=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「星を継ぐもの」 ジェイムズ・P・ホーガン (イギリス)
<東京創元社 文庫本> 【Amazon】
近未来のイギリスで、ある企業の理論研究主任をつとめていたヴィクター・ハント博士は、アメリカの 国連宇宙軍(UNSA)に呼びつけられた。そこで待っていたコールドウェル国連宇宙軍本部長は、まず、 ハントに見てほしいものがあるという。それは、月面の裏側で発見された死体だった。 高度な装置をつけた宇宙服のなかのその男の死亡推定時間は、5万年前。その秘密を解き明かすため、コー ルドウェルはハントに協力してほしいという。 | |
これはワクワクもののおもしろさだったね。 | |
最初から29ページまではどうしようかと思ったけど(笑) | |
うん、最初のほうは、もろSFチックな描写の連続で、眩暈が しそうだったけど、29ページを過ぎたら急にわかりやすい、おもしろい話になったよね。 | |
どうおもしろいのかっていうと、SFだけど、ミステリーっぽ い。ただし、殺人事件の犯人を捜すパターンじゃなくて、歴史とかの実際にあるものの謎を解いていくタイ プのミステリー。 | |
これが興味がないとは言わせないよって謎だよね。人間は どこから来たの? いまの地球はいつから始まってるの?って、子どものころ一度は考えたことのある ような謎。 | |
食いつきやすいよね(笑) | |
うん、ワクワクしながら読んでて、ひどく懐かしい気持ちになった。 | |
小学校の図書館で、「恐竜の謎」とか、「宇宙の秘密」とか ってオモシロ科学読本みたいなのを読んでたときのような気持ちになってくるよね。 | |
うん。え〜、宇宙ってビッグバンで出来たんだ〜とか、ティラ ノサウルスなんて恐竜、本当にいたんだ〜なんて、大感激してた、あの感覚。 | |
この本の中でも、生物学、考古学、化学、天文学などなど、い ろんな科学の分野からアプローチしていくんだけど、わかりやすいし、興味がわくような書き方をしてくれ てるから、自分も参加して、いろいろ考えちゃうよね。 | |
おもしろいと思うミステリーって、読んでて一緒に推理できて、 作家が用意した結論が、自分の予想をはるかに上回ってるものじゃない? もちろん、納得できる説明つき で。それが、更に納得したあとのどんでん返しまで用意してくれてあると、もう最高のミステリー。この本 も、そういった意味では最高のミステリーだよね。 | |
スタートは意外とベタなんだよね。地球外生物と思われる死体 を月面で発見。わりとありがち。スゴイのはそこからの発展のしていき方だよね。人類の謎、宇宙の謎、な んだか小説だってことを忘れて、物凄いことを知ってしまったような気分にさせられる。 | |
生物の進化の話にしても、考古学の発見の話にしても、 真実と虚構をこうもうまく混ぜておもしろおかしく話してくれると、疑うことを忘れてのめりこんじゃうよね。 | |
あとさ、あくまでも謎解きを前面に出してあるから、登場人物 は邪魔にならないように押さえてあったけど、そのチョコチョコっと垣間見える人間たちも魅力があったよ ね。 | |
おもな登場人物は、ハント、コールドウェル、それにダンチェ ッカーの3人って言っていいよね。 | |
ハントは決して恵まれた環境とは言えない出生から、科学者に なっていった、何事にも縛られないタイプ。コールドウェルはよけいなことを言いすぎないで、うまいこと 部下を誘導できる、理想的な上司。 | |
で、なんといってもダンチェッカー。この人は私の好きなタイプの登場人物だな。 | |
頑固で、自分の説を曲げない意地っ張りの、困りものの生物学 者なんだけど、自説に反するような事実を発見すれば、それはそれでネジ曲げずに、きちんと報告するの よね。 | |
そういう正直さって、人間くさくて愛せるな〜。 | |
あとさ、登場人物の年齢も、西暦何年の話かってことも、はっ きり明記してないのが小憎たらしいよね。 | |
とにかく、無駄なところに読者の意識が行かないように、夢中 になって読めるように工夫してあるよね。まんまとハメられた(笑) | |
ネタバレになっちゃうから詳しいことは言えないけど、つまん ない教科書や授業で忘れさせられてた、科学への興味や知ることの楽しさを思い出させてくれる、素晴らし い本でした。読んでない人にはオススメ。 | |
こういう童心に返り方もありだな〜。 | |