かぐや姫

 

かぐや姫

 

 

 満月の日にお月見をするのは、月がキレイだからなんだろうか。

 

 三村が、「今日は十五夜だから、うちに来いよ」と言った。

 本当は、俺も慈恵館で月見をする予定だったのだけど。

 三村と一緒に月を見るのも悪くないかと思って。

 少し、迷った。

 俺が迷っているのに気付いて、多分、その原因も分かって。

 いつもの笑いを浮かべながら、俺に言った。

「夜は長いんだから、そっちが終わった後でもイイぜ」

 それならいいかと、俺は頷く。

 人の家に夜遅く行くのは、気が引けるんだけど。

 その日は家に誰もいないから。

 そう言われて。

 三村の顔が、少し寂しそうに見えたのは、気のせいなんかじゃなく。

 あいつのそんな顔を見たくない俺としては、どうやったら元気になるかと考えたけど。

「お前といられれば、それで良いから」

 そんな言葉に、嬉しくなって。

 結局は、何も出来ないって事なんだけど。

 まぁ、いいかと、思った。

 

 

「月って言えばさ」

 空に浮かんだ、静かに輝く満月を見上げ、七原がつぶやく。

 思い出したように物を言うこいつの口からは、いつも俺が考えもしない言葉が出てくる。

 だから、今日は何だろうと、黙って先を促した。

「かぐや姫って、月に帰ったんだよな」

 そうだな、と俺が言うと、七原は月を見たまま、続けた。

「何で、帰っちゃったんだろうな」

 そりゃあ、迎えが来たからに決まっていて。

 何が疑問なのかも分からない。

 だから、七原は面白い。

 でも、少し、嫌な事を思い出したので、七原の疑問に、答えが出せるとは思わなかったけど、言ってみた。

 

 

「俺、かぐや姫って嫌い」

 声の調子は、いつもと同じだったけど。

 三村が、本気でそう言っているのが分かって、俺は月から視線を外した。

 何で、と尋ねると、だって、と三村は続けた。

「自分を愛してくれた奴等を置いて、故郷に帰っちまうから」

 愛されていたくせに、置いていくから。

 そう言った。

「大体、入手困難なものを要求して、諦めさせようとする根性が気にくわねぇ」

 それって、違うんじゃないかな。

「試すような真似するなんて、性格悪すぎ」

 三村、俺さ――

 

 

「思うんだけど。別に、諦めさせようとしたわけじゃなくてさ」

 七原が、何か必死に伝えようとしているのが分かって、俺は黙っていた。

「試そうとしたって言うか……確かめたかったんだよ。きっと」

 何を、と尋ねると、七原は俺の目を見て、答える。

「どのくらい、自分のことを好きなのか」

 それを、物で示そうとしたってワケか?

 愛情なんて、物で表せるわけでも無いだろうに。

 浅はかな女――

「目に映る物しか、信じられなかったんだよ。言葉なんて、いくらでも嘘がつけるから」

 自らの愛を信じてもらえなかった男どもは、哀れだな。

「中途半端な“好き”なんて、要らなかったんだ」

 

 

 愛するのなら、骨の髄まで愛して欲しい。

 

 

「七原も、同じ?」

 信史は、そう言って秋也の腕を掴んだ。

「ちゃんと示さないと、帰っちまうわけ?」

 強く握られた腕に、そっと自分の手を重ねて。

 秋也は、答えた。

「俺、どこにも行かない。三村が、愛してくれてるの、知ってるから」

 

「本気で想ってくれてるの、分かるから」

 

 

 月に帰ったかぐや姫。

 あなたを本気で愛してくれる人は、どこにもいなかったのですか――?

 

 

END.

 


500HITのnanaさまのキリリクは、『あしゃこさんの好きな感じで』だったので。
十五夜も近いことだし、お月見ネタにしてみました。
原付に乗って、月を見てると、凄いキレイで。
月ネタ書きたいなぁと思って。&かぐや姫が急に頭に浮かんだので。
あさこにしては珍しく一人称ですが、読みにくいですねー…
ごめんなさい。苦手なんです、一人称…(珍しい…)
と、言うわけで、お気に召すか分かりませんが、nanaさまに捧げます。
ありがとうございました〜!