Silent Morning






 朝、きいんとした寒さで目が覚めた。
 白い息を吐きながら、まだぼやける意識で辺りを見回す。いつもの見慣れた二段ベッドの低い天井じゃない、広がる視界にふと違和感を覚え、ああそうだ、ここは慈恵館じゃないんだ、と思い出した。
 隣りを見ると、ずっとそこにいたはずの三村の姿がなかった。思わずがば、と起き上がって、頭の奥がずきりと痛むのを感じる。ああそうだ、昨日イブだからってふたりで酒飲んで、そのままベッドになだれこんで―・・
 起き上がろうとして、自分が何も身につけていないことに気づくと、秋也は周りを見渡した。確かその辺に脱いでほったらかしたままだったと思うが―・・いかんせん、飲みすぎてあんまり記憶がなかった。ビールの缶やらお菓子の袋やらが散らかる中、自分の服は見当たらなかった。秋也は諦めて、布団もかけずにぱたん、とベッドに横になった。酒が残っているのか、それとも行為の余韻かはわからないが、何だか妙に暑くて、ひんやりした空気が気持ち良かった。また眠りに落ちそうになった意識の中、三村の声が頭に響く。

「風邪ひくぞ、七原」

 ぱち、と目を開けると、三村はジーンズにパーカを羽織っただけの姿で、床に散らかったごみをよけながら歩くと、ベッドに腰かけた。その行動を目で追っていると、鼻にコーヒーの香りが届いた。三村が、ん、と言ってコーヒーの入ったマグカップを寄越してきた。秋也はのそのそと起き上がると、マグカップを受け取った。何をいうでもなく、コーヒーにはミルクと、砂糖が一杯入っていた。
 秋也が眠そうに目を瞬かせながらそれを飲んでいると、同じくまだ眠そうな様子の三村が言った。

「すげえ目の毒なんですけど。服着ない?七原くん」
「暑いから後でいい。朝からサカるな、馬鹿」
「朝だからだろ?ベッドの脇に落ちてるよ、服」

 秋也が下に手を伸ばすと、確かにシャツが落ちていた。真下に落ちていたので、死角になっていてわからなかったらしい。カップを三村に渡して、のろのろとそれを羽織った。ここでまた、何だかんだ言われて押し倒されるのはごめんだった。もう日は昇っているし、酔っていて覚えてはいなかったけれど、体はかなり疲れていた。
 まだ鈍く痛む頭を抑えながらコーヒーを飲んでいると、三村がくつくつと笑い出した。

「・・なんだよ」
「いや、何か猫みたいだなと思って」
「ネコぉ?」

 頭くしゃくしゃになってるし、寝起きで舌っ足らずになってるし。三村はそう言って笑った。いーよ勝手に言ってろよ、と適当に流すと、コーヒーを飲み干してベッドサイドにカップを置いた。

「あー、まだ眠い。今何時?」
「今?もうすぐ6時になるとこ」
「なんだ、寝てからそんな時間たってないんじゃん」
「寝ててもいいぜ。8時ごろまた起こすから」

 秋也は少し迷ったが、もう一度寝てしまうととても8時には起きられなさそうな気がしたので、いやいいよ、と断わっておいた。三村は頷いた後、エアコンのスイッチを入れた。

「やっぱ寒い。俺も暑かったんだけど駄目だ」
「12月だしな」
「ていうか、ホントにあんなんでよかったわけ?クリスマス」

 いいのいいの、と秋也は言った。三村はどっか美味いもんでも食べにいくか、などと言っていたのだが、秋也がそれを断わった。金がそんなにあるわけでもないし、あんまり派手に祝うようなことはしたくなかったのだ。三村の両親らが旅行に行っているのをいいことに、酒やつまみなどを持ってきて、一晩中飲んで騒いだ。三村はそうかあ?などと言いながら、秋也に背を向けて座りなおした。秋也は三村のいつもより落ちた髪の毛を眺めながら、呟いた。

「三村はそういうクリスマスがよかった?」
「別にどっちでもいいけど、七原がよければ」
「俺はこっちのがいい」

 慈恵館でやるクリスマスは、みんなでケーキ囲んでツリー飾り付けて、みんなでプレゼント交換みたいなもんだったから、あんまりロマンチックなクリスマス、っていうのに慣れてない。秋也がそう言うと、三村はくるっと後ろを振り返って笑った。

「今からやってやろうか。すっげーロマンチックなクリスマス」
「うわイヤだ、似合わねー」
「なんだとコラ、もう一回言ってみなー」

 三村が押し倒そうとしてきたので、秋也はぎゃあ、と叫んで笑った。ベッドの上でしばらくじゃれあった後、三村はたまにはこんなクリスマスでもいいよな、と言った。
 いつになくくつろいだ様子でベッドに座る三村を見て、秋也はなんだかやけに幸せな気持ちになった。なんだかむずむずと笑いがこみあげてくるような感じがして、耐え切れずに三村の背中に抱きついた。三村は目をぱちぱちとさせながら、後ろの秋也を振り返った。

「七原?」
「確かにそうだ、うん」
「何がだよ。勝手にひとりで考えて納得すんな」
「いや、だからさ。朝だから」
「朝だから?」

 秋也はにいと笑うと、顔だけこちらに向いている三村の唇に吸い付いた。三村は驚いたように目を見開いた後、すぐに笑いながら芝居がかってキスをしてきた。ふたりで堪え切れないような笑いをくつくつと漏らしながら、ベッドに倒れこんだ。

「な、言ったろ?」
「ああ」

 エアコンで暖まってきた部屋の中、二人はしばらくけらけらと笑いながら、互いの服を脱がしにかかった。秋也は笑いすぎて涙のうかんだ目で、言った。

「たまにはいいよ、クリスマスプレゼントだ」
「大きく出ましたね、七原くん」

 そりゃあ滅多にない俺からのお誘いですから、そう言って秋也はまた肩を揺らした。もつれるように抱き合って、ひとしきり笑うと三村は言った。

「プレゼントは何時間有効?」
「有効期限は今日いっぱいでございます」
「それじゃ、めいっぱい楽しませてもらうことにするよ」

 オーケイ、と秋也が言うのと同時に、どちらからともなくキスをした。
 日が高く昇るまで、二人の笑い声は部屋に響いていた。










ああああーようやく更新できたあああ(心境)
はい、久しぶりに37でございます。
こんなに更新の間があってもうちのメインです。
季節柄、クリスマスもので。早すぎました・・?
20000ヒット御礼っつうことで、すきなだけお持ち帰りくださいませ〜。
あの、大丈夫ですよねこれ?子供が読んでも平気ですよね?(汗)
というわけで久しぶりの37でお礼。
20000オーバーありがとうございました!




「v.s.」20000オーバーの記念小説を、頂いてきました!
誘い受け七原に悦vv
七原が三村にキスするシーンとか…素敵です〜!
二人でいちゃいちゃしながら、ほのぼのしている感じが、凄く好きですv
これだけ素敵なクリスマス小説をお書きになられるなんて…
あぁ、やはり尊敬…!

20000HITおめでとうございます!
これからも頑張って下さい!