モラル

 

 

 頭がおかしくなりそうだったから、これは、考えすぎの知恵熱というやつなのかもしれない。

 秋也はベッドに横になって、そんな事を考えていた。

 明日は学校に行けないだろう。

 いつもなら残念に思っているかもしれないが、今の秋也にはありがたかった。

(三村には……会えない……)

 何を話したらいいのか分からない。

 目を見れるかどうか分からない。

 彼が何のつもりであんな事を言ったのか、分からなかった。

 

『七原の事が、好きなんだ』

 

(いつもの冗談なんだろう?冗談だって、言って……くれよ……)

 あの言葉がいつもと同じような冗談だったなら、こんなにも楽な事はないのに。

 秋也は、あれが冗談でない事ぐらい分かっていた。

 あの真剣な目も、声も、秋也の頭にこびりついて離れない。

 涙が出てくる気分だった。

 目が熱い。

 どうしたら良いのか分からなくて、考えたってどうにもならないと、分かっているのに考えてしまった。

 信史の言葉は、嘘でも冗談でもなくて、それなら、あれは本気で……

(だから?俺に何が出来るんだよ?俺は男だし、三村だって男だ。こんなのおかしい。こんなのは異常だ。こんなのは……)

 信史の気持ちを否定する事なら、いくらでも出来る。

 でもそれは、単なる逃げ。

 信史は真剣な気持ちを伝えてくれたのに、向き合う事の出来ない自分が、とてつもなく嫌だった。

(三村……)

 眠るまで、信史の事しか考えていなかった。

 

 

(何で、こんな事に?)

 秋也はいくらか元気になった頭で考えていた。

 一晩眠ったらずいぶん楽になった気がする。

 あくまで体だけの話だが。

 朝は慶時が心配していて、「早く帰るからな」と言っていた。

 安野先生は子供達の世話で忙しいから、今日はゆっくり眠っていられるはずだったのに。

 秋也は布団で顔を隠すようにしてその男を見た。

 今、学校では授業中のはずだ。

 それならば何故、この男はここにいるのか。

 多分彼は、秋也がそっと見ている事を知っている。

「熱は?」

 信史が、秋也のベッドの傍に座って言う。

 秋也は首を振った。

 「そっか」と信史はつぶやいて、決まり悪そうに頭を掻く。

「昨日、悪かったな、突然あんな事言って。だからもしかしたら、俺のせいかと思って……」

「……違う」

 秋也は小さく言って、目を閉じる。

 何を言っていいのか分からなかった。

 けれど、考えているのは自分だし、悩んでいるのも自分。

 熱を出したのも自分だし、信史の顔をまともに見られないのも自分だ。

 決して、信史のせいだとは思わない。

「七原……」

 信史が何か言いたげに秋也を呼ぶ。

「俺……」

 しかし、言葉は続かなかった。

「……帰る、な」

 秋也は止めなかった。

 信史は止まらなかった。

 扉の閉まる音が聞こえて、秋也は、自分が泣いている事に気付いた。

 

 

 俺は男で、三村も男で、あいつは俺を好きだと言った。

 異常。

 変。

 おかしい。

 非常識。

 だから……

 だから……?

 ……だから……

 こんなのは、モラルに反して、いる……

 

 

To be continued...



『SECOND』シリーズ第2話は、やたらと弱気な三村のいる話となりました。
あまりに暗すぎて、自分でも少し嫌になります…(なら書くな)
なかなか進展の無いこのシリーズ、残るはあと2話です。
悩む七原と弱気な三村の恋の行方はっ!?
次回へ続くっ!(笑)