後悔

 

後悔

 

 

 秋也は、部活を早めに終わらせて、体育館に来ていた。

 今日は練習試合があるはずだった。もちろん、バスケ部の。

 こんな時、あの男はやたらと活躍している。

 それを見に来た、というわけではないのだが……そうなのかもしれない。

 秋也の中で、それを素直に認められない何かがあったのだ。

 試合を見に来ている女の子のほとんどは、おそらく秋也と同じなのだろう。

 すなわち、見に来ているのだ。試合ではなく、三村信史を。

 ――歓声が、聞こえた。

 信史がシュートを決めるたびに声をあげていたのでは、喉を痛めてしまうんじゃないかと秋也は思う。

 それでもかまわないのだろう。

 自分の存在を、少しでも信史に伝えようと、一生懸命な女の子達。

 素直で可愛らしく……なんて憎たらしい。

 秋也は体に力が入っているのに気付いて、フッと力を抜いた。

 こんな自分は嫌いだった。

 ――嫉妬。

 いつからか、友達であるはずの信史に対し、友情とは違う感情を抱いていた。

 それが、異常なものである事は知っていて、知っていたから、誰にも言えなかった。

 ずっと一緒に暮らしてきた国信慶時にでさえも。

 こんな、試合のある日の帰りは何が起こるのか、秋也は知っている。

 信史の元に女の子が向かう事。

 そして、秋也には決して出来ない――してはならない――「告白」をする事を。

 自分にそれを止めることは出来ない。感情は自由だ。

 好きだという想いを、ただ伝えるだけ。その勇気が秋也にはなかった。

 ――勇気、なのだろうか、それは。

 信史を困らせるだけだという事は目に見えていた。

 彼は自分の事を友達だと思っているのだから。

 信史を困らせたくない……それは、単なる逃げ。

 傷付くのが怖いだけの自分。

 秋也は、そんな自分が嫌いだった。

 だからと言って、何かが変わるわけじゃない。

 信史が本気で女の子を好きにならない事。

 それをただ祈る事しか、出来ないのだから。

 なんて、惨めなのだろう。

 ――また、歓声。

 何が好きかなんて分からなかった。

 かっこいいからとか、頭が良いからとか、性格がいい(?)からとか、理由は様々にあるだろうが、そのどれも、当てはまらない気がした。

 強いて言うなら……そう。三村信史という存在そのものに、秋也は惹かれたのだ。

 信史が、女の子たちに手を振っているのが見える。

 多分、秋也の存在には気付いていない。

 今日はどの女の子と付き合おうか、なんて考えているのかもしれない。

 秋也の胸が、小さく痛んだ。

 こんな自分は知らない。

 こんなにも弱くなってしまったなんて。

 気にしないふりだって、出来るはずなのに。

 見つめている。何も言わずに、ただ。そんな事しか出来ない、消極的な自分。

 でも、分かっていたって何も出来ない。

 信史が笑う。秋也に向かって。

 どうやらやっと秋也の存在に気付いたらしい。

 秋也は無理に笑顔を作って笑い返す。

 信史の笑顔を見ると、自分の汚らしい心を浮き彫りにされたような感じがして、辛かった。

 側にいても良いんだろうか。

 こんな、異常な気持ちを抱いた自分が、信史の側にいても。

 信史に知られたら、どうすれば良い?

 知られないようにするしかないのだ。なんとしてでも。

 そうしたら、ずっと側にいられる。友達のまま、側にいられる。

 

 

 会いたい、会いたい、会いたい。

 その気持ちしかなかった。

 他には何もなかった。

 こんな状況で、こんな事になって、だからこそ、余計に会いたかった。

 信史と……三村と一緒なら、こんな「ゲーム」から脱出できると思ったし、何より、こんな時に会えたらどんなに……

 

 それなのに。

 

 ――あぁ。言っておけば良かった。

 秋也は傷付いた体をベッドに横たえて思っていた。

 自分を助けてくれた委員長の内海幸枝は、秋也の意識が戻った事を伝えに行っている。

 涙なんて、出なかった。悲しみを通り越して、心は空虚だった。

 こんな事になる前に、ちゃんと伝えていれば。

 例え、自分の気持ちが受け入れられなくても、言っておけば良かった。

 こんなに後悔するくらいなら。

 でも、もう遅い。

 どんなに後悔しても、どんなに想っても、もう、信史はいないのだから。

 ……どこにも、いないのだから……

 

 言っておけば良かった。後悔するくらいなら。

 会いたい、会いたい、会いたい……

 でも、もう二度と会えない……

 

 

END.



どうやらあさこは、片思いネタが好きらしいです。
きっと自分が…ゲふっ、がフッ…
でも、これだとミムの気持ちって分かりませんよね。
もっとラブラブなのが書きたい…
きっと、自分が経験すれば書けるんでしょうねぇ…(遠く)
これ、字が多くてセリフないんですよね。
読むの嫌になりませんでしたか。
あさこは、見直しの最中、何度も意識が飛びそうになりました。
自分、こういう字の多いのが苦手なんで…
あぁ、だからいつも簡単な文章なのか。
それをキレイと言って下さる方がいらっしゃるから、なんだか申し訳ない(汗)

…言い訳長ッ!