くりすますきす

 

 

「あ。俺、無理」

 クールすぎるほどあっさり言われた七原の言葉に、一瞬意識が飛びそうになった。

 ちょっと待て?

 そういう言葉が出てくるとは、予想してなかったんですけど。

 多分、妙に間抜けな顔をしている。

 この、三村信史ともあろう者が、そんな一言で。

「な、何で?」

「慈恵館で過ごすから」

 まるで、当然だろうとでも言うように、きっぱり言われる。

 そりゃ、そんな事だろうとは思ったけどさ……

 だからあえて言ったんだろ?

『24か25、空いてないか?』って。

 どっちか空いてれば、そりゃあ色んな事……

「24日の夜から、ずっとそこで過ごすのが恒例だって、言わなかったか?」

「……じゃあ、俺と過ごすのは……」

「無理」

 ……

 なんか、サクッと心を一刀両断された気分だ……

「24日の昼間は?」

 なおも食い下がる俺に対し、七原は冷たい言葉で答えた。

「だから、その準備」

 そんな事、ちょっと考えれば分かるだろう、とでも言わんばかりの目だ。

 慈恵館の子供達と一緒に過ごす……ってのも考えた。

 でも、違うだろ!?

 クリスマスだぞ!?カップルのイベントを、何で子供らと一緒になんか……

 目に見えて落胆の色を見せた俺に対しても、七原は冷たい。

「三村も、家族で過ごせば?」

 ……ヤなこった。

 

 

 

 全くもって、つまらない一日だ。

 七原のいないクリスマスなんて、餅の入ってない雑煮くらいつまらない。

 それ、雑煮じゃないだろ。大体雑煮の語源ってなんなんだ。

 あーあ、今頃七原は慈恵館でクリスマスパーティの準備かー……

 ……

 …………

 ……国信も一緒に住んでるんだよな。

 って事は、毎年国信と一緒に過ごしてるって事だよなぁ?

 プレゼント交換なんかもしてるんだよなぁ!?

『秋也、今年のクリスマスプレゼントはこれにしてみたんだ』

 国信はそう言って、事前に調べ上げた、七原の好きそうな物を渡す。

 俺ははっきり言って、七原とは友達(恋人)だが、国信とは友達にはなれないと思っている。

 あいつは七原を狙っている。

 今日まで七原が無事だったのは、国信に度胸が無いからだ。

 その度胸の無さに免じて、俺は国信を「いないもの」として考えていた。

 俺の力を使えば、その存在自体を亡き者にする事も可能だが、まぁそこまではしないでおいてやる。

 七原が泣く顔も見たくないしな。

『うっわぁ!マジで!?これ欲しかったんだよ〜!ありがとな、慶時!』

 七原ってば、そんなに嬉しそうな顔して……

 目の前にいる男が、羊の皮を被った狼だって事に、まだ気付かない。

『でも俺……どうしよう。今年、プレゼントが用意出来なかったんだよ……』

 悲しそうに言う七原に向かって、国信は微笑みかける。

 オイ!肩に手なんか置くんじゃねぇ!!

『良いんだよ、秋也。今お礼を貰うから』

 そう言って国信は七原に顔を近付け――

「郁美っ!出かけるぞっ!」

 

 

 

 気が付いた時、俺は郁美を連れて、慈恵館の前に立っていた。

「……出かけるって、ここに来るために無理矢理連れ出したの?おにいちゃん」

 郁美の冷ややかな目線に答える事も出来なくて、俺は歩き出す。

 想像の中の七原を助けに来たなんて言えはしない。(そんな事を言ったら、また郁美に精神病院送りにされる)

 ま、せっかくここまで来たんだし?会わないってのはおかしいでしょ。

 七原だって、郁美がいれば俺を追い払う事も出来ないだろうしな。

 咄嗟の思いつきとは言え、我ながら素晴らしい。さすが俺。

 何やら慌しい空気を放つ慈恵館を覗き込み、俺は七原を探した。

 まぁ探すまでもなく、俺の七原レーダーには七原の居場所がバッチリと分かってはいるんだが。

「おにいちゃん、シューヤくんいたよ」

 郁美の声は聞こえなかった事として、俺は七原の方に歩みを進める。

 七原は子供達と楽しそうに飾り付けの準備などをしていて、俺の存在には気付いていないようだ。

 よし。それならこのままそっと近付いて行って、目隠しでもしよう。そして、耳元で「だ〜れだ♪」とでも言ってやる事にする。

『そ、その声は三村?』

 慌てる七原に向かって、

『お前に会いたいと思っていたら、足が勝手にここに向かってたんだ』

と言うと、七原は頬を染めて、俺に――

「シューヤくーん!」

 ――郁美……俺はお前に何かしたか?

 俺の隣で、七原に向かって手を振る妹を横目で見ると、郁美はチラリとこちらに視線を送り、ニヤリと笑った。

 まるで、変態はすっこんでろとでも言いたげな目だね、郁美。

 ……勘の鋭い子って、おにいちゃんあんまり好きじゃないな。

 七原は目を丸くして、郁美を見つめた。

「あれ?郁美ちゃん!どうしたの?――三村まで……」

 俺はオマケか?

「シューヤくんに会いたくなって……足が勝手にここに向かってたのよ」

 それは俺のセリフ……

「ははっ、ホントに?嬉しいよ」

 七原は頬を染めて……

 俺に言われるはずだったのに……

「今ちょっとだけ手が空いたから、お茶でも出すよ。その辺で待っててくれないかな」

 七原はそう言って、台所の方へ行ってしまった。

 郁美を連れてきたのは、間違いだったかもしれない……

「……おにいちゃん」

 そんな俺の心を見抜いたのか、郁美が溜息をつきながら俺を見る。

「私をダシにした罰だからね」

 小さくそう言って、郁美は俺の背中を押した。

「行ってらっしゃい」

 まったくもって、この妹には敵わない。いつも。

「……サンキュ」

 

 

 

 俺は、お茶の準備をしている七原に、背後から近寄った。

「待ってろって言ったのに」

 七原は振り返りもせずにそう言う。

 俺が来る事なんて、分かっていたかのように。

 気配を感じたのもあるんだろうけど。

 まぁ、そこはそれ。愛の力ってやつで。

「七原に、クリスマスプレゼントがあったからさ」

 そう言うと、七原が困ったような顔をして振り返る。

「別にいらない。俺、三村にプレゼント用意してないし」

「別に良いって」

 そのまま、ゆっくり七原に顔を寄せる。

「何……」

 七原の言葉を、唇を重ね、そのまま飲み込んで。

「……キス、したかっただけだから」

 驚く七原に向かって、もう一度。

「クリスマスに、七原とキスしたかっただけだから」

「……それがプレゼント?」

 呆れられたかもしれない。

 お前はいつもそれだ、なんて。

「物よりも、プレゼントしたかったモノ、だから」

「……はぁ」

 溜息。

 嫌だったのか、やっぱり。

「……じゃあ、俺からも同じもので良いよな?」

 そう言って、七原は――

 

 

 

 唇を重ねるだけのキス。

 繰り返し、繰り返し――

 

 

 

END.



…なんだか凄く、よく分からない小説駄文になってしまったような気がします…
シリアスなのか、ギャグなのかもよく分からなかったりするんですが…
これは、遅くなってしまったけれどひなこへ。
1周年にイラスト貰ったりとかしたのに、こんなに遅くなってしまって申し訳ない…
その上、こんなもので申し訳ないのだけれども…

…スランプ…?