Tree

 

 

 電飾で飾られた木が、そこら中に広がる季節。

 ちかちかときらめく、人工物と、自然の物の、ミスマッチな姿。

「俺、クリスマスツリーって、好きじゃない」

 秋也はそう言って、ツリーから目を逸らした。

 信史は秋也の言いたい事が分かったのか、小さく笑って、肩を抱いた。

 クリスマスに、二人でデート。

 そんな、普通のカップルみたいな事をして、人込みの中、二人で歩いた。

 最後はやっぱり、クリスマスツリーでも見るかという事になって。

 本当は気が進まなかったけれど、信史と一緒だという事もあり、黙っていた秋也。

 けれど。

「木が可哀想……って?」

「だって」

 秋也は目を逸らしたままで、答える。

「合わない。あんなの」

 彼の、こういうところが好きだった。

 信史は肩を抱く手に力を込めると、耳元でそっと囁く。

「じゃあ、俺んちにでも行く?」

 きっと、最後はそうするつもりだった言葉。

 秋也は頷いて、歩き出した。

 

 

 ちかちかときらめくライトが、嫌だった。

 

 

 部屋の中の寒い空気が、身体と共に温まって。

 白い吐息が気にならなくなるほど、抱き締めた。

「飾り付けされるのって、綺麗じゃないか?」

 信史がそう言うと、秋也は言葉にならない息を吐きながら、答える。

「……木、は、そのままでも、充分綺麗なっ……の、に……」

「ん、そうだな。お前と一緒」

「ふぁッ……!」

 泣きそうな声と、熱い身体。

 全部包み込んで、溶かしてしまいたくなる。

「七原……!」

 求められる事が嬉しくて、悦びに、飛んでしまいそうな意識の中。

 秋也は、ちかちか光るライトを思い出した。

 

 

 思い出すのは、あの頃の。

 幸せだった、幼き自分。

 今が幸せじゃないとは言わないけれど、二度と戻らない、過去の……

 

 

「七原」

 もう一度名前を呼ばれて、秋也の意識は“今”に戻ってきた。

「俺とヤってるのに、他の事考えてただろ」

 苦笑しながら信史が言い、何でも見透かされてしまっている事に、秋也は苦笑した。

「ちゃんと俺を見てろよ」

「三村……」

 零れ落ちる秋也の涙をぬぐいながら、信史はいつものように、笑った。

 忘れても良いのかもしれない。

 今が幸せなら。

 ちかちか光るライトも、綺麗だと思って、良いのかもしれない。

「っ……!」

 言葉にならない、叫び――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「秋也くん?」

 典子の声で秋也は、はっとしたように視線を上げた。

「どうしたの?」

「いや、何でもないよ」

 無理をして微笑んだ事も、きっと典子には分かっているのかもしれない。

「もうすぐ、一番大きいクリスマスツリーが見えるわよ」

「クリスマスツリー……」

「綺麗よね!ちかちかとライトが光って……」

「ごめん、典子」

 秋也はそう言って、目の前の巨木から目を逸らした。

 

 

「俺、クリスマスツリーって嫌いなんだ」

 

 

END.


3737HITのyu〜miさまのリク。
『クリスマス・カップリング37。クリスマスツリー関連』
大変長らくお待たせして、申し訳ありませんでした。
私の友達が、前に言ってたんですよ。木に電飾を巻きつけてる姿が、嫌なんだって。
あぁ、なんとなく分かるな、と思ったのを覚えています。
ラブラブ37クリスマスを書きたかったのですが。何故か暗い話に…
このようなもので宜しければ、yu〜miさまに捧げます。
ありがとうございました〜!