あと、名前の問題だけど、おじいちゃんの名前をそのまま 孫につけたりとかするから、やたらと同じ名前が出てくるの。でも、名前の前に大佐ってつけたり、 小町ってつけたり、下につく苗字が変わってたりと工夫してくれてたから、メモとらなくても戸惑うような ことはなかった。
にえ で、ブエンディア家の人々なんだけど、みんな寂しい目をし てて、最初は大家族のなかでヌクヌク暮らしているようで、大人になると孤独を噛みしめるようになる。
すみ じつはドタバタしてる家族のなかで、たいしてかまってもらえ なかった記憶があるとか、一生だれにもわかってもらえないような心の傷を負ってるとかね。
にえ 孤独っていっても、アメリカの小説に出てくるような乾いた 孤独じゃないの、みんなもっと強烈な生き方をしてる。
すみ 人によっては発狂したり、何十年も家にこもって一歩も出てこ なかったり、そりゃもう凄まじい。あまりの悲惨さにこっちも胸をえぐられるような気持ちで読んだところ もあったけど。
にえ でも、幸せとはいえないかもしれないけど、まさに生きてるっ て人たちで、その押してくるような生命力ですくわれたよね。ラストでそういうことだったのかって、 はっとさせられる記述もあったし、大満足。素晴らしい!!
すみ 有名な本だけあって、ぜひ読んでほしい、読んでよかった1冊 でした。心に余韻がいつまでも残ります。もちろん、超オススメ。