メリークリスマス

 

 

 クリスマスだと言っても、特に何かをするわけで無く。

 いつもと同じように信史の家に行き、いつもと同じように話し、いつもと同じように過ごす。

 そんな事をしていたら、下の方で音が聞こえた。

 ガチャッとドアを開ける音と、可愛らしい声。

「ただいまぁ」

 秋也はベッドの上でごろごろしていたが、その声に気付いて信史の顔を見る。

「郁美ちゃん?」

「あぁ、もう帰って来たんだな」

 信史は秋也の寝っ転がっているベッドに近付いて、腰掛けた。

「どっか行ってたのか?」

「友達とクリスマスパーティするんだって、確かそう言ってた。の割には、帰って早いな……」

 二人でそう話していたら、階段を上ってくる音が聞こえて。信史の部屋の前で、足音が止まる。

「おにいちゃん?シューヤくん、来てるの?」

「あぁ、大丈夫だから、入れよ」

 良いだろ?と、秋也に視線を送ると、秋也は笑顔で頷き、体を起こした。

「両手塞がってるから、開けてよ、おにいちゃん」

 信史は、仕方ねぇな、と言いながら立ちあがり、ドアノブを掴む。

 

 ぱぁんっ!

 

「メリークリスマス!」

 郁美はしてやったり、という顔でそう言った。

「お前なぁ……」

 クラッカーの紙テープまみれになった顔を郁美に向けて、信史はつぶやく。

「パーティの余り物。役に立つかなーと思って、貰って来ちゃった」

 いらっしゃい、シューヤくん、と声をかけて、郁美は手に持った紙袋を差し出した。

「お兄ちゃんとシューヤくんにクリスマスプレゼント」

 信史は笑みを浮かべる郁美からそれを受けとって、秋也に渡す。

 それから、自分は髪に絡まる紙テープをとる作業にかかった。

「これ、郁美ちゃんが作ったの?」

 秋也の声に信史は手を止めて、紙袋の中を覗き込む。

 中には、ツリーや星の形をしたクッキーが入っていた。

 郁美は、照れくさそうに頷く。

「あっ!これ、昨日作ってたやつじゃんか。どうせくれるなら、昨日食っても良かっただろ〜?」

 昨日の夜、キッチンで悪戦苦闘していた妹の、出来上がったクッキーをつまもうとして怒られた信史は、そう言って一枚を手にとった。

「友達のとこに持って行く予定だったんだもん。余ったらあげようと思ってたよ!」

 俺は余り物か、と信史は苦笑して、口の中に放り込む。

「ん、うまい」

 意外そうにそう言う兄を、郁美は少し睨んで、秋也に目を向けた。

「シューヤくんも、食べて?」

「いただきます」

 秋也は郁美に笑いかけてからクッキーを口に入れる。

「美味しいよ」

 そう言って笑うと、嬉しそうに、郁美も笑った。

「おにいちゃん、ジュース持って来て」

 妹の言葉に逆らえるはずもなく、信史は大げさに頭を下げる。

「仰せのままに。お姫様」

 

 

 信史の持ってきたジュースを手に持って、三人で丸く座って。

「ちょっとはクリスマスらしくなったかな」

と秋也は笑い、

「乾杯でもしますか」

との信史の言葉に、一も二も無く賛成したのは郁美で。

「おにいちゃんも、たまには良い事言うよね」

「あのなぁ……」

 仲のいい兄妹を見ながら、秋也はくすくすと笑っていた。

「何笑ってんだよ、七原!」

「シューヤくんに絡まないでよ、おにいちゃんっ!」

 それは良いからさ、と秋也は笑いながら言って。

「そろそろ、手が辛いんだけど」

 グラスを持ったままの手に視線を送ると、それじゃあ、と信史が答えた。

「メリークリスマス!」

 グラスの重なる音がして、各自がそれに口をつけると。

 思い出したように、秋也はつぶやいた。

 

 

「あのさ。メリークリスマスの、『メリー』って、何?」

 

 

END.