曖昧

 

 

 分からない事なんて、たくさんありすぎて数え切れない。

 多分大人になったら、そんな分からない事も、ひとつひとつ分かっていくんじゃないかと思うけど。

 とりあえず、今の俺には分からない事ばっかりで。

 その筆頭が――俺と、三村の関係。

 

 

 

 昨日、突然三村から電話がかかってきた。

「明日暇?遊びに行こうぜ」

 どこへ?と尋ねたら、「その辺をぷらぷらと」と答えられた。

 特に用事は無いから、それはそれで良いんだけど。

 なんとなく、楽しみにしてる俺って何なわけ?

 待ち合わせ場所で、一人立ち尽くしながら、そんなどうでもいい事を考えたりして。

 ああ、やっぱりここって人が多かったな。

 もっと分かりやすい場所にすれば良かったかも。

「七原」

 人込みの中から、俺を呼ぶ声が聞こえて。

 目を向けると、私服姿の三村。

 見慣れていないせいか、少し可笑しくて、笑ってしまった。

 三村も同じなのか、俺を見て笑った。

「なんか、変な感じだな」

 三村はそう言ったけど、だからと言って制服で街をぶらつく気にもなれないし。

 人込みを掻き分けるように、俺達は歩き出した。

 

 

 

 大体、何で2人なんだろう、と。

 口に出せない疑問があったりして。

 何で口に出せないのかも、よく分からないけど。

 多分三村は、瀬戸とか、杉村とかも誘ったんだと思うけど。

 俺だけ空いてたって事だよな。

 深い意味なんて無い。きっと。

 

 

 

 人が多くて、三村の姿を見失いそうになって。

 服のすそでも掴もうと思って伸ばした手を、握られる。

 何も言わずに、俺を引っ張って行く、三村。

 ――こんなのに意味は、無い。

「CD買いたいんだけど、良い?」

 そう言いながら、自然に俺の手を離して。

 ふと、ああ、上手いなと思ってしまった。

 正直、三村と手を繋ぐのは、これが初めてってわけじゃない。

 前にも、人込みの中で手を引いてもらった事はあったし、人込みじゃない所でも、何度かある。

 それはいつも三村の方からで。

 多分、癖なんじゃないかと思う。

 女の子と歩く時の。

 

 

 

「これが良い曲でさ」

 好きな物について話す時の三村は、いつもとちょっと違う。

 いつもは、俺が夢中で話す事をすぐ馬鹿にするし、やっぱりどこか冷めてる感じがするけど。

 こういう時の三村って、自分で思ってるより子供っぽいんだからな?

 でもそんな事を言ってしまったら、こいつはもうこんな顔をしてくれなくなると思う。

 それは、ちょっと嫌だから。

 買うのかと尋ねる前に、三村はレジに並んでいた。

 行動が素早い。

「あ、七原、10円貸して」

 細かいお金を出そうとして、足りなかったらしく。

 三村の掌に10円玉を乗せると、

「サンキュ」

と言って、片目を瞑って見せた。

 男相手にウィンクするなよな……

 

 

 

 本当にただ、歩き続けて、会話するだけ。

 目的も無く。

「ほらほら、あれ見ろよ」

 肩を抱くような形で、叩かれたり。

 多分何でもない事を、変に意識してるのは、俺だけ?

 

 

 

 自然に差し出された手を握る。

 そうすると、三村が指を絡めるような繋ぎ方に変えてくる。

 俺は嫌だとも言えなくて。

 というか、嫌ではなくて。

 何でだろうと、考えようとすると、頭の隅がちりちりと焼けるように痛んで。

 成り行きに任せて指を絡め、手を繋いだまま、道を歩く。

「あー、頭いてぇ」

 寝不足じゃないのかと言ったら、いつものように笑われた。

「そう。お子様の七原クンとは違って、遅くまでお勉強してますから」

 何の勉強なんだか。

 会話は普通なのに、している事はまるでカップル。

 それが嫌じゃないんだ。何故か。

 

 

 

 みんなの前では、絶対にこんな風に触れてきたりはしない三村。

 そりゃ、ふざけて頭を撫でてきたりする事はあるけど。

 だけど、そういうのとは違う、何か。

 何だろう、これ。

 手を繋ぐ事、繋いでいる事を、決して話題に出さない俺達。

 別に話題にする事でもないのか、それともあえて話題にしないようにしているのか。

 深く考えるのはやめようと思ってる。

 三村のする事を、いちいち深く考えていたら頭がどうにかなってしまう。

 多分こいつにとっては、深い意味の無い、明日になれば忘れてしまうような、本当に何でもない事なんだから。

 俺がいつまでも考えてたって、どうにもならない。

 そんなのは、分かりきっていて。

 

 

 

 三村の気持ちは分からないし、俺がどうしたいのかも、よく分からない。

 俺達の関係は、友達なのか、それ以上なのか、それ以上って何なのか。

 はっきりさせたいような気もするし、はっきりさせるのが怖いような気もするし。

 何をはっきりさせたいのかさえ曖昧で、分からない事が多すぎるけど。

 ただ、今は。

 この曖昧さが、心地良かったりもするんだ。

 

 

 

 だから、もう少しだけ、このままで。

 

 

 

END.



とりあえず37なら何でも好きな私は、今回は微妙な2人にチャレンジ。
三村が七原にベタ惚れなのも大好きだし、七原が三村を愛しく思ってるのも大好きだけど、そのどちらでもない、まだ微妙な2人。
なんか、青臭い感じがしませんか(そう見えると良いんだけど…)
三村の気持ちが分からなくて、自分の気持ちも分からなくて、だけど何故か繋ぐ手に、ちょっぴり2人の関係が見え隠れしたりして。
三村が何を考えているか、それは彼のみぞ知るという事で。
一人称にチャレンジ。
さて、これは本当に七原だろうか(汗)