罪悪感を感じるうちはまだよかったのに。
クレイジー 刃 ―ツ ch2
ある日の授業中。
退屈な国語。
担当教師の、教科書を読むその声が充を夢へと誘う。
うとうととしながら肘をついて
彼はただ一点を見詰めていた。
自分から数えて、三つ四つ斜め前にある背中。
七原 秋也。
ヒョンなことから、愚痴る相手となった人物。
そういえば、と充は思った。
始まりはなんてくだらなかったんだろう。
充と七原は、同じクラスメイトでありながら
数えるほどしか口をきいたことがない。
だから、友人なんて関係であるはずもなく。
それなのに、七原は親しみをこめて、充に話し掛けることがあった。
大抵は七原が一人の時。
別に“わざわざ”近寄ってきて、声を掛けるなんてことはなく。
偶然、ばったり、出会った時。
そんな具合。
始まりもそんな感じだったように思う。
――いや、思いたいだけか?
充はフン、と口元を歪めた。
情けない自分の姿なんて、思い出したくもない。
それでも、その時のことはいまだはっきりと覚えている。
桐山とのいざこざ――半ば無理やり犯したという奴―――
そんなこんなや
他校生との喧嘩。
(最悪なことに、充、笹川ペアの負けだった)
苛々が溜まっていた時だ。
完全に陽の暮れた路地裏。
行きつけのアヤシイ店の帰り。
充は、七原と遭遇した。
なんでこんなトコにいるんだ、
そんな疑問も吹っ飛んだ。
その瞳には普段からは想像も出来ない――
大粒の涙を浮かべている。
さっさと通り過ぎて、家に帰って寝てしまおう、
そう思っていたのに。
「沼井じゃん、こんなとこで何してんの?」
七原が、涙を拭い、笑顔で声を掛けてきた。
そんな仕草に、充はムッとした。
少々自覚があることだが
つまらないことですぐ腹を立ててしまう節がある。
この時もそう。
苛々に更に拍車が掛かった。
「うるせー。馴れなれしく声かけてんじゃねぇよ。」
「良いじゃん。クラスメイトなんだし。」
七原のひと言ひと言が、抱え込んだ爆弾に火をつける。
少し、脅してやるつもりだった。
三村と関係がある、なんてのは見て取れてたわけだから、
殴ったりなんかするよりは断然効果的だと思った。
そう思っていた。
なんて、それは後からこじつけた理由であって、
実際は何でもない、身体が勝手に動いただけだった。
思い切りビルの壁に叩きつけて、
学生服のボタンを一つ、二つ、引きちぎる。
薄暗い路地裏。
人通りなんてある訳ない。
充が好んで足を運ぶ道だ。
「うるせー、って言ったんだよ・・・・」
首筋に唇を這わせ、ワザと大きく音を立てる。
「冗談はやめろよ!沼井、そーゆーシュミあんのかよ!」
手の内にあったボタンを、パラパラと落とし、煽る。
他人が自分に怯えている姿・・・
「自分のこと棚にあげるつもりかよ?三村と“そーゆー関係”なことは誰もが知ってることだろ?」
・・・そう、怯えて・・・明らかに顔色を変え・・
「誰もが、・・・・知ってる・・・?」
震え上がって
「・・・・・そっか・・・・気付いたんだ・・・」
許しを請う
(そもそも、始まった喧嘩、許しなんて、一体何に。)
この間、ボコボコにしてやった男を思い出した。
「でも、沼井も桐山のこと、好きだろ?同じじゃん・・・」
七原の言葉に、充はバッと身体を離した。
怯えたり、震え上がったり、許しを請う・・・?
誰が?
「何言ってんだ、てめぇ。」
否定はしたものの、さっきの行動で全て見抜かれてしまったはずだ。
「いい加減なコト言ってんじゃねぇぞ・・・このままヤられたいのかよ?」
そう言って、充は七原の襟元に噛み付いた。
紅く血が滲み、口内に鉄が広がる・・
そのままベロリと舐め上げた。
「・・・そうやって、桐山も組み敷いたのかよ?沼井は・・」
怯えたり、震え上がったり、許しを請う?
その後、頭に来て、七原のコトも犯した。
もちろん、離れた時には罪悪感。
だって俺にはボスがいる。
想いが通じたわけじゃない。
無理やりに抱いた、という今となっちゃ後悔の塊のような過去。
それでも、違う人物とも行為を。
それなのに、今となっちゃその、罪悪感のカケラもない。
最悪だ。
怯えて震えてゆるしを請って?
鳴り響くチャイムと共に顔を上げた。
最悪で、最高な昼休みの始まり。
充は席を立ち、カバンを引っ掴むと
三村達と話している七原に向かう。
「七原。」
たったひと言、呼ぶだけでいい。
「沼井。・・わかってるよ」
『いいよ、シヨウよ。好きにしていいから・・・。』
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アレー―?
当初の予定と違うぞ――?
よくわかんないゾー―?
まぁいいかぁーー
謎(?)はじょじょに解きますんで――
それまでよろしくですー――
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