|
一文字 「……村っ!!」 遠くから、七原の声が聞こえた。 昼休みを中庭で過ごし、教室へ戻るまでの道のり。 グランドの方から、大声で呼んでいる、七原の声。 『早く来いよ』 声は、被った。 二人の男の声。 俺の横に立つ男と俺は、同じ言葉を口にした。 あぁ、そうか。 七原はそっちを呼んだんだな。 漢字にすれば、俺と一文字違いの、この男を。 七原は犬のように走って来て、俺達の前で止まった。 乱れた息と、嬉しそうな顔。 「お待たせっ」 そう。その笑顔も、俺ではなく。 そいつへ向けられたものだって、俺は知ってる。 気付かなくて良い事だったのに。 七原の事を特別に思い始めたのは、ごく最近。 それは、俺だけじゃなく、あいつもきっと同じ。 変な所で気が合って、変な所が似ていて。 だからこそ、友達になれたのかもしれない。 どこか、似ているところがあるからこそ。 それでも七原は、俺じゃなく、あいつを選んだ。 七原の口から直接聞いたわけじゃないが、そのくらいは分かる。 確かにあいつは、俺の目から見ても完璧だと思う。 友達だから分かる。 あいつの良いところも、悪いところも。 全部含めて、きっと「完璧」なのだ。 七原は、きっと俺が七原を好きだという事すら、気付いてないんだろう。 その、あまりの鈍さはクラスの女子も認めるところで。 それでも、あいつの気持ちには気付いたのかもしれない。 あいつには、彼女がいるという噂だってあるのに。 そのくらいの噂、七原だって知っているはずなのに。 そんな事、関係ないのかもしれない。 そうして俺は、置いて行かれた。 俺は見ている事しか出来なかった。 友達の顔をして、ただ二人の側にいる。 それが苦痛だと感じる事もあるけれど、そんな事、七原の側にいられなくなる事を考えたら、大した事じゃない。 何も知らないふりをして、ただ側にいる。 あいつに向ける七原の笑顔を、側で見ている。 それだけで良い。 あいつは、俺に七原の話をしなかった。 俺が知らないとでも思っているのだろうか。 どっちが黙っていようと言ったのかは知らない。 けれど、二人は俺に何も言わなかった。 両思いになった事も。 付き合い始めた事も。 男同士だから? そんな事じゃない。 俺の気持ちを知った上での、優しさのつもりなんだろう? それとも、こんな俺を見て哀れんでいるのか? そんな考え方をしてしまう、自分も嫌だった。 苦しいとか、辛いとか、悲しいとか。 そんな言葉を口にしてみたって、何も変わらない。 だから、俺はいつもと同じように二人の側にいる。 あいつはきっと罪の意識を感じているし、七原だって気まずいかもしれない。 俺が側にいない方が、二人は幸せなのかもしれない。 それでも、離れる事なんて出来なかった。 七原が、好きで―― 今日も七原は、あいつの名を呼ぶ。 俺は、それを近くで見てる。 きっと変わらない、平行線の関係。 ふと、七原と目が合って。 軽く笑ってやると、七原は嬉しそうに笑い返してくる。 そんな事で良い。 これだけの幸せで良い。 何度七原が俺以外の名前を呼んでも。 決して七原の心が俺を向いてくれなくても。 ただ、お前の笑顔が見られれば、それだけで。 だから七原、遠くからでも、近くからでも。 何度でもあいつの名を呼んで良い。 俺と一文字違いの、男の名前を。 「――杉村!」 END. 「L'oiseau Blue」1周年記念という事で、七瀬琥珀さまへ捧げモノです。 一応杉七ですが…駄文になっちまいましたよぅ…いつもの事ですけどねっ! 杉七って書いてありますが、詐欺だと訴えないで下さい…詐欺ですが(涙) そりゃ、一応杉七だけど、これじゃあ杉七←三ですね…(むしろ単なる七←三) なちこを驚かそう!とだけ思って書いたんですが、どうにも…途中で分かるよ…(汗) 何とか、自分では杉村だと思ってもらえるように書いたつもりみたいです。 三村にしてはへなちょこ過ぎると言うか…言い訳ばっかだ… なちこ、1周年おめでとうっ! これからも頑張ってね!そして、どうぞこれからも宜しくしてやって下さいな♪ 追記。よく誤解されるのですが、コレ、杉村の一人称ではなく、三村の一人称なのです。 杉村と七原がデキていて、三村はそれを知りながら側で見ているという… だから、一応杉七なのですが、杉村全然出てないよ、と。 最後は七原が三村の目の前で杉村の名前を呼んでいる、というシーンなのですね。 実力もないくせに妙な事しようとするから混乱を招くのだと、反省しております… |