|
せめて少しでも幸せになれるよう、願いを込めて。 修学旅行 ああ、こういうのも良いな、なんて。 ちょっとしんみりしていたって言うのに。 この、バカはっ! 「七原ァ!!」 いきなり顔面に飛んで来た旅館の枕を、わしっと掴んで。 思いっきり、投げつける。 ぶんっ 風を切る音が響いて。 見事に、笑い転げていた秋也の顔面にヒット。 「ぶはっ」 「ザマァ!」 信史は握った拳の親指を、下に向ける。 それを見ていた豊と慶時は、声を上げて笑って。 一人、窓辺で外を見ていた弘樹は、苦笑しながら、秋也を見る。 秋也は、投げつけられた枕を抱えながら、赤くなった鼻を抑えた。 が、すぐ我に返ったように枕を投げ返して。 「修学旅行の枕投げなんて、定番すぎてやる気にもなんねーって、言ったのはお前だろっ!」 「だから何で俺を巻き込むんだっ」 今度はしっかりとキャッチしたザ・サード・マン三村信史が、それを再び秋也に投げる。 「一人でボケっとしてるからだろ!」 ワイルドセブン七原秋也も、負けじと受け止めて、枕はまた信史の元へ。 「一人でボケっとしてんのは、俺じゃなくてあいつだ!」 そう言って、信史は方向転換。 不意打ちで弘樹に投げられた枕は、あっさりキャッチされた。 「誰がボケっとしてるって?」 少しだけ得意げな、弘樹の顔面に。 横から参戦した豊の枕が直撃する。 「あははははっ!油断するからだよ」 楽しそうに笑う豊へ、今度は慶時の枕が。 ぼろぼろになるまで遊んだ、修学旅行の、夜―― もちろん、ぼろぼろになったのは旅館の枕。 「せっかく風呂入ったのに、また汗かいたっつの。気持ちワリィ……」 ぶつくさ言う信史の声を無視して、それでも5人仲良く大浴場へ。 時間は少し遅いせいか、さっき来た時よりずっと空いていた。 「やっぱ凄いよなー、杉村」 「秋也、人の裸マジマジ見たら変態みたいだって」 慶時が苦笑しながら注意すると、秋也はサっと顔を赤らめた。 「だ、だって慶時!杉村って腹割れてんだぜ!?」 「えっ?マジ?!」 さっきの言葉はどこへやら。 弘樹の立派な腹筋に、慶時も感嘆の声を上げる。 「あのなぁ……」 呆れたように弘樹は呟き、さっさと湯船に浸かってしまった。 「七原クン?年頃のオトコノコはね、ちょっと鍛えれば腹くらいすぐ割れますよ?」 残念そうな顔をする秋也を、馬鹿にしたように笑いながら、信史は弘樹の後に続く。 「え!?三村も割れてんの!?」 そういう話とは無縁の豊と慶時は、シャンプーの泡で髪型をいじって遊んでいる。 それも楽しそうだったのだけれど。 「力入れればね〜」 のほほんと、気の抜けた声で答える信史の言葉が、どうしても信じられなかった。 「見せて!」 ザバっと音を立てて、秋也が弘樹と信史のいる湯船に飛び込んで来る。 「バカ!ちゃんと洗ってから来いよ」 「うっさいバカ三村!」 「つか、じろじろ見んな!変態かお前は!」 ぎゃーぎゃーとうるさい友人達に、弘樹は溜息をついた。 それから、微笑ましくてつい笑ってしまう。 「あっ、三村がバカやってるから杉村に笑われたじゃんか!」 「しつっこいんだよお前は」 「別に減るもんじゃないだろー」 「減るから嫌だ」 そんな言い合いをしているうちに、泡で遊ぶのに飽きたのか、豊と慶時が湯船に入って来る。 「シューヤってば、まだやってんの?」 「気になりだすと止まらないんだよ」 豊の呆れた呟きに、慶時が苦笑しながら答えて。 いい加減にウザったくなって来た信史は、両手を上げた。 ――ホールドアップ。 「分かった分かった。見せてやるって」 ちゃぷん、と、湯船の中に沈んで行く信史の手を目で追う秋也。 「ちゃんと見てろよ?」 「おぅ」 目に飛び込んだのは、信史の組まれた手から発射された、湯。 「うあっ!」 「何でひっかかるかな。この単純セブン」 まさかこんな単純なテに引っかかるとは思っていなかった信史は、呆れたように秋也の顔を見る。 それが、余計に癇に障って。 「み・む・らぁーっ!!」 怒りに任せて、ザバっと湯船から立ち上がる。 「バっ……急に立ち上がったらお前……!!」 「うわっ」 バッシャーン 盛大な、水飛沫を上げて。 足を滑らせた秋也は、そのままぶくぶくと湯船の中へ。 周りの4人は、頭からお湯を被って、ただ呆然と。 しかしそれも一瞬で、お互いに目を合わせると、一斉に笑い出した。 そして、浴場に秋也の悲鳴が響き渡った…… 「ごめんってば、もう勘弁して!!」 部屋のベランダに出て、夜景でも眺めながら。 火照った体に、ポカリを流し込む。 喉を通る、冷えた液体が心地好くて。 「ふぅ」 と、小さく溜息。 「三村」 かけられた弘樹の声に、目を向ける。 秋也達は、また布団の上で笑い転げながら、無邪気に遊んでいた。 慈恵館ではいつもああなのかと思いつつ、信史は苦笑する。 楽しそうだとは思うけれど、参加したいとは思わなかった。 おそらく弘樹も同じなのだろう。 だからこうして、外に出て来た。 「良かったな」 何が、なんて、聞くまでもなかった。だから。 「そうだな」 と、信史は答えて、夜風に当たる。 修学旅行なんてと、正直少し、馬鹿にしたところもあったのだけれど。 ただこうやって、何も考えずに遊ぶ事も、悪くないのかもしれない。 「なぁ、杉村。あれを見てると、七原や国信がどうやって育って来たかが分かるよな」 「どうすればあんなに真っ直ぐ育つのか、謎がひとつ解けて良かったじゃないか」 2人はそう言って、笑った。 修学旅行中、毎晩こうなのかと思うと、憂鬱でもあり、楽しみでもあり…… そんな、旅行になるはずだった。 「――今日は、みなさんにちょっと殺し合いをしてもらいます」 こんな事に、なるまでは。 END. 当サイトの、2万HIT&2周年の参加型企画に協力して下さった海原都さまへv お礼の気持ちをたくさんこめてプレゼントしようと思い、リクエストがあれば、とお尋ねしたのです。 リク内容は、『37の住んでいる世界が大東亜共和国ではなく今私たちが生活している”日本”だった場合の修学旅行』…はい、お気付きの通り、リクから微妙にずれています(汗) この話の最初の一文は、私の気持ちなのです。 そこから書き始めました。ストーリーは何も考えず、ただ七原達に勝手に動いてもらおうと思って。 修学旅行の場所は もしかして、初めてかもしれませんね。ノーマルな彼等を書いたのは(笑) 幸せに、してあげたいと思いました。せめて、少しでも。 ですが、やっぱり彼らとプログラムを切り離す事は、私には出来ませんでした… なので、オチがああなってしまいましたが、よろしかったでしょうか、都さん(びくびく) よろしければ貰ってやって下さいねv |