=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「アムステルダム」 イアン・マキューアン (イギリス)
<新潮社 クレストブックス→文庫本> 【Amazon】
まだ中年と呼ばれる年齢で、魅力的な女性モリーがアルツハイマー病を患い、死んでしまった。 モリーの葬式に集まる夫と三人の元恋人。モリーの死によって、かろうじて保たれていた四人の 人間関係はこじれ、憎しみは狂気へと進んでいく。 | |
すみませ〜ん。本の厚さや二人の読む速度の違いから、 ズレが生じてしまいました。フランス祭り第3弾は遅れます。 | |
だから変な宣言するなっちゅうの(笑) | |
というわけで、『愛の続き』ですっかり惚れ込んでしまった イアン・マキューアンをお先に。 | |
これもおもしろかったけど、『愛の続き』ほどではなかった な。ブッカー賞は『愛の続き』であげ損ねたから『アムステルダム』になったんじゃないかって言われてる らしいけど、納得。 | |
出来が悪いわけじゃないけど、結局は軽いジョークだよって 仕上がりなのよね。『愛の続き』の鬼気迫りながらも、なぜか愛せてしまう人々のほうがぐっときたね。 | |
内容をいうと、とにかく夫にしろ、3人の元恋人にしろ、 みんな成功者であり、いやな人間でもあるの。 | |
夫は資産家だし、元恋人は有名作曲家、新聞社の編集長、 大物政治家。でも、みんなどこか自分勝手で、自分の仕事のこと以外は無視したいってタイプ。 | |
モリーについての著述はほとんどないのよね。でもたぶん、 みんなモリーを愛していたから、モリーには良い面を見せていたんだろうし、弱いところも見せていた から、モリーは彼らを愛していたんだと思う。 | |
でも、モリーが死ぬと、互いへの嫌悪を募らせ、 それにもともと自分しか愛していない人たちだから、身勝手な行動をするようになる。 | |
それでますます互いが憎くなるのよね。 | |
とくに作曲家と編集長は、モリーが生きているあいだは親友 ぶってたから、こじれると深刻。 | |
4人はそれぞれの弱みを握り、それを悪用し、自分のことは 反省しない。 | |
その辺はおもしろいんだけど、最後のジョーク的な悲劇は、 なんとなく物足りなさを感じたな。 | |
それに前半部分、作曲家が自分の作曲の経緯をつらつらと 語るところは、正直ちょっとうんざりさせられたね。 | |
でも、相変わらず削ぎ落とされた短い文章で、しかも 『愛の続き』の半分ぐらいしかないから、まだ堪えられたっていうか、これはこれでまあ、おもしろくは 読めたけど。 | |
ただ、最初にこれを読んでたら、続けて違う著作も読もうと 思ったかどうか、あやしいかな。 | |
う〜ん、あまりにも洗練されてて、ちょっと気取った感じ さえするもんねえ。 | |
で、この人ですが、私たちが読んだ2作の前は、かなり ショッキングな題材が多いらしくて、とくに短編だと、レイプ、小児愛、人肉食なんて扱ってるら しいんだけど、どうしますか? | |
もうちょっと読んでみたいな。そういう作品のほうが、 この人の冷めた文体はあってるような気がするし。 | |
そうだね。で、内容いかんで感想をアップするかしない か決めますか。 | |
では、この作品は、成功者と呼ばれる正常人たちが、 狂気にたどりつく話を冷めた文章で書いてあって、私たちの評価は、まあまあだったってことで。 | |
これ読むんだったら、先に『愛の続き』を読んでほしいね。 | |