すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「アムステルダム」  イアン・マキューアン (イギリス)  <新潮社 クレストブックス→文庫本> 【Amazon】
まだ中年と呼ばれる年齢で、魅力的な女性モリーがアルツハイマー病を患い、死んでしまった。 モリーの葬式に集まる夫と三人の元恋人。モリーの死によって、かろうじて保たれていた四人の 人間関係はこじれ、憎しみは狂気へと進んでいく。
にえ すみませ〜ん。本の厚さや二人の読む速度の違いから、 ズレが生じてしまいました。フランス祭り第3弾は遅れます。
すみ だから変な宣言するなっちゅうの(笑)
にえ というわけで、『愛の続き』ですっかり惚れ込んでしまった イアン・マキューアンをお先に。
すみ これもおもしろかったけど、『愛の続き』ほどではなかった な。ブッカー賞は『愛の続き』であげ損ねたから『アムステルダム』になったんじゃないかって言われてる らしいけど、納得。
にえ 出来が悪いわけじゃないけど、結局は軽いジョークだよって 仕上がりなのよね。『愛の続き』の鬼気迫りながらも、なぜか愛せてしまう人々のほうがぐっときたね。
すみ 内容をいうと、とにかく夫にしろ、3人の元恋人にしろ、 みんな成功者であり、いやな人間でもあるの。
にえ 夫は資産家だし、元恋人は有名作曲家、新聞社の編集長、 大物政治家。でも、みんなどこか自分勝手で、自分の仕事のこと以外は無視したいってタイプ。
すみ モリーについての著述はほとんどないのよね。でもたぶん、 みんなモリーを愛していたから、モリーには良い面を見せていたんだろうし、弱いところも見せていた から、モリーは彼らを愛していたんだと思う。
にえ でも、モリーが死ぬと、互いへの嫌悪を募らせ、 それにもともと自分しか愛していない人たちだから、身勝手な行動をするようになる。
すみ それでますます互いが憎くなるのよね。
にえ とくに作曲家と編集長は、モリーが生きているあいだは親友 ぶってたから、こじれると深刻。
すみ 4人はそれぞれの弱みを握り、それを悪用し、自分のことは 反省しない。
にえ その辺はおもしろいんだけど、最後のジョーク的な悲劇は、 なんとなく物足りなさを感じたな。
すみ それに前半部分、作曲家が自分の作曲の経緯をつらつらと 語るところは、正直ちょっとうんざりさせられたね。
にえ でも、相変わらず削ぎ落とされた短い文章で、しかも 『愛の続き』の半分ぐらいしかないから、まだ堪えられたっていうか、これはこれでまあ、おもしろくは 読めたけど。
すみ ただ、最初にこれを読んでたら、続けて違う著作も読もうと 思ったかどうか、あやしいかな。
にえ う〜ん、あまりにも洗練されてて、ちょっと気取った感じ さえするもんねえ。
すみ で、この人ですが、私たちが読んだ2作の前は、かなり ショッキングな題材が多いらしくて、とくに短編だと、レイプ、小児愛、人肉食なんて扱ってるら しいんだけど、どうしますか?
にえ もうちょっと読んでみたいな。そういう作品のほうが、 この人の冷めた文体はあってるような気がするし。
すみ そうだね。で、内容いかんで感想をアップするかしない か決めますか。
にえ では、この作品は、成功者と呼ばれる正常人たちが、 狂気にたどりつく話を冷めた文章で書いてあって、私たちの評価は、まあまあだったってことで。
すみ これ読むんだったら、先に『愛の続き』を読んでほしいね。